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エトルリアの一番大きな神殿跡「女王の祭壇」 ~タルクィニア①~

エトルリア最古の都市タルクィニアのアクロポリスで1938年に発掘され、「女王の祭壇」と名付けられた神殿跡。紀元前4世紀ごろ、丘の一番高いところに建てられました。49.20m×25.20mの大きさを誇り、今までに発見されたエトルリアの神殿の中で一番の大きさです。

Googleマップの航空写真より

この神殿が建造される前に、すでにこの地には紀元前6世紀に建てられた神殿があり、それらの神殿を覆い囲む形で建てられました。
上の上空写真の右側、神殿入口には4本の円柱が立てられ、屋根は木製だったと考えられています。

南西のアングルより

この地方でよく使われているネンフロと呼ばれる凝灰岩の一種のブロックが使われています。
どの神様を祀っていたのかはわかっていませんが、最近の研究では狩猟の女神ディアナを祀っていたのではと言われています。

南東のアングルより

現在のイタリアの町Tarquinia(タルクィニア)は、実は、中世に誕生してから前世紀までCorneto(コルネート)と呼ばれていた、エトルリア時代のタルクィニアとは別の町です。古代の栄光を称えるため、タルクィニアと呼ばれるようになったのは、1922年のことでした。

Google マップより(現在のタルクィニアは、左の赤い境界線の中)

エトルリア時代のタルクィニアは、現在Pian di Civita(チヴィタ平原)と呼ばれる丘の上にありました。そして、「女王の祭壇」がみつかったアクロポリスはPian della Regina(女王の平原)の丘の上、後日、紹介する予定のネクロポリスは、上の航空写真ではわかりにくいですが、谷をはさんだ向かいの丘Colle del Monterozzi(モンテロッツィの丘)にあります。

共和政ローマ末期の政治家であり文筆家キケロが「エトルリアの中で一番裕福な都市」と記述したタルクィニア。海岸より10㎞ほど離れており、当時は航行可能であったマルタ川で海とつながっていました。

ちなみに、王政ローマの第5代王タルクィニウス・プリスクス(紀元前616年-579年)は、ここタルクィニアの出身でした。純血のエトルリア人ではなかった彼は、自国での政治的成功は難しかったため、栄光を求めローマへ向かったのでした。湿地帯であったローマの干拓事業は、彼によって採用されたエトルリア人の技術者でした。

紀元前6世紀から5世紀の初頭に全盛期を迎えたタルクィニア。その頃、北は、ボルセーナ湖まで領地を拡大していました。しかし、紀元前358年から351年にかけて南から拡大し続けていたローマと衝突し始めます。そして、紀元前295年に終にローマの支配下に置かれました。ローマが王政を廃止し、共和政になってから200年ほどたった時でした。

ローマが建国された紀元前753年より、イタリア半島にはローマの文明しかなかったイメージがありますが、ローマが王政時代に村から都市に成長している間、エトルリアでは豊かな文明が花開いていたのです。そして、ローマが成長できたのは、エトルリア出身の人物が王になり、エトルリアの技術を取り入れることができたからでした。

古代ローマ王政時代の3代のエトルリア出身の王については、塩野七生氏の「ローマ人の物語I」に詳しく書かれています。

鉄道の駅に降り立ってもすぐには踏み出せず、バスにでも乗って、稜線を登りつめた末にようやくたどりつけるのがエトルリアの町である。またなんでこんなところにわざわざ、と私などは呆れ返るのがせいぜいだが。。。

塩野七生「ローマ人の物語I」

塩野七生氏は、エトルリアの町を上記のように書かれています。が、私にはそんな印象を全く与えません。エトルリア人が丘の上に都市を築いたのは、まずは防衛に適していたからですが、清らかな風が吹く丘の上がなんと気持ちのいいことか。女王の祭壇が建てられたタルクィニアの丘の上からは、見渡す限り緑がうねる丘が連なります。そして、太陽や月、星が昇り、円を描きながら沈むことを眺めることができ、それはまるで今にもペガサスが飛び立ちそうな丘陵地です。よどんだ空気の平地よりもずっといいと思うのですが。。。

神殿背面より

ペガサスが本当にこの地から飛び立っていたのかもしれません。それは次回、記事にさせていただきます。

私が訪れた晩秋の夕暮れ時、少し離れた駐車場にはたくさんの車が止まっていました。先に訪れた博物館にもネクロポリスにもほとんど人はいなかったのになんでだろうと思ったら、地元の方がここにキノコ狩りに来られていました。籐で編んだ籠をみんな手に持って。

この写真の秋になると枯れてしまうひょろっとしたイタリア語でFerula(フェルーラ、日本語オオウイキョウ)と呼ばれる植物の回りでキノコがよく見つかるそうです。フェルーラはフェンネルとそっくりですが、食すと危険です!お気をつけて。


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Natsuko Tomi
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