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【悪性リンパ腫・闘病記㉙】恋人目線の闘病記<後編>

-前回の記事はこちら-

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病気になった当事者だけでなく、関係者も闘病をしている。

私は治療中、この視点が完全に抜けていて、「なぜ自分だけがこんな苦しい目に」「誰も僕の気持ちをわからない」と殻に籠ったり、自分が感じたことをそのままに発信していました。そして、治療が落ち着き症状も良くなったある日、フォロワーさんから相談を頂きました。

恋人が1週間前に脳の病気と診断されました。詳しいことについては何も聞かされておらず、しばらく1人で考えたいと言われました。病気のこともとても心配で不安で、また、彼のことなので別れを告げてくる可能性もあります。恋人として何ができるのか、またどうしたらいいのか、教えていただきたいです。

Voicyで回答しましたが、私は病気になった当事者なので、当事者目線の意見しか述べることができないことに気づきました。

冷静に考えてみると、きっと闘病している当事者よりも、その関係者の人の数の方が多いですよね。でも、スポットライトは当事者に当たることがほとんどです。支えた人の声って、なかなか世に出ない。だから、私の恋人目線の闘病記に救われる人もいるのではないでしょうか。

これは、私の恋人がフォロワー様に送ったメッセージの一部です。私の悪態を晒しますので、まるで答え合わせをするように、楽しんでいただけると幸いです!笑


・「あなたがいないと生きていけない」、ことはないな。

彼の気持ちを引き留めたくて、いろんなことを言ってみたんですけど、「あなたがいないと生きていけない」は逆効果でしたね(笑)彼からの回答は「そんなこと言う人、不安すぎて一緒にいられない」でした。
ただ、興味深かったのは、「君が、僕と一緒に過ごすことによるメリットを教えて」と言われたことでした。
病気の恋人を持つことにいいことなんて少しもない、別れた方がお互いのためだ、と考えての質問だったと思います。続けて彼から言われたのはこうでした。

「たとえば、癌患者と一緒に過ごしたこの経験が、将来的に君にとって大きな価値になる、財産になる、というなら理解できる。精神も時間も擦り減らしてまで経験する価値があると思っているなら、僕も君と一緒にいる意味がある。」
わかるような、わからないような。

要するに、彼は自分の価値を知りたかったんでしょうね。病気になって、いろんなものを失ってしまったいま、自分にどんな価値があるのか。好きとか、そういう感情的なものではないもので、自分の価値を図りたかったんだと思います。彼さんが不安に思っているようだったら、恋人としての「好き」ではない観点で、魅力や価値、必要性を伝えてみてもいいかもしれません。こんな言い方したら彼が傷つくかもってくらいドライな感じでもいいと思います。私の場合は「いろんな場面で話のネタになるから。」「癌の治療過程に興味があるから。」とでも言っておきました。笑

・極限状態では結論は出さないでおく。ときには曖昧が救いになる。

7月に入院して、彼とは「半年間は結論は出さない」ということになりました。別れるも、そうでないも、関わり方も、これまで通りを貫いてみる。彼の病状もどうなるかわからないし。私の気持ちも変わるかもしれないから。彼から提案されてのことだったのですが「いまは病気のことで精一杯。お互い極限状態にあるから、この状態で結論を出すのは無理だ」という理由からでした。そりゃそうだ。あの時は2人とも全然冷静じゃなかった。もちろん、飛行機でお見舞いにも行ったし、彼のご両親ともたくさん話したし、明らかに恋人ムーブだったと思いますが「2人の関係がどうなるかはまだ様子見」であることは心に留めて接していました。

正直なところ、「病気になったから別れましょう。」と言われて「はい、わかりましたさようなら。」って即答できるような関係性だったら恋人になんかなっていないと思うんです。病気の有無と恋愛感情には因果関係なんて持たせられないというか。気恥ずかしいけど、好きなもんは好きじゃないですか。前科者でも、夢見るバンドマンでも。笑 

で、逆に、病気を理由に好きを貫く義務もないですよね。病気の彼をサポートすると決めたんだからずっと一緒にいなきゃ!という義務は恋人にはありません。病気と恋愛は別なので、彼の発言や彼の行動に対して、あなたが「こいつマジ無理」って思ったらそれで関係を終了してもいいと思います。病気だから仕方ない、というのにも限界があるから。

彼の病気によって深く理解したのは、人の気持ちも病気も生存率も、コントロールなんてできないということでした。 彼の気持ちも変わるし、私の気持ちもいつのまにか変化しています。未来なんて読めるものではないのだから、「とりあえずいまは、この人と一緒にいてみようかな」くらいの気持ちで過ごしてみてもいいのかなと思います。 別れても、別れなくても、病気が治っても、治らなくても、周りからは良くも悪くも「大変だね、よくがんばってるね」くらいにしか思われていません。自分が、この時を振り返ったときに、後味悪かったり、後悔するようなことがないような過ごし方ができれば十分だと思います。


私は、恋人のことを変人だと今でも思っています。もっと他に私よりまともな人がいるだろうに、と正直今でも思うことはあります。

同時に、めちゃくちゃ上から目線なので後で怒られそうですが・・・恋人に対して「あ、強くなったな」と感じるようにもなりました。この人は、この人なりの闘病をしたんだなと。昨日まで泣きながら「死なないで」って言ってた人が、いきなり「まぁ、別に死んでもいいかも。」って言ってきて拍子抜けしたのは本当です。笑

それから、「笑うこと」は本当に必要なんだなと思います。「落ち込んで病気が治るならいくらでも落ち込むけど、治らない。だったら笑ってたほうがマシだ」と考えられたのも、ある意味で恋人の振る舞いが大きかったのかもしれません。

もちろん、家族や友人目線だとまた違った見え方がするのかもしれません。ただ、全ての関係者に共通することは、当事者が思っているよりもはるかに不安を感じて、苦しんでいるということです。だから、病気が治った暁には元気な姿を見せて、感謝を伝えるのが支えてもらった側の正しい態度なのかもしれません。偉そうなことを述べてしまいましたが、悪態をつきまくっていたのもまた事実。反省したいと思います。

さて、退院後の検査は良好です。あれだけキツかったジムでのリハビリも次第にこなせるようになりました。2月上旬に大きな検査があるのですが、このまま異常がなければ仕事ができそうです。

といっても、花屋ができないので新しい仕事を探す必要があるので最近の趣味は求人票を見ること。救ってもらったこの命、存分に生きるためにチャレンジしたいことがたくさんあります!無理ない範囲で、でも自分の可能性を広げられる、新しい人生の一歩を踏み出したいと思います。

次回では、退院から1ヶ月でどんな肉体の変化があったかを記事にしますので、お楽しみに!







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