年賀状、ネタ決め。裏話
小学校の頃から年賀状を描き続けておりまして、これは私にとって楽しい習慣のひとつ。
こちらが、今年の年賀状です。
A4のスケッチブックに、油性ペンと色鉛筆で描きました。
何かテーマが決まっていないと描きづらいものですから、今のところはずっと「干支しばり」を続けているところです。
また、近年はさらに「西洋美術しばり」で遊んでおりまして、2020年(子年)はピカソ風、2019年(亥年)はシュルレアリスム風、2018年(戌年)は中世のタペストリー風、2017年(酉年)はデューラーの版画風……などなど。
今回も、とりあえず「牛×西洋美術」を考えてみたのですが、思いついたのは《エウロペの略奪》と、マネの描いた《死せる闘牛士》のみ。
《エウロペの略奪》は、ギリシア神話の中の物語。(ヨーロッパから見て)東の国の王女エウロペが、牛に姿を変えたゼウス(英語名:ジュピター)によって、ギリシアのクレタ島まで連れ去られる、という話です。彼女の名前「エウロペ」が、「ヨーロッパ」の語源になっているって、ご存じでしたか?西洋美術では昔から人気のテーマで、多くの画家が描いているのですが、内容は、すけべじじいによる誘拐事件。
一方、マネの《死せる闘牛士》は、タイトルの通りで、命を落とし地面に横たわる闘牛士が、艶やかな黒で描かれています。
……どちらも年賀状には相応しくないテーマです。
ここで行き詰ってしまったので、今回は、「西洋美術しばり」はやめることにしました。
そのまま、どうしようかなあと迷いつつ迎えた年末。
とある映画を観ました。
アン・リー監督『ブロークバック・マウンテン』(2005年)
1960年代~80年代アメリカのカウボーイたちを描いた作品で、ロデオ(牛や馬を使うスポーツ)のシーンがあります。ここで、アン・ハサウェイが馬をかっ飛ばしている姿が非常に格好良かったのです。
決まりました。
よし、暴れ牛を乗り回す女を描こう。
ただ、ネットでざっと調べたところ、ロデオはほとんど男性競技でした(カウボーイ文化を背景とするスポーツなので当然ですが)。女性専用の競技は、映画中でアン・ハサウェイがやっていた、場内に設置された樽の間を馬で走り抜ける時間を競う「バレル・レーシング」だけのようです。
というわけで、暴れ牛に乗る「ブル・ライディング」は、実際は女性競技ではありません。ご了承ください。
ちなみに、この『ブロークバック・マウンテン』という映画、カウボーイ同士の、つまり男同士の恋愛を描いたものですが、物語の舞台である1960年代は同性愛は酷く差別されていましたから、その苦しいこと……。結末を言ってしまえば、ハッピーエンドではありません(見終えてから数日へこみました)。
でも、誰かにすすめたくなる作品です。
とにかく、映像の美しさに圧倒されます。冒頭で映し出される、色の濃い青空。それがなぜか不穏な感じがして、私はそのワンカットだけで心臓つかまれました。
そして何といっても、主人公のひとりであるヒース・レジャーの演技が良い。口数も少なく表情もあまり変えないのに、ものすごくエモーショナルなのです。すごい。思わず、息をつめて見入ってしまいます。
おすすめです。