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生前整理アドバイザーになりたい理由

ある日、インターネットで「生前整理」という言葉を目にしました。
その時、ふたつの事が頭をよぎりました。

ひとつは、やり残した事を話してくれた患者さん達のことです。
私は看護師を30年以上しています。
その中で、自分の死を悟っている患者さんから「やり残した事」を聴くことがとても多くありました。

患者さんたちがやり残したこと、というのは
「家族に言いたいことをまだ全部伝えていない。今までずっと一緒にいたのに。」
「疎遠になっている息子に会っておけば良かった。」
「 忙しい主人に遠慮して『旅行に行きたい』と言えなかったけど、主人ともう一度、旅行したかった。」
というようなものでした。
患者さん達はとても辛そうに話されました。

また、
「私が死んだ後、家族に絶対に見られたくないものが引き出しの中にあるんです。処分しておけばよかった。」
という方もいらっしゃいました。


あの患者さん達も生前整理をやっていたら、やり残した事への思い・後悔の思いをもっと少なくして最期を迎えられたのではないか、と思ったのです。


もうひとつは、私の亡くなった両親のことです。
両親は生前整理をしていなかったので、残していく子供達にもっと伝えたいことがあったのではないかと思いました。

そして、私も子供として、親の生前整理を手伝えることがあったのではないか、と思いました。
そして段々と、親の生前整理を手伝わなかったことを後悔するようになりました。

いろんな事を考えていたら、生前整理をもっと知りたくなって、生前整理普及協会の2級講座を受けることにしたのです。

講座では、自分が産まれた時からの人生を少しずつ振り返り、いかに自分が愛されてきたか、いかに大切な人との出会いがあったのか・・・
普段は忘れてしまっていることを思い出させてくれました。


そして、大切な人とこれからの人生をどう生きていくのか、自分が本当にやりたい事は何なのか、それを具体的にイメージできるようになりました。

私は、この体感を身近な人達や多くの方々に伝えたいと思うようになりました。
後悔せずに生きていけるように、お手伝いをしたいと思ったのです。

生前整理アドバイザーになりたいと思ったのは、このような理由からでした。


最近、ある患者さんのことを思い出しました。

その患者さんは、60代の男性で消化器の癌を患っていました。
その患者さんに「相談してもいいですか?」と声をかけられました。

「遠い県外に住んでいる妹がいるんだけど、妹には癌の事を話していないんです。
妻や子供には話せたのに、なぜか妹には話せなくてね。こんな年になっても妹が可愛いから心配させたくないんですよ。
もし話したら、すごく心配して、仕事を休んで面会に来ると思うんですよ。そんな大変なことをさせたくないという気持ちもあるんです。」と話されたのです。

私はその思いを受け止めながら話を聴いていました。

そして患者さんから「妹に話したほうがいいと思いますか?」と、意見を求められました。

私は「・・・私が妹さんだったら、どうしてもっと早く話してくれなかったの?って、悲しくなるかもしれません」と伝えました。

患者さんはハッとした顔になられて「そう思うかもしれませんね。これから妹に電話してみます」とおっしゃって、すぐに電話されたようでした。

2日後に遠方の妹さんが面会に来られて 、「兄が、看護師さんに背中を押してもらったと言って電話をくれたんです。兄が元気なうちに会えて良かったです。ありがとうございました。」と言ってくださいました。

そして、患者さんは退院する時に、「妹に癌だと話してから、妹と電話で話すことが前より多くなったんですよ。病気の話だけじゃなくて、いろんな話をしてます。前よりも仲良くなったみたいです。」と笑顔で話されました。


大切な人との関係をそれまで以上に良い関係にすることも生前整理のひとつです。
あの患者さんは妹さんに、心配させたくなかったという気持ち・妹さんを大切に思っているという気持ちを伝えたことで、自然に生前整理をされたのかなと思いました。

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