マガジンのカバー画像

散文

16
エッセイ・掌編小説など。
運営しているクリエイター

#モウカラ不動産

対価、その他

 モウカラ04の告知ツイートのいいねの数は早くも落ち着いてしまったみたい。多くの人に読んでもらいたいというのは純粋な欲求だ。直接いただく評や感想がうれしい。「読んだ」「読む」という反応もそうだ。
 次号からは「うたの日」のページが出来なくなりそうなので、代わりになるものを考えている。なにがいいだろう。

 昨日のナッシュの病院の会計は二万円を超えた。

 今日はこのまま静かに終わりそう。iPhon

もっとみる

推敲に次ぐ推敲/ワイン

 モウカラ不動産の今号の連作『佳作みたいな虹を着ている』については、実はかなり早い段階でほぼ形になっていた。それを数ヶ月ずっと握っていたわけで、事あるごとに眺めては推敲をして、をずっとやっていた。こんなに長い期間をかけて推敲したのは初めて。推敲すればするほど良くなる、というわけではないということを再認識しつつ、しかしインターバルを取りながら読み返すことも大事だと気づけた。そして、手許にこういう大き

もっとみる
空き地に人間向けの窓はない

空き地に人間向けの窓はない

 フジモトさんはどの路地にもいた。うちを出て目的地への最短ルートを進むときであろうと、進む道を適当に決める日課の散歩のときであろうと、本当にしょっちゅう、そこかしこで遭遇した。(今日はフジモトさんいなかったな)と思えるような、家から割と遠ざかったところで、背後から不意に明るい声に呼び止められる。振り返るとやはりフジモトさんだった。

 この町は死刑宣告を受けている。元々は終戦直後の混乱のなか、大陸

もっとみる
母の家出

母の家出

 南東向きの窓があるリビングから、ダイニング、キッチンと続く分譲マンションの一室、リビングとダイニングの間には間仕切りとしてカップボードが置かれている。電話台はそのカップボードのすぐ裏、ダイニング側にあるので、晴天の午後二時前だというのに薄暗い。冷房のために締め切った部屋に微かに届く蝉の声がその暗がりを強調していた。
「長崎行きの高速バスに空きはあり

もっとみる
次はいつ来る?

次はいつ来る?

 旅行は好きじゃない。だって方向音痴だ。自分の街ですら同行者に道先案内を委ねるのに、知らない土地だと迷子にならないように、常に気を張っていなければならない。誰かと行く旅行であれば相手への依存度が高くなり過ぎて申し訳なくなるし、一人旅では半べそをかきながら無事に帰れることだけで頭のなかをいっぱいにすることになる。そもそも計画やパッキングといった旅支度自体が億劫て

もっとみる