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テーブルに不協和音が二つある。私は赤いサインペンを取り出し、右の不協和音には「下僕」と書き、左の不協和音には「キミ」と書いた。手書きで字を書いたのなんて久しぶりだ。相変わらずスペリングには自信がない。 ま、ーーこれは一種のたとえ話だ。「不協和音に字が書けるのか」という疑問は当然湧いてくるだろうが、一種のたとえと思って聞いてほしいのだ。 「たとえ」は、このように広がっていくーーこれは、ビリヤードのようなものだ。ここに緑色の台がある。美しい緑色だ。芝生のようなね。麻雀をやると
俺は車輪を集めている。ささやかな趣味としてだ。すでに右手に11個、左手に22、3個の車輪を着けている。これだけあれば、なにか見るからに車輪の足りなそうな人や掟や運動を見かけたとき、その横着な為政者にーーあるいは出来損ないの王国にーー無言でこれを渡してやり、明るい未来やおしゃべりな幸せ、明朗な食事を作るのに役に立つ「無益な論理」を転がす手助けができるというものだ。車輪はいくつあっても良いのだから、貰っておいて損はない。それをくれてやろうというのだ。ああ、俺は親切だ、俺は親切だ。
【偏屈者Aの嘆き】 文章を書くことは壁を作ることに似ている。あなたが文章を書けばそこに壁が生まれ、それに直面した私はそれに沿って歩くことしかできない。あなたの文章は「ここからは先へ進めません。先へ進みたかったら迂回してください。ここでは私が案内人として、あなたの手を引いていきます。さあ、気張らずに、安心して身を委ねなさいな」と言って、私を横道に連れていこうとする。それは、道端で子供を誘拐しようとする詐欺師に似ている。「ワタシが君のホントのお父さんだよ。やっと会えたね。ああ、
理解の囚人の没落せし暗号を拝呈する徒人。 臥城の床で十戸の畠に叛く暴君の轍を遡る影。 世時の亡骸を携えし北郷羅の堤防でうらぶれた背中を臨む我が黙歌。 直立した情念の踵を返上せんとする文言。 肝の柄の切先が撫でる透明の視線。 法師の懐にそよぐ一楽章。 ーー以上、明晰なる思考の足枷。 君子よ、跪け。 多義的な一節の翻訳と邂逅せんことを。 詠唱。 広場、 朝。
『ふりがなの詩』 ーー押忍ーー 「ふりがな」で真剣に試用んでみようと思う。 二年前から不変の「作文」にかける想い、矜持、フンコロガシ。 逆流する運命の哲学をこの人生に賭した瞳と天蓋を埋め尽くす黄金の星屑。 俺を笑え。 教室の隅で呼吸する天使の笑顔が俺に接吻するんだ。 古傷がうずく。 俺はどこにいる? お前の言葉はどこへ向かう? 錯乱の狂気を俺は土に還す。 西陽。 憧憬。 ーー嫌いだ。 会おうーーまたいつの日か。じゃあな。
今日はモーンスクロイドについて話そうと思う。モーンスクロイドはスポルクロイドと対になる成分である。スポルクロイドは以前に書いたのでご存知のことと思うが、真夏の庭で発見できてーーあれ、川を流れていたのだったかな?川を流れているところを、網ですくうのだったかな?そうだったかもしれない。記憶が曖昧だ。とにかく、そんな感じの特殊な成分であった。 1953年の夏のある日、私はスポルクロイドに想いを馳せながら川べりを歩いていた。あのとき私は、住む家も、職も、信条も、はたまた生き甲斐も、
金剛力士の束前に比例する砂丘、そのしたたかなる音の劣情が島をなし、微動だにせぬ土枕を拝上し、烈士に、また、下城の雑踏に、沈んだ呼吸に手をかける。小森の朝に俺は、だんまりを決めた牧師と猪と、川と草で不喝の豆を育てていたのだった。俺は朝日よりも尊い土偶の讃歌にひしゃげた『瑪瑙』の「食えない部分」をお前にくれてやった。 「それ、おいしいよ」俺は言った。お前は特に何も言わずにそれを食っていたっけ。憐れだ。俺は自分が可哀想になった。紋様蘭の蔓延る土手の、敗存の結着する国家の支柱となり
カート・ヴォネガットって知ってる?あたしは知らない。だから、カート・ヴォネガットについて書こうと思うの。 やっぱりやめた。あー、イライラする。スカッとしたい。誰かを穴に埋めてスカッとしたいよ〜〜。 カート・ヴォネガットは、あたしの1番の親友だった。カート・ヴォネガットは、いつもどこにいるかわからなくて、だから始業時間に間に合うように毎朝あたしが草むらの中を探すハメになる。それでいつもあたしの制服は植物の種だらけになった。にもかかわらず、始業時間に間に合ったことは一度もない
有吉ってムカつくけど、圧倒的天才だよね。なんなら、そこら辺にいる人の方がムカつくよね。そこら辺にいる人ってさ〜、ただ喋ってるだけでムカつくじゃん。でしょ?ただ歩いてるだけで、なにもしないでただたたずんでいるだけでムカつくでしょう。なんなら、後ろを向いてるだけでもイラっとさせてくれるよね。ここまでくると、もはや一種の才能だよな〜彼ら。で、有吉クンの話なんだけど、彼は、あたしにとって、そこら辺に歩いてる人の次くらいにムカつく存在なのね。でも、才能はバリあるよな〜と敬服してる。だっ
毒舌解禁するぞ。バーカ、アホ。(←毒舌未満) オホン(咳払い)。では、本格的に毒舌するね。「その文章は誰に向けた文章か?」って、頭の禿げかかったオジサンがソビエト製の携帯ラジオを聴きながら教師のふりをしてよく聞いてくるじゃん?あたし(ナスカーチャ)はそれでいつも小さな声で「先生に向けて書いてます」と震えながら答えるの。そうすると先生のふりをしたオジサンはいつも満足そうに「そういうことじゃなくてさあ」とニコニコするの。あたしはいつも「早くこの世界を終わらせたい」って思う。
俺は潮流を撫でている。緑藻の冠に手をかけた薄弱たる眉毛、甘藍の先主に争う衰亡の堤防、そんなものばかりが俺の主であり、潮流であった。(適当に言葉を繋げてるだけです。どうかそこをわかってください。ホント。お願いしますょ。) 朝だ!俺は怠惰だ、優雅だ。つまり、一頃の国家というわけさ。恐れ入ったか?そう、ここが庭だ。この詩はというと、これはひとつの歴史であったようなのだ。艱難の隆盛に注ぐ旧来の用言が、瞬く間に国家の姿態の潮流となり、俺は大雨の中で蛙に懇願したものだ。明日よ、もう二度
ソクラテス: そうだね、特に変なことを言っているようには感じないね。感覚は人それぞれではあるけれど、それは概ねであり、つまり100%全くに人それぞれに違うわけではなく、50%なのか、30%、80%なのか、その程度はわからないが、土台として共通の感覚が存在し、その上での違いということでいいのかな?「人それぞれ」という言葉の意味は。 ポプ: そうですね。まさに、そういうことです。その%の度合いも、人によって違うのでしょう。平均的な感覚と似た感覚を持っている人もいれば、そこから大
対話人物: ソクラテス ポプ ポプ: ソクラテス、こんにちは。今日、僕はひとつの話題を持ってきました。あなたと議論するのに最適の話題を見つけたのです。 ソクラテス: やあ、ポプ。久しぶりだね。随分と大きくなったね。もう150cmもあるんじゃないか? ポプ: そんなことはいいです。僕は今日、ひとつの話題を持ってここへやってきたのですが、その内容について、特に事前に思索を深めてきたわけではありません。事前に思索を深めても、あなたと議論すれば、そんな思索はたちまち打ち崩されて
俺にとって、電流は都市である。早瀬に、座礁する辛苦の積荷に、お伽話の中の曙と来る明日の王国に俺は跪きーー豆電球を手に入れた。 俺は豆電球が好きだ。お前も豆電球が好きだ。俺とお前は、鳩に豆電球を喰らわせるのが習慣となっており、日常になっており、東の『ザック・クイント邸』のある坂に雪崩のように匿名の言説が流れるのを眺めながら、ひとつひとつの都市に手作業で明かりを灯していったのだ。 ひとつ断っておきたいのが、この詩は冗談なので、真面目に読まないように、ということ。全ての文章と同