お腹すいた
カート・ヴォネガットって知ってる?あたしは知らない。だから、カート・ヴォネガットについて書こうと思うの。
やっぱりやめた。あー、イライラする。スカッとしたい。誰かを穴に埋めてスカッとしたいよ〜〜。
カート・ヴォネガットは、あたしの1番の親友だった。カート・ヴォネガットは、いつもどこにいるかわからなくて、だから始業時間に間に合うように毎朝あたしが草むらの中を探すハメになる。それでいつもあたしの制服は植物の種だらけになった。にもかかわらず、始業時間に間に合ったことは一度もない。考えられる原因はいくつかあって、その中の最大のものを言うね。あたしは巨大な岩石を、家から持ってきたテコを使ってやっとこさ裏返して、カート・ヴォネガットを探しているわけだけど、そんな中、ふと、いやな予感がよぎるの。考えてみると、あたし、カート・ヴォネガットの顔、知らないような。何度思い浮かべようとしても、駄目なのね。あたし、カート・ヴォネガットにまだ会ったことがないのかもしれない。不思議だよね。ウチら親友なのにね。そんで、カート・ヴォネガット探しで泥だらけになったあたしを森の中で先生が見つけると、あたしは決まって泣き出してしまって。それを見た先生は、なんかわけのわからないことを言ってあたしを励まそうとして、そして、あろうことか、あたしを学校とは別の方向へ連れて行こうとするの!だからあたしはいつも逃げた。だって、酷くない?あたしがカート・ヴォネガットの話を先生にすると、先生は「そんな奴いない」って言うんだよ?あたしは頭にきて壺を割ってやったわ。ああ、話の分かると人と話し合いたい。もう、ただただそれだけ。それ以外にはなにもいらない。もう疲れた。
あたしはいま、北フランスの片田舎の、牧歌的な小径をサクサク歩いてる。ここなら痴漢に合うこともないかな、と思って。でも、その代わりなのかな、辺りを見回しても、どこにも建物がないんだよね。ヤバくない?どうしよう。あたし、このまま野垂れ死ぬのかな?せめて、かれこれもうずっと後を付けてくる野良犬をどうにかしてくれー。空腹と怒りから勢い余って56して喰ってしまいそうで。そんなことしたら可哀想じゃんね。犬クンだって愛に飢えてるはずなので。あ、崖だ。そうこうしてたら崖にぶち当たってしまった。後ろを向きながら歩いてたので、崖に落ちてしまい、いま片手で崖っぷちにぶら下がってる。犬クンがあたしの手を本気で噛んできてウザい。あーあ、あたし、これからどうしよう。あたしの帰るお家なんて、やっぱりどこにもなかったのかな。なんか涙出てきた。この手、もう離しちゃおっかな。さいなら〜って。もう、それでもいいよね、ぶっちゃけね。でも、犬クンが離してくれるかなぁ。あたしを本気で喰おうとしてる犬クン。君はあたしの王子様なのかなぁ?教えてよ。誰か。
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