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2023年本屋大賞ノミネート作品全部読んでみた
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本屋大賞公式Twitter(@hontai)より引用
2023年の本屋大賞候補作が発表されましたね!
年々注目度が上がっている本屋大賞、今年は初めて発表前にノミネートされた10作品を読み切ることができました。
すでに売れている本ばかりなので、ここから1番を選ぶのはかなり難しそう。
ちなみに私のイチオシは「光のとこにいてね」と「方舟」です!
物語の根幹に触れるようなネタバレはしないように気をつけていますが、大筋に関する多少のネタバレはあります。未読の方はご注意ください。
「川のほとりに立つ者は」 寺地はるな
すれ違いが続いていた恋人が意識不明の重体になったことがきっかけで、いろんな秘密が暴かれていく物語です。
読み進めるうちに多様性について深く考えるようになりました。
無知は人を傷つけるということを知り、いろんなことを知ることで他人の事情や心情を想像できるようになるのかもしれないと思いました。
読んでいてヒヤッとする場面もあり、つい自分の行動を振り返ってしまいます。
たくさんの人に読んでもらいたい本です。
「君のクイズ」 小川哲
テレビの生放送のクイズ番組で起こった「ゼロ文字押し」事件。問題文を1文字も聞くことなく正解を導き出し、クイズ大会優勝の座と賞金1千万円を手に入れた男に、世の中はざわつきます。
どうして彼は問題を聞く前に答えがわかったのか?クイズ大会はヤラセだったのか?その謎に決勝戦の対戦相手だったクイズオタクが挑みます。
クイズとは何か?という誰も考えたことがなかった問いを深く掘り下げていくストーリーにワクワクしました。
クイズをスポーツと捉え、競技としてのクイズを詳しく紹介しているのもおもしろかったです。
「宙ごはん」 町田そのこ
ママとお母さん。2人の母を持つ宙と、その家族の関係性を描いた物語です。
宙を含め、ちょっと困った親を持つ子供がたくさん登場するので、正直心温まるだけのストーリーではありません。でも、周りの助けを借りながら、いろんな人から愛情をもらいながら、一緒に成長していく母子に力をもらえます。
父親や母親という役割は、1人で全うしなくてもいいのかもしれません。
親だって親でいられないこともある。
大人だって、ちょっとした不運や周りの環境で、壊れてしまうことがあります。そして今の時代、それは誰の身に起こってもおかしくないくらい身近なことなのではないでしょうか。
そんな時に親の代わりに愛情を注いでくれる存在がいることで、親も子も立ち直る時間が稼げるのではないかと思いました。
何もかもうまくいくわけじゃないし、宙は苦しい思いもたくさんします。そんな中で、強く賢く逞しくなっていく宙の姿に涙が止まりませんでした。
「月の立つ林で」 青山美智子
毎朝7時にポットキャストで月にまつわるエピソードを配信しているタケトリ・オキナという男性。彼の配信する「ツキない話」に心動かされるリスナーたちの物語です。
連作短編集なので、それぞれの物語は独立しているようで少しずつ繋がっています。
誰かが誰かの救いになっていたり、一歩踏み出すきっかけになっていたりするところに温かさを感じました。
現実の世界もこんな風に回っていたらいいのにと思わずにはいられない物語です。
「汝、星のごとく」 凪良ゆう
2022年下半期の直木賞候補作、2023年吉川英治新人賞候補作にも選ばれた本です。
瀬戸内海の島で出会った高校生2人の切なくて苦しいラブストーリーですが、想像以上に重かったです。
苦しくて、苦しくて、でもどこかで救われてほしくて、祈るようにページをめくりました。
1行目のインパクトがすごいので、読み始めたら一気読み必至です。
ネタバレありの感想もあるので、既読の方はこちらも覗いて行ってくれると嬉しいです。
「方舟」 夕木春央
発売されてわりとすぐに話題になっていたミステリです。
2023年吉川英治新人賞候補作、このミステリーがすごい!2023年版の国内編4位にも選ばれています。
Twitterの読書好きの間でも感想は言えないけどとにかく読んで!というのが合言葉になっていました。
たしかにこれは感想を書けない!
ネタバレを一切読まずに読んだ方がいいです。どこかで結末を知ってしまう前に、一刻も早く。
「#真相をお話しします」 結城真一郎
5つのミステリを集めた短編集です。
どれもあっと驚くような展開が待っていて、短いながらもミステリとしてしっかり成立しているのがすごいなと思いました。
ミステリの複雑で長い導入部分を省いてどんでん返しだけ味わいたい!という人や、本を読む時間がなかなか取れないという人も楽しめるミステリです。
作中には丁寧にヒントが描かれているので、しっかり読めば結末を予想できます。謎解きしたい派の人にもぴったりだなと思いました。
「爆弾」 呉勝浩
このミステリーがすごい!2023年版の国内編1位に選ばれた本です。
爆破テロを匂わせる男vs警察の、手に汗握る騙し合いを描いた社会派ミステリです。
取調室を舞台に淡々と進んでいく会話劇にゾクゾクが止まりません。
スズキの話し方にイライラするたびに、いかんいかん、私もスズキに転がされてるぞ...と思いました。
警察官も1人、2人とスズキに食われていくので、ダメだよ!その手に乗っちゃダメ!と何度口から出そうになったことか...(本に叫んでも伝わりません)。
スズキの思惑、計画の全容は実際に読んで確かめてみてください。
それにしても爆破テロって都会であればあるほど恐ろしいですよね。田舎なら人が集まってて爆弾を仕掛けられそうなところって限られるから、わりとすぐに見つけられそうだなと思ってしまうあたりが田舎者です。
「光のとこにいてね」 一穂ミチ
2022年下半期の直木賞候補作にも選ばれた本です。
生きづらさを抱えた女の子2人が出会い、いつのまにかお互いがかけがえのない存在になっていきます。
何度離れてもまた出会い、惹かれあってしまうところに運命を感じました。
どちらの抱える生きづらさも理解できるし、女性ならではのライフスタイルの変化から身動きが取れなくなっていくところにも共感できます。
こだわり抜いたことが伺えるタイトルと装丁も素敵です。
「ラブカは静かに弓を持つ」 安壇美緒
2023年吉川英治新人賞候補作、第6回未来屋小説大賞1位にも選ばれた本です。
上司からの極秘指令でチェロ教室に潜入することになった男の物語ですが、かっこいいスパイものではありません。泥臭い人間らしさがいっぱい詰まっているヒューマンドラマです。
そして、今話題の音楽に関する著作権問題にも深く切り込んでいます。
それにしても2年も潜入してこいなんて、とんでもない指令だと思います。2年もマンツーマンでレッスンを受ければ、どんな相手とだってそれなりに関係性は出来てくる。それを全て裏切ることを強いるなんて、当人の罪悪感はどれほどのものでしょう。
そりゃ病んでしまうよ...と胸が痛くなるシーンも多々ありましたが、最後は、彼にチェロがあって良かったと思える結末を迎えます。
音楽を描いた小説というのは不思議で、読み進めていくうちに、本の中からチェロの音色が聞こえてくる気がするんです。そして読み終わる頃にはチェロを弾いてみたくなっている。
音楽小説が好きな人にぜひ手に取ってもらいたい1冊です。
最後に
今年の本屋大賞は、なんとなく見慣れた顔ぶれが多いような気がしました。一度ノミネートされた作家さんは翌年以降も候補に選ばれやすいのでしょうか?
直木賞候補作やこのミステリがすごい!など、名だたる小説の賞に選ばれている本も多く、かなりの激戦だと感じます。
この中から一体どの作品が選ばれるのか…。どれが選ばれてもおかしくないので、まったく予想ができません!
文学賞のノミネート作品全部読んでみたシリーズは他にもあるので、よかったらこちらも覗いて行ってください。
本屋大賞ノミネート作品はAudibleでも楽しむことができます⇩