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福利厚生はこうせい。

人手不足の深刻化、生産年齢人口の減少により、福利厚生の重要度が増しているらしい。従業員の定着、人材獲得競争力のアップ、はたまた快適に過ごすことによる生産性の向上が主な論拠のようだ。
そこで人事総務の腕の見せ所でもある福利厚生について私見を述べたい。

福利厚生には「法定」と「法定外(会社独自)」がある。
「法定福利厚生」は法の義務付けがあり、イコール「社会保険等(健保や年金等)」のことであり、ここでは割愛する。

基本(定義・概要)

では、「法定外(会社独自)」の福利厚生を考えていく。
まずは言葉の定義を確認する。

福利
幸福と利益。希望どおりになって生活などが落ち着くようにすることと、その人のためになること。また、そのようにすること。
「精選版 日本国語大辞典より」

厚生
① くらしを健康で豊かにすること。古くは政治を行なう人が人民の生活を豊かにすることをいう。
② 体力、健康を増進すること。
「精選版 日本国語大辞典より」

福利厚生
企業が、労働力の確保・定着、勤労意欲・能率の向上などの効果を期待して、従業員とその家族に対して提供する各種の施策・制度。主として従業員の生活の向上を支援する目的で実施されるもので、法律で義務づけられた法定福利(社会保険料の事業主負担など)と、企業が任意で実施する法定外福利(交通費・社宅・健康診断・育児支援・保養施設など)がある。
「日本大百科全書より」

簡単にまとめると、「従業員(家族含め)の生活(暮らし・健康)を豊かにする施策」である。そして企業の期待は「労働力の確保・定着、勤労意欲・能率の向上などの効果」である。企業にもよるが、福利厚生は残業計算に算入しなくても良いものも多いため、給与アップよりコストパフォーマンスが大きいという事情もある。

代表例と注意点

次に、代表的な福利厚生はあげてみる。

・住宅手当、社宅や家賃補助
・通勤手当・出張手当
・資格取得手当
・慶弔見舞金
・リフレッシュ休暇・特別休暇
・社員食堂、社員旅行
・家族手当
・育児、介護支援
・自己啓発支援
・健康促進サービスの補助や割引

いろいろとある。企業によっては非常にユニークなものもある。

しかし、福利厚生には前提があり、以下の項目に「該当せず」となると福利厚生とは認められない場合がある。

・全従業員が対象になっているか(機会の平等性)
・金額の妥当性
・現金支給ではない

つまり、福利厚生は「公正」でなければならない。
検討時には経理や税金の専門家に確認することをおすすめする。

また、落とし穴として「給与」と「福利厚生」の関係もあるので、抑えておこう。

従業員のための福利厚生にかかった費用は、会計上では福利厚生費や給与、交際費などに振り分けられます。福利厚生にかかる費用=すべて福利厚生費というわけではありません。給与扱いになるものもあります。福利厚生費か給与かで、企業の手続き、従業員の所得税や社会保険料・住民税が変わってきます。 福利厚生を充実させることにかかる費用が福利厚生費として計上できれば非課税対象になり節税につながりますが、給与として計上されれば所得の増加になり税金負担の増加につながります。

株式会社リロクラブ https://www.reloclub.jp/relotimes/article/14765 より引用

それから、会社負担の上限や従業員負担の決まりもあるので、ここも注意する。

社宅や社員寮
従業員が賃貸料相当額の50%以上を負担する。

食事の現物支給
社員食堂や仕出し弁当などで従業員に食事を現物支給する場合は、従業員が食事代金の半額以上を負担し、企業の負担額が一人あたり月額3,500円(税抜)以下であれば福利厚生費として計上可


検討時の考え方

これまで、福利厚生の基本をみてきた。次に導入時の私見を述べる。

① 継続できるものを導入する。
人はプラスよりマイナスに強く反応する。福利厚生を導入して当初は喜ばれるだろう。しかし、いずれ「自分の権利」となる。それを廃止した場合は「剥奪された」気持ちになる。例として「ウォーターサーバー」をあげる。導入時はとても喜ばれる。しかしコストカットの号令がかかると、対象になりやすい。従業員もそんな状況の中、表立って反対はできない。しかし、心では「こんなコストも払えないのか」と不安、不満、反感となる。事象だけみると「水を奪われた」ということであり、争いになってもおかしくないものだ。
だから、福利厚生の導入は継続を前提として、廃止の基準を定め、周知しておく必要がある。

② 何のために導入するのか。
福利厚生は従業員へのメッセージでもある。数ある中から「何のため」選択するのかを考えぬく。従業員の「健康」が企業の目的達成の要件なら、健康面を重視する。生活の充実が要件だとするなら家族を含めた施策を検討する。成長を重視するなら資格取得の支援、研修割引サービスを探すなどしてもよい。たんに従業員の「人気とり」での導入は避けたほうがいい。
※従業員の人気は重要であり、今後の変革のために「人気とり」をしておくというのは重要な視点である。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)があるなら、是非それを福利厚生で表現してほしい。

導入失敗例

導入を検討するために失敗例を挙げる。成功例は企業風土によることが多いが失敗例は共通することが多い。

・そもそも従業員が知らない
基本的に「お知らせ」は読まない。だから知らない。

・ 使用率が低い
割引系の福利厚生は「webで簡単」と言うが、人の「面倒くさい」を甘くみてはいけない。使える割引を探すのも面倒、注意書きを読むのも面倒、アプリのダウンロードさえも面倒である。家族も利用できるものも多いが、その家族に伝えるということも面倒だったりする。

だから、「使わない人は損をしている」という感情にアプローチしたほうがいい。「使うと得」ではなく「使わないと損」だ。

おわりに

もっと書きたいことはあるが収集がつかないので終えることにする。
福利厚生は結構面倒くさい。サービスも多い。しかし、企業文化の醸成に役に立つ。是非、会社の目的を表現してほしい。ユニークさを内外に表現することもできる。いろいろなアイディアをインプットしてほしい。
福利厚生は、総務の腕の見せ所である。うまく、深く、使って、良い会社へ導いてほしい。

「福利厚生はこうせい」。
少しでも役に立てば幸いに思う。


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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