日常
こつこつ こつこつ
あの人は不思議だ。
いつも、いつも、毎日、毎日、それこそずーっと、同じことをしているように思う。
飽きたりしないのだろうか、それとも、飽きてしまっているのだろうか。
おんなじ毎日の繰り返しなんて、変化がなさすぎてつまらない。私だったら、そんなことを思ってしまう。
こつこつ こつこつ
そんな擬音が聞こえてくるほど、それはあの人を表している。
たしかに、日々出てくるご飯は違うものだし、雨の日もあれば晴れの日もあって、掃除、洗濯なんかも、その日によって多少の違いはあると思う。それでも、本質的に違いはないように思うし、ただの繰り返しにしか思えない。
それでも、この前聞いてみたときには
「同じことなんてありませんよ。日々、いえ、一瞬一瞬でも、変化があって、それが刺激となる。おもしろいものですよ」
って。
私は、そんなの強がりだと思った。
あるとき、私が熱を出して寝こんだときには、そばにいて看病してくれた。それでも、日々行っていることは手を抜いておらず、こつこつ片づけているのを弱った目と頭でかろうじて見えた。
こつこつ こつこつ
すっかり元気になって、いつものように、いつものような、あの人の姿を見る。すると、不思議に安心して、いつも通りが戻ってきた、元気になった、って気がした。
やっぱり、今でも不思議に思うし、つまらないんじゃないかな、とか、強がり言ってるんじゃないかな、とか、そんなことばかり思うけれど、私にとっては、あの姿を見ていると、安心できて、日常を感じられる。
毎日、毎日、よく続けられるなぁ、と思う。私だったらすぐに飽きて放り投げてしまうなぁ。すごいなぁ。
今では、そんなふうにも感じられる。
とっても難しいことを、しているんだ。それでも、つらそうに見えない。普通にこなして、普通に過ごして、あんなことだって言う。普通って、それぞれなのかなぁ。私には、あんなふうにできるとは思わない。
あの人はいつだって、不思議。それも、変わらない。けれど、その不思議に思う気持ちや見え方が変わってもいる。おんなじではないのかなぁ。不思議だなぁ。
こつこつ こつこつ
今日も、あの人が、いてくれる。
私の日常が、ここに、ある。