その鼓動は誰がために
※ 少しですが性描写もありますので、ご注意ください。
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ぼやけた思考に 霞む視界に かろうじて朝だとわかったのは、カーテンから射しこむ光のおかげであった。
私は、半覚醒の獣みたいに、のっそりと起き上がって頭を左右に振ると、彼がいないことに気がついた。もう、仕事に出かけたのだろう。
ほとんど裸同然の衣類を脱ぎ捨てて、シャワーを浴びる。髪から顔、肩、胸、腕、お腹、あそこ、足へと、温かな液体が滑り落ち、包まれていく心地よさに、浄化される気分になる。すべてが洗い流されていく中で、私のこの気持ちや衝動まですべて消してくれればいいのに、と願いながら、汚れだけがきれいにされていく。いや、この穢れはきれいにできていないかも、しれない。
朝食も取らずにホテルをチェックアウトすると、家に向かった。
私は、いつまで、こんな生活を続けていくのだろう。
家路に向かう道中まで、私の頭の中はそれでいっぱいだった。いつも、いつも。そんなことばかり考えては、後悔に似た念を感じ、きっとそんなことも忘れて日々を過ごしては同じことの繰り返し。私はいつまで、こんなことを続けるのだろう。
……そんなこと、わかっている。わかっているけれど、実際には目を逸らしていることも。
家に着くと、京介の姿は見えず、一夜明けた彼の生活臭だけが残されていた。私は荷物を投げ捨てて、ソファに体を沈める。昨夜のことを思い出しながら、反応してしまう自分に嫌気がさすこともなかった。
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