1on1の思想
株式会社ブレインパッドでデータサイエンティストをしているasanoです。
本記事は株式会社ブレインパッドのアドベントカレンダー 2日目のシリーズ2です。
※ シリーズ1は@zakuroさんが執筆
弊社には1on1の制度があり、ありがたくこの恩恵を受けていました。
しかしいざ自分が1on1する立場になったときに関連書籍や記事を読むと経験学習や成長支援にフォーカスした内容が多く、そこに至るまでの前段があるのでは…?というモヤモヤがありました。
これに対して少し言語化できたので記事にしました。
会社の方針とは無関係であくまで主観でまとめた内容にはなりますが、誰かの1on1がより良くなるきっかけになれば幸いです。
はじめに
※ 前提として1on1は受ける側のための時間であり、終わった後に1on1してよかったと思ってもらえればそれでOKです。
1on1をする目的は次の3つだと考えています。
精神的支援:「精神面の障害」を取り除く
業務支援:「精神面以外の障害」を取り除く
成長支援:経験学習の促進
1on1の目的その1:精神的支援
精神的支援も大きく3つに分けられると考えています。
①パニックゾーンからの救出
②上司と部下の信頼関係構築
③モチベーション向上
精神的支援①:パニックゾーンからの救出
パニックゾーンとは
パニックゾーンは、ラーニングゾーンよりさらに外側に出たところに位置します。**今までのスキルセットが通用しないばかりか、そこで何が起きているのかもよく分かりません。**自分のコントロール外の世界で、ややもすると精神的な不調をきたしかねないゾーンです。
https://globis.jp/article/1369
![](https://assets.st-note.com/img/1701449540205-21hX1tNbO0.png?width=1200)
人が成長するゾーンを3つに分けたモデルは、コンフォートゾーン・ラーニングゾーン・パニックゾーンとあり、組織の中でただのひとりもパニックゾーンにいてはならないと思っています。
会社としての生産性云々の前に個人の生活や人生に支障をきたしかねない話です。
たとえ目の前の業務や環境を変えずとも本人の認識を改めてもらうだけでパニックゾーンから脱出することが可能です。
そのためにも定期的に1on1をすることでアラートを上げやすい環境、人間関係を日頃から構築しておくことが重要だと考えています。
メンバーの様子が普段と違う場合にマネージャー側から原因を探るなどしてそもそもパニックゾーンに入ってしまうのを防ぐことが理想的です。
ヒヤリハットのような話は精神面にも通ずる話だと思います。
無事故の兆候の時点で対策を打つのが健全な状態です。
万が一パニックゾーンに入ってしまったときに1on1がセーフティーネットとして機能するのがあるべき姿だと考えています。
精神的支援②:上司と部下の信頼関係構築
私が働いているブレインパッドという会社では案件とは別にカウンセラーという上司がついていて、カウンセラーと1on1をします。一般的にはメンターといったほうが想像しやすいかもしれません。
(なお、プロマネとメンバーの1on1は任意ですがほとんどのプロジェクトで実施されている印象です)
ただ上司の立場によって1on1に求められることが少し違うと思っています。
プロマネに求められること:心理的安全性の確保
カウンセラーに求められること:案件以外のコミュニティを作る。評価フィードバックに納得感を持たせる。
プロマネの場合:心理的安全性の確保
対人関係のリスクをとってでもプロジェクトや仕事の目的を遂行するための行動をとれるようにする=心理的安全性を確保するために必要だと思っています。
心理的安全性についてはGoogleのre:Workを参照
カウンセラー:案件以外でコミュニティを作る
所属しているコミュニティが多いと幸福度が上がるという通説があります。
ひとつのコミュニティがダメでも逃げ場所がある、相談できる場所がある、というのは心のセーフティネットとしての役割を果たせます。
例えば案件でモヤモヤしていたことがあってもプライベートの関係(家族・パートナー・友人)には機密情報的にも背景情報的にも話せませんが、社内の別のコミュニティの人間に話すのは何も問題ありません。
この立場を確立し、案件以外のコミュニティを形成するのがカウンセラー役割のひとつだと思っています。
参考:[あなたはいくつのコミュニティに入ってる?幸福度が高い北欧の国との違い|原田光(遊び学者)] https://note.com/nobito_hikaru/n/n0becd89efb95
カウンセラーの場合:評価フィードバックに納得感を持たせる
ブレインパッドではカウンセラーが最終的な評価のフィードバックをします。
実際は普段仕事をしながらプロマネから本人にフィードバックしている内容を改めて第三者から伝えているだけではあるのですが、前職に比べてこのへんの評価周りが丁寧に設計されており、あくまで個人の意見ではございますが好感を覚えています。
そもそも公正で適正な評価などはなく、いかに納得感ある評価の仕組みを作れるか、という話に尽きると思います。
また評価の内容以外にも伝え方によって工夫できる点があると考えています。
例えばカウンセラー=第三者が評価フィードバックするのはウインザー効果によって納得感が得られやすいと考えています。
ただしいきなり知らない人からフィードバックされても納得感はないため、「日頃から自分のことを見ている第三者」の位置を確立するためにも1on1をする必要があります。
精神的支援③:モチベーション向上
成長支援に近い部分もあるが、今の仕事の価値をリフレームしたり、
良い行動や本人が気づいていない強みに対してフィードバックするなどしてモチベーション向上に繋げることも役割のひとつだと考えています。
![](https://assets.st-note.com/img/1701450364363-YXJXxRSX6U.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1701450369638-WwjnIfYHXo.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1701450374119-tFFcc0tYCN.png?width=1200)
1on1の目的その2:業務支援
これはシンプルに業務上困っていることを解消することです。
技術的な話、社内ルールや経費申請の話など内容は様々です。
1on1はコーチングや傾聴が大事だと言いますが。ここはティーチングして正解を伝えてよい部分だと考えています。
1on1の目的その3:成長支援(経験学習の促進)
1on1の本ではよく「成長支援(経験学習の促進)」がフォーカスされますが、これは精神的支援と業務支援ができて初めて達成できると考えています。
![](https://assets.st-note.com/img/1701450619479-HlMCwscZqj.png?width=1200)
覚えておきたいこと
全員が全員1on1やフィードバックを求めているわけではなく、実施しなくてもご自身の力だけで健全に成長していく方も多いと思います。
なのであなたは1on1に何を求めるか?という認識合わせをして、それに応じて内容・頻度・時間などを変えていくとお互いにとってよい時間が過ごせると思います。
冒頭にも書いたとおり、前提として1on1は受ける側のための時間であり、終わった後に1on1してよかったと思ってもらえればそれでOKです。
さいごに
人材育成に答えはなく、常に価値感と人が変わる時代なので、Unlearningしてアップデートしていきたいと思っています!
参考
【Z世代がたった数年で会社を見切る理由】「いても無駄」と「言っても無駄」/キャリア安全性の欠如/生存者バイアスの横行/悪しきマネジメントの継承/コンサルが人気の理由【Momentor代表 坂井風太】
【Z世代育成はスラムダンクに学べ】組織効力感を高める方法/成長の踊り場の乗り越え方/「生存者バイアス」を捨てよ/1on1面談のコツ/強要ではなく挑戦を促す【Momentor代表 坂井風太】