今日、メンバー発表。
「おかあちゃん、グローブの袋にボールが入ってるから見てみて」
土曜日の夜。部活から帰り、ドカッとソファーに倒れ込んだ長男が妻に声を掛けた。
***
長男は高校三年生。彼の高校野球も、残り三ヶ月程度となった。最上級生になったこの春、思うような結果が出ず、なかなかAチームに入ることができないでいる。
このまま背番号をもらえないのか。
今日、春大会のメンバー発表がある。
土曜日の練習試合、最後のチャンスという形でBチームにいる三年生が何人か呼ばれ、その中に長男も入っていた。
土曜日、私と妻は次男の方に帯同していて、長男の結果は、たまに更新される野球部の掲示板で試合情報をチラチラと見るだけ。そこにはピッチャーとキャッチャーと、二塁打以上の長打しか載らないから、外野手の長男は、長打を打たないと、出たか、出ていないかも分からない。
夕方、長男の名前を見つけた。
(本)のところに名前があった。
本?
本塁打。
ホームランである。
帰り道、長男にラインをした。
「柵越え?」
「うん」
スリーランホームランだったという。その日は唯一のホームラン。
***
「おかあちゃん、グローブの袋にボールが入ってるから見てみて」
妻が出した、そのボールには日付と名前と「第1号」という字が書いてあった。
ホームランボール。
私と妻は浮かれた。
「これでAチーム入りでは?」
「背番号もらえるのでは?」
日曜日、今回特別に呼ばれたBチームの三年生が集められ、監督から一人ひとりに言葉が掛けられたという。
長男には、「昨日は一本出たが、一本出たからって、それだけですぐにAチームに呼ぶことは無い」という言葉があったという。
長男は納得しているようだ。
「たしかにそれまで全然打ててなかったし」
今日、春大会のメンバー発表がある。
昨秋の新人戦は、ギリギリメンバーに入り、背番号をもらった。だが、今回は厳しいかもしれない。
どうなるか。
どうか、ギリギリでもいいから、入ってほしい。