プランナーからディレクターになるのに必要なスキルとは?
「具体⇄抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問
という書籍が面白かった。プランナーからディレクターを目指すヒントがあると思えたので、思考の整理を兼ねて。
本書の構成
本書の構成は
・なぜ、具体⇄抽象が大事なのか(Why)
・具体と抽象とは何か(What-総論)
・抽象とは何か(What-各論)
・具体とは何か(What-各論)
・どのように応用するのか(How)
という、お手本のようにキレイな構成である。
→なぜ大事なのか?
→で、一体それは何なのか?
→なるほど、わかった。で、どう使うのか?の流れになっている。
具体と抽象はゲームの企画に当てはめると、
・抽象 = コンセプト
・具体 = 各機能の仕様
だろうか。
少し例を使ってブレイクダウンしてみよう。
ここでは『メタルギア・ソリッド』を使って考えてみる。
メタルギア・ソリッドにおける具体と抽象
・抽象 = コンセプト = 潜入のスリルを味わうゲーム
・具体 = 仕様 = スリルを味わうためのギミック
・歩くと、足音がする
・歩くと、足跡が残る
・監視カメラがあり、視界に入ると敵に気づかれる
・敵に気づかれると、仲間を呼ばれて囲まれる
・気づかれずに後ろから近づくと、無力化できる
・ダンボールを被ると、目を誤魔化せるかもしれない
このようなものがある。
公式サイトより引用
https://www.konami.com/mg/archive/mgs_tlc/
そもそものコンセプトである「潜入のスリルを味わう」がないとすべては始まらない。
スリルは、リスクとリターンから生まれるものであるから、ディレクターがスリルを定義することで、
プランナーは「それなら、監視カメラの先にレアアイテムを置いてみよう」とか「敵を無力化すると、専用アイテムを獲得できる(MGS2のドッグタグ)」といったアイデアが出てくる。
しかし、ゲーム業界で、ディレクターというのは絶対数が少ない。
構造上、1タイトルにプランナーが複数名いるのに対して、ディレクターは原則1名であるからだ。
※2021年の昨今は、細分化して、ゲームディレクター、コンテンツディレクター、クリエイティブディレクターなど、複数立てる場合もある。
プランナーからディレクターになるのに必要なスキルを学ぶ機会は少ない
プランナーからディレクターが育たない問題というのは、根深い問題であるがひとつの解として、先にあげたコンセプトをつくれるような「抽象化」機会が少ないことだろう。特に日頃の運営をやっていると、具体⇄抽象の向いている方向が限定されるからだ。
A)抽象→具体
B)具体→具体
の方向はあっても、
C)具体→抽象
D)抽象→抽象
という機会が少ない。
この方向をスマホゲームの運営にたとえてみる。
多くの場合が、運営ディレクターないしは運営プロデューサーから、プランナーにオーダーがいくというのが自然な流れだろう。
具体×抽象マトリクス
A)抽象→具体
抽象「購入率を上げてほしい、購入単価を上げてほしい」
具体「購入率が上がるように、ステップアップガチャのSTEP1を爆安にします。購入単価が上がるよう、STEP100に激レアアイテムを配置します」
B)具体→具体
具体「購入率、購入単価を上げたいから、あのタイトルの●●みたいなの取り入れて欲しい」
具体「●●取り入れました!」
C)具体→抽象
具体「購入率、購入単価どちらも低い状態だから上げてくれ」
抽象「そもそもの課題に立ち返ろう。リアルのカードゲームと一緒で、戦う相手がいないと、別に欲しいと思わない。じゃあ、まずは戦う機会と頻度を見直してみよう」
「(戦う機会が増えたから、負けて悔しいと思う人が増えて、アイテムを買ってくれる機会も増えた!)」
D)抽象→抽象
抽象「これはパレートの法則で、云々」
抽象「ふむ、たしかに、パレートの法則で、云々」
現場プランナーをしていると、どうしてもA,Bの議論が多いのではないだろうか。これは、プランナーが悪い、ディレクターが良いではなく、見ているレイヤーが単純に違うから起こるのだ。
プランナーは、個別、具体、部分
であるのに対して、
ディレクターは、全体、抽象、統合
を取り扱う。
立場上ディレクターであったとしても、がたとえば、プレゼントボックスの具体的な仕様”だけ”を見ていたら、それはヤバい。いますぐ逃げて!
ということで、抽象スキルを学んでいくのは、プランナーがキャリアアップを目指していくために有用だと提言したい。
その上で、ここにあげた書籍は良さそうだ。