【長編小説】(2)永遠よ、さようなら
朝、目を覚ます。山間の限界集落にある古い平屋の古民家は、夏真っ盛りの時分においても朝晩は少しだけ肌寒い。肩まで掛けたブランケットから抜け出し、寝巻きのTシャツの上に薄いパーカーを羽織って立ち上がる。一人暮らしに万年床を咎める者など存在しない。いい加減そろそろシーツを洗って布団を干さなければなどと考えるけれど、考えるだけ。実行に移すことはしない。
山の沢から来ている水道水は冷たい。冬は氷を液体にしたような凶器と化すが、夏にはキリッと心地良い。大雑把に顔を洗ったあやめは、まだ