鳴平伝八

なりひらでんぱち 小説が好きです。 文字を綴るのが楽しいです。 日々勉強中。 アドバイス等いただけたら感激です。 Instagram den8den8 Twitter  @narihiraden8

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最近の記事

社畜の唄

休日出勤が当たり前の社会に出て三度目の春 会社のために花びらは散った 幸せとは何かを考えもしなかったあの頃 心の中 一筋の灯りだけを頼りに 「もう辞めてもいいよ?」 心配する声だけが支えで もうちょっとだけ頑張れるのは 君がいてくれるから 十八連勤を終え久しぶりの休日二度寝します 遅刻かと飛び起き時計をみる 充実感は隙間に見つける 今一度 唄う 時間に余裕があるのは君のお陰 幸せとは何かと気付いた 気付かされた 瞳の中 一筋の掬う 写る僕 「もう辞めなよ!」 心配

    • 迷惑

      「人様には迷惑をかけずに生きなさい」 母の口癖だった。 小学生ながらに人には迷惑をかけてはいけないんだと考えるようになった。でも、よく先生にも怒られたし友達にも助けてもらったから迷惑かけちゃってたんだろうな。 中学生でもよく先生に怒られた。 高校生なんか友達がいないと何にも出来なかった。 大学に至っては誰かに依存しないと恐怖すら感じていた。 去年から社会に出て働きだした。先輩や上司には迷惑をかけっぱなしだから本当に申し訳ない。 「あれ?」 ふと思い返して声に出てしまった

      • ショートショート「努々夢とは思えません」

         僕は空を飛んでいる。なんて気持ちが良いんだ。  ならんで飛んでいる鳥がこちらに挨拶してくる。 「君は人間なのに空が飛べるんだね」 「そうだよ。飛ぶことは気持ちが良いね」 「そうだね、でも気をつけて。飛びたての人は落ちやすいから」  鳥の語気が変わった気がした。 「え?」  そう聞き返した瞬間急に鳥が上空へ舞い上がる。  いや、そうじゃない、僕が落ちているんだ!  手と足をバタバタさせて必死にもがいて見せる!  遠く離れた鳥が不敵に笑って見えた。 ドガッ  大きな音と体の鈍

        • ショートショート「ただそれは僕のためでもある」

          人生なんてと悟っていた。 こんな人生なんて、死んだ方がマシだと思っていた。 楽しいことなんて何もないし、金もない、夢もない。 何のために生きているのかわかんなくなっていた。 もう、死んでやろう。 そんな覚悟、これっぽっちもなかったことに気がついて、勝手に涙が溢れてきた。 生きるという選択肢しか選ぶことが出来なかった。 これを絶望と呼んでいた。 本当の絶望を知らなかったから。 君に出会うまでは。 君に出会って、生きることがこんなに素晴らしい事を教えてもらった。 生きるとい

          ショートショート「DNA」

          親バカと言ってもらって構わない。 僕は親バカだ。 認めよう。 我が子の事がかわいくて仕方ない。 一挙一動一発言が心を揺れ動かす。 でもだんだん成長してきてふざけた行動をとったりする。よくわからない動画の真似して変な顔してる。 口も達者になった。 言い訳が多くなったし、すぐ余計な言葉を覚えてくる。 言うことも聞かなくなってきたなぁ。 あ、剣とか銃が好きでよく戦ってる。 力加減ができなくていつも全力だ。 あれ?なんか身に覚えがあるぞ?

          ショートショート「DNA」

          ショートショート「君の好きな色」

          「みぃくん!好きです。付き合ってください」 千夏とは高校から付き合っている。 「あの告白からもう10年も経つのか、早いな」 5年前に結婚して2人の子宝にも恵まれた。 「10年で色々あったね。揃って絶賛育児に奮闘中だなんて、あの日は夢にも思わなかった」 子供の寝顔を眺めながらふふっと千夏が笑った。 「みぃくん?」 「ん?」 「10年も一緒にいてさ、飽きないの?…私に」 「そうだなぁ…飽きないね。って言うかそういう存在じゃないでしょ」 告白された時は正直好きではなかった。普

          ショートショート「君の好きな色」

          ショートショート「君が好きすぎるから」

          ぼくの彼女は恥ずかしがり屋さん。 今日は彼女とデートの約束だったんだけど、急に予定が入ってらしくデートができなかった。 電話をしたけど全然連絡がとれなくて自宅までいって安否確認。 良かった。元気だった。連絡がとれないとどうしても不安になる。彼氏としてはそこはドンと構えて男らしくいたいのだけど、かわいい彼女の事を想ったらどうしてもじっとしていられないんだ。 ある日、彼女が知らない男と歩いているのを見かけた。それも親しげに。手なんか握ってあの男、どういうつもりだ? 後をつける

          ショートショート「君が好きすぎるから」

          ショートショート「涙」

          彼と別れた。 別に悲しくなんかない。 付き合っておいて何だがなかなか最低の彼氏だった。 お金は返さないしちゃらんぽらんで責任感もない。 今頃別の女のところに転がり込んでいるに違いない。 せいせいしている。 でもなんでかな?涙が溢れてくる。 強がってるわけじゃないんだ。 溢れてほしくないのに勝手に溢れてくる。 かんだってかんだって鼻水は止まらない。 充血してかゆみも強い。 もう目も鼻も真っ赤になってる。 そういえば最近春めいてきたなぁ。

          ショートショート「涙」

          ショートショート「怖い話」

          今日は彼氏のみっ君とドライブデート。 前日仕事が遅かったのに朝早くから準備して時間通りに迎えに来てくれた。 その優しさが嬉しかった。 ちょっと遠出して海に行こうってことになった。 とは言っても泳ぐには少し気温が低いので海の家で食べ物をかって浜辺を散策することになった。 浜辺は足をとられてとても歩きにくかったけど、彼は私の手を引っ張ってくれた。 足だけ海につけて水をかけたりして、はしゃいでいたら彼、こけちゃってずぶ濡れ。 二人で思いっきり笑ったの。 楽しい時間はあっという

          ショートショート「怖い話」

          ショートショート「息子」

          今日は季節の割には気温が高く息子と公園まで遊びにいった。 息子は一丁前に 「車が来たら道路の端っこで止まってね」 と教えてくれた。 親としてはずっと教えていたことを理解して使ってくれることに喜びを感じる。 公園にはたくさんの枯れ葉が落ちていた。上を歩けばザザッザザッと小気味良い音がする。 息子も同じなのか何度も踏んだり蹴りあげたりしている。 「見て!」 唐突に声をかけられた。枯れ葉を重ねて僕の方に向けている。 「「ハートみたい」」 声量は違えど息子とユニゾンした。その年で

          ショートショート「息子」

          ショートショート「夕陽」

          心地いい気温にうとうとしていると視界の端に強い光が差し込んだ。 「うぅ、う、え?もうこんな時間?」 私は午後の微睡みに耐えきれず眠っていたようで窓から差し込む夕陽で目を覚ました。 夕焼けに染まる空が美しい。直視できぬほど眩しくて視線を反らした。 反らした視線は左手の薬指に。 「はぁ」 思わずため息が漏れた。 「さ、夕飯の買い出しでも行くかな」 光を拒絶するようにカーテンを閉めた。 自然と指輪の跡を擦っていた。

          ショートショート「夕陽」

          ショートショート「絆創膏」

          「痛っ」 皿を洗っていたら指に痛みが走った。 乾燥する季節だから仕方ない。そう思って絆創膏を探し行ったら、いつも使わない絆創膏の箱を見つけた。 「これって」 思い当たることと言えば一つしかなかった。 こうやって乾燥して肌が荒れるのはいつものこと。私はがさつだから「平気平気」とそのままにしていた。 君はいつもそれを心配してこの絆創膏を貼ってくれたね。 もう、すっかり習慣になっちゃったよ。 心に貼る絆創膏って無いのかな?

          ショートショート「絆創膏」

          ショートショート「電池」

          私ってバカね。あなたのためだと思って何でもかんでもお世話して。わがままもたくさん叶えてきた。 でももう…… 「何本って?」 「えっと、単三電池二本」 私は、彼から誕生日にもらったおもちゃに使う電池を探していた。 電源ボタンを押すとベンチに座ったカップルがゆっくり回る仕様になっていた。 オルゴールの音が心地よかった。 彼は甘えん坊で、都合のいい言い分けが得意だった。でもそんな彼を支えている私。と、自惚れていた。 彼のためだと我慢もしたし、無理もした。   オルゴールの音に

          ショートショート「電池」

          ショートショート「筋トレ」

          「ダイエットしなきゃなー」 「見るからにお腹ヤバイもんな」 「うるせーよ」  僕のお腹を悪気もなくいじってくるこの男は筋トレマニアの同僚だ。こういう話題の時は決まってこう言う。 「筋トレしなよ」 「筋トレとかしてゴリマッチョとか嫌だし」  なんで筋トレなんだ?ダイエットならウォーキングとかジョギングだろ。  このやり取りがいつもの事だが、今日は少し様子が違う。 「そんなの、なってから悩めよ」  正論だった。 「その腹が嫌だって思ってるんだろ?なら何か始めないとダメだろ!それは

          ショートショート「筋トレ」

          い段の韻の物語

          潜む大都会 いや、競争社会? よもや、共存社会? あーつまらない そこに用はない 我が家が安全地帯 すがる無償の愛 なのにこきつかい like a 召し使い 態度はいささか横柄 「本当は心から感謝してい……」 なんて嘘臭い その輝き 僕は直視できない まだ本気だしていない ため息止まらない だけど外なんか出られない これは武者震い? いや、視線へのおののき おまけに 止まない眩暈に出会い頭グーパンチ 僕にはまだ早い またでるため息 個人で閉会式? 悲しい結末に よってたかるマ

          い段の韻の物語

          ショートショート「切れ味の悪い綺麗事」

          彼女の背中。 女友達が結婚する。 彼氏のことでよく相談されていた。どうしても相談三割、愚痴七割だから彼氏の印象はあまり良くなかった。 それでも付き合っているし、彼氏が好きなんだと言うから、僕の範疇ではない恋愛もあるのだと思った。 ある日その子から相談をされた。 「プロポーズされてOKしたけどちょっと不安なんだ」 僕は 「愚痴も多かったけど、それでもここまで一緒にいてプロポーズも受けたのはそういうことなんじゃない?幸せになんなよ」 と彼女の背中を押した。 僕の背中 女友達から

          ショートショート「切れ味の悪い綺麗事」