カズオ・イシグロが応えて云った。「なるほど。おもしろい話ですね。記憶は死に対する部分的な勝利といえますね」
生物学者、福岡伸一さんから「絶え間なく合成と分解を繰り返し、一年もたてば物質的には別人になっている人間において、細胞と細胞の神経回路が保たれていれば、記憶は保存されうる」と聞かされた時のカズオ・イシグロさんの言葉です。
彼の著作の多くが“記憶”をテーマに執筆されることを思うと、なんだか微笑ましいというか、そうだよなぁ、“部分的な勝利”ってうなずけるなぁ、と思ってしまった。
これは福岡伸一さんの『福岡伸一、西田哲学を読む』のプロローグに出てくるエピソード。
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