「音楽視点から見たD.LEAGUE 23-24」ROUND.4:異なる世界観の衝突
プロダンスリーグ『D.LEAGUE 23-24 ROUND.4』が12月15日に開催された。今回も全6試合を音楽的な視点を交えてレポートする。
世界でも類を見ない本リーグは2021年、コロナ禍の真っただ中で開幕した。2週間に1試合という過酷なスケジュールを戦い抜き、試行錯誤のなかで3シーズンを既に終了。特に昨シーズンは念願となるフルキャパシティの観客とともに開催され、レギュラーシーズンはCyberAgent Legit、CHAMPIONSHIPはKADOKAWA DREAMSが優勝を収めた。
レギュラーシーズンは開幕後、半年間・14ラウンドに及ぶ。参加するのは、昨季に引き続きavex ROYALBRATS、KADOKAWA DREAMS、KOSÉ 8ROCKS、CyberAgent Legit、SEGA SAMMY LUX、SEPTENI RAPTURES、FULLCAST RAISERZ、Benefit one MONOLIZ、Medical Concierge I'moon、dip BATTLES、LIFULL ALT-RHYTHM、Valuence INFINITIES、さらに新チームのDYM MESSENGERSを加えた計13団体。
ROUND.3のジャッジはSHINICHI、KETZ、WREIKO、KATSUYA、Ruuが務め、採点は「スキル」、「クリエイション」、「コレオグラフ」、「スタイル」、「完成度」という観点で行われる。
全ラウンドは以下のアーカイブにフル尺公開されているので、未見の方はぜひチェックしてほしい。
■第1試合
Valuence INFINITIES vs SEPTENI RAPTURES
1戦目はオルガンの音が効いた音でブレイキン中心に構成したValuence、テーマに沿ってストイックな世界観を表現したSEPTINIが激突。どちらも音楽とダンスでイナタサを感じさせる内容だった。
結果は1-5でSEPTENI RAPTURESの勝利(AUDIENCE:赤/SAM:青/SHINICHI:赤/KETZ:赤/KATSUYA:赤/Ruu:赤)。
<勝者コメント>
AYUMI「この結果が純粋に嬉しいです。次に繋げられるようにたくさん練習して、まだまだ進化していきます」
■第2試合
FULLCAST RAISERZ vs KADOKAWA DREAMS
FULLCASTの楽曲で日本語が出てくるのは珍しく、衣装とダンスも異色だった。そしてKADOKAWAはプロデューサー・YANAGIMANと、彼が教鞭を振るう洗足学園音楽大学による楽曲ということで興味深い。
前回の私的楽曲賞に選んだdip BATTLES「No, Soul? Yes, Soul!!!」も現役音大生が関わっていたが、これは経験を積みたい若手プレイヤーにとっても、コストを抑えたいチームにとってはWINWINの関係なのかもしれない。今後も学生が関わるようなコラボレーションが増えるのか、注目していこう。
結果は0-6でKADOKAWA DREAMSのSWEEP勝利(AUDIENCE:赤/SAM:赤/SHINICHI:赤/KETZ:赤/KATSUYA:赤/Ruu:赤)。
<勝者コメント>
MINAMI「昨シーズンはRAISERZさんに負けて悔しい思いでしたが、リベンジを果たせて嬉しいです。本作はもともと『SPACE TRAVEL』という作品で、男女でやっていた内容でした。それを女子だけでやると決めた時は不安もありましたが、みんな同じ人間だからできないことはない、と証明する気持ちで挑みました。まだ完全ではありませんが、もっと練習して作り上げたいと思います」
■第3試合
avex ROYALBRATS vs KOSÉ 8ROCKS
まだ今シーズン1勝で勝ちたいavex、拍をリズミカルに数えるミニマルな楽曲の上で、アイソレーションの強さを活かしたコレオグラフ。対するKOSEは抑圧の解放と先人へのリスペクトを表現、トライバルな楽曲とダンスだった。
どちらもコンセプチュアルで見ごたえがある内容。なお後者の作曲に携わった2名はアニソンなどを多く制作しているプロデューサーなのが興味深いところである。
勝ちを掴んだのは4-2でavex(AUDIENCE:赤/SAM:赤/SHINICHI:青/KETZ:青/KATSUYA:青/Ruu:青)。
<勝者コメント>
JUMPEI「勝利は嬉しいものだと再確認しました。今回はSPコレオグラファーとして、NYの演出家で振付師のKenichi Kasamatsuさんに手伝ってもらいながら、色々な人の協力でできた作品です。挑戦だったし、見せ切れるか不安でしたが、勝利を得られて嬉しいです」
■第4試合
SEGA SAMMY LUX vs dip BATTLES
未だ勝ち星なしのSEGA SAMMYは「クラシック×LUXのヒップホップ」というテーマのもと、「白鳥の湖」を彷彿とさせるセットアップで登場。さらに音楽はロマン派風の打ち込みストリングスとピアノを使ったビート上にラップが乗っていた。
dipはサイバーな世界観に脱臼したようなビートを合わせ、アニメーションのスタイルで舞う。音色をダンスで表現しているような質感。
結果は4-2でSEGA SAMMY(AUDIENCE:青/SAM:赤/SHINICHI:青/KETZ:赤/KATSUYA:青/Ruu:青)。
<勝者コメント>
KANAU「やっと勝てました。ありがとうございます。去年から思い返すと勝ててなくて、不甲斐なさを感じてました。毎日「どうやったら勝てるかな」と話し合いばかり。今日の1勝が俺たちにとって本当に大きい。ここから絶対流れを変えていきます。これからも付いて来てください」
■第5試合
Benefit one MONOLIZ vs Medical Concierge I`moon
今ROUNDのベストバウト。両チームともに衣装から世界観からダンスから最高だった。そして音楽的には正反対のベクトルを向いていたのが面白い。
Benefit oneの楽曲はメインプロデューサーにギタリストで和琴奏者でもある高谷秀司を迎え、お馴染みのSARMがシンサカイノのビート上で歌っている。このメンツが揃う楽曲はかなり珍しい。さらに和を想起させる歌のドライ加減(リバーブがない)が素晴らしかった。ダンスと見事に相乗効果を起こしていたと思う。
一方のMedical Conciergeの音楽は専属のクリエイティブチーム・SAAG MUSICがついに火を吹いた。シンセの音色やサウンドデザイン、リズムのレイドバック感が洒落ているし、フィーチャリングされたayumi melodyのトーンとフロウもよい。USEN-NEXT時代の楽曲センスが英語詞になって蘇ったように感じた。
これに優劣が付けられるのか……と困惑したが、結果は3-3のドロー。ほっとした。そしてRuuが赤に軍配を上げたことも驚いた(AUDIENCE:赤/SAM:青/SHINICHI:青/KETZ:赤/KATSUYA:青/Ruu:赤)。
■第6試合
CyberAgent Legit vs DYM MESSENGERS
こちらも好勝負だった。CyberAgentは何とゲストコレオグラファーとして、旧SEPTINIディレクター・akihic☆彡を召喚。さらに在籍時タッグを組んでいたプロデューサー・Notが制作した楽曲で挑んだ。5拍子になったり、3連符が入るなどトリッキーなリズムを持つ。思えば20-21シーズンのSEPTINIの勢いは凄かった。特にカフェをテーマにしたショウケースは痺れた覚えがある。
DYMのステージはどこが決まり事で、どこが即興なのか判別できないビバップスタイル。こちらも圧巻だった。NAGAN SERVER and DANCEMBLEの音楽は栗原健によるサックスの音色が素晴らしい。その点で比較すると、CyberAgent楽曲のシンセブラスは聴き劣りしてしまう感じがあった。
しかしCyberAgentの勢いは止められず、開幕4連勝を飾った。4-2(AUDIENCE:青/SAM:青/SHINICHI:青/KETZ:青/KATSUYA:赤/Ruu:赤)。
<勝者コメント>
ATO「とにかくほっとしてます。DYMさんもめちゃめちゃカッコよくて、正直そわそわしてました。勝てて嬉しいです。AKIHIKOさんにディレクションしていただいて、今までにない振り付けでした。次回はお休みですが、パワーアップしてROUND.6で帰ってきます」
■NO MATCH
LIFULL ALT-RHYTHM
■総合ランキング
1位.CyberAgent Legit(12)
2位.KADOKAWA DREAMS(11)
3位.SEPTENI RAPTURES(10)
4位.Benefit one MONOLIZ(9)
5位.Valuence INFINITIES(7)
6位.avex ROYALBRATS(6)
7位.FULLCAST RAISERZ(4)
8位.SEGA SAMMY LUX(3)
9位.KOSÉ 8ROCKS(3)
10位.DYM MESSENGERS(3)
11位.LIFULL ALT-RHYTHM(2)
12位.Medical Concierge I'moon(2)
13位.dip BATTLES(0)
(カッコ内はCSP=チャンピオンシップポイント)
MVD(Most Valuable Dancer):TAKI(SEGA SAMMY LUX)
私的楽曲賞:
Benefit one MONOLIZ「Seasons of equality」
Medical Concierge I'moon「Flow」
どのチームもプロであるからして、私は彼らのダンスに非を打つことはできない。確かに音楽なら少しはできるかもしれないが、それもどうでもいい。観たいのは今ROUNDの第5試合のような世界観や美学のぶつかり合いだ。
少し更新が遅れてしまっているが、次回も楽しみにしたい。
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