展覧会レポ:ヨックモックミュージアム「開館記念第4弾 Picasso: Odes to Nature ピカソ いのちの讃歌」
【約4,400文字、写真約40枚】
表参道にあるヨックモックミュージアムに初めて行きました。そこで「開館記念第4弾 Picasso: Odes to Nature ピカソ いのちの讃歌」を鑑賞した感想を書きます。
結論から言うと、住宅地内の小さいながらも心温まる独創的な美術館でした。特徴は、❶ピカソのセラミック(陶磁器)のみを収集した貴重なコレクション、❷作品はどれも緩かわのため自然と笑みがこぼれて平和な気持ちになる、❸建物全体もコレクションの性質を反映した柔らかい雰囲気であることです。併設されているカフェのみの利用もおすすめです。
▶︎訪問のきっかけ
ヨックモックミュージアムがあることはオープン時から知っていたものの、「カップヌードルミュージアム 横浜」的に、ヨックモックの代表的なお菓子「シガール」を展示している美術館だと思っていました😅
最近、表参道付近の美術館について調べた際、ヨックモックミュージアムはピカソの作品が中心だと知って興味をもちました。その後、表参道付近に用事があった際、行くことにしました。
▶︎美術館へのアクセス
ヨックモックミュージアムへは、表参道駅から徒歩約10分。青山学院大学の横にある道をまっすぐ進みます。すると、住宅街の中に美術館があります。
住所:東京都港区南青山6丁目15−1
▶︎ヨックモックミュージアムとは
ヨックモックミュージアムは2020年にオープン。(株)ヨックモックHDの会長の藤縄利康さんが精選したコレクションが展示されており、7年かけて造られたそうです。ヨックモックグループが30年以上かけて収集した500点以上のピカソのセラミック作品は世界有数を誇る、とのことです。
ヨックモックミュージアムは、以下を【ミッション】としています。
美術館HPに「ミッション」を掲げているのは珍しいです。ミッションを読むことで、美術館の存在意義や方針が理解できるため、大変ありがたいです。
また、藤縄利康さんは以下のように述べています。ヨックモックが美術館を運営する理由が、藤縄さんの単なる道楽趣味で収集・展示しているのでなく、企業の目指すべき方向と紐付いているところに、納得感がもてました。
美術館の構成は地下1階〜2階です。展示室が地下1階と2階、1階は受付とカフェ、ミュージアムショップです。
展示を見た後「カフェ ヴァローリス」に寄りました。店内の雰囲気や料理も含めて素敵なカフェで、ゆったり寛げました。トイレもスタイリッシュでした。そのため、美術館に入らず、カフェだけの利用もおすすめです。なお、この付近は飛行機が頻繁に低空飛行しているため、うるさいのが難点。
▶︎「開館記念第4弾 Picasso: Odes to Nature ピカソ いのちの讃歌」感想
ヨックモックミュージアムは、ピカソのセラミックを中心に収集しています。この展示会は「生命力」をテーマにして約50作品を展示しています。作品を見るうちに、ほんわか幸せな気持ちになれる展覧会でした。
ピカソとえいば、キュビズムを駆使した複雑な絵画を思い浮かべます。ピカソがたくさんセラミックを作っているのは知りませんでした。セラミックを見て「これはピカソの作品」と言える人は少ないのではないでしょうか。
1階に、ピカソが動物の絵を描く動画が流れていました。ピカソが、躊躇なくサラッと一筆書きで絵を描く姿は新鮮でした。
ピカソのセラミックを見ると、キュビズム絵画のような勢いのあるタッチや、チャレンジングな画風とは違い、泰然自若として、達観したものを感じます。なぜ、その変化が生じたのか疑問に思いました。
セラミックの作成年が1948年以降であることや、会場のキャプションなどを読むと、ピカソは戦争からの開放感からセラミックに目覚めたようです。緩かわで、自然と笑っちゃう素朴な作品は、見る人を平和な気持ちにします。
今まで、色んな作品に挑戦した結果、なぜキャンバスではなく、セラミックに行き着いたのか。ピカソにとって、セラミックにどういう魅力があるのか、本人の解答が展示室に明示されていると良かったかな、と思いました。
2階で約20分の映像が流れていました。その中で、キュレーターやフランソワーズ・ジロー氏などのコメントが、ピカソの作品とともに紹介されていました。ピカソの愛人であるフランソワーズ・ジロー氏は2023年6月6日に亡くなりました。生きたピカソを直接知る人たちのコメントは貴重でした。
また、2階には、ロッキングチェアーが置いてありました。ものすごく座り心地が良かったため、将来欲しくなりました。藤でできた椅子は、祖父母の家にあったためか、何だか懐かしい気持ちになりました。
休日でも、ヨックモックミュージアムは、人が少ないためゆっくりと見ることができました。また、展示作品に、作品リストと連動した連番を振ってあったことはありがたいです。意外と、連番がない美術館が多いです。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?展示数は多くないものの、良かった点は、ピカソの意外な一面を知ることができ、何よりもピカソのセラミックを見ることで、平和で穏やかな気持ちになれたことです。建物全体は、それを体現した雰囲気になっており、独自性がありました。一般的な大きな美術館に飽きた方にはおすすめです。
▶︎ヨックモックとは
個人的に「ヨックモック」のお菓子をもらえば、純粋に「ありがとう!」という感じです。ちょっと高級寄りで贈答品に多いイメージです。子供の頃、バクバク食べていたら、親に注意された記憶があります。
社名(ヨックモック)の由来は、富山県出身の菓子職人で創業者である藤縄則一が訪問したスウェーデンの森と湖に囲まれた小さな町JOKKMOKK。そこにあった食卓を飾るホームメードのお菓子たちに目がとまり、そのように手作りのおいしさのイメージを目指し、社名を決めたそうです。
1969年、(株)ヨックモックの設立と同時に、看板商品である「シガール」は発売されました。シガール(Cigare)はフランス語で「葉巻」です。
ヨックモックは非上場のため、詳しい指標が開示されていません。2022年9月期の売上は204.5億円、当期利益は10.2億円(利益率5.0%)でした。百貨店を中心に約150店舗あることから、1店舗当たり売上は約1.3億円です。
ヨックモックは、表参道でカフェ「ブルー・ブリック・ラウンジ」も運営しています。紅茶1杯が約1,000円のため、私はまだ行ったことがないです😅
また、不動産業も営んでおり、原宿にYMスクウェアが2棟あります。1つは原宿駅近くのNIKEが入っている細長いビル。もう1つは東急プラザ表参道原宿の近くにあり、くら寿司グローバル旗艦店が入っているビルです。過去には、CHARLES & KEITHの日本1号店が入っていました。この土地(建物)は、地価が下がることもなさそうなので、大きなアドバンテージですね。
▶︎今日の美術館飯
▶︎近くの公園情報
ヨックモックミュージアムの近くに「南青山6丁目児童遊園」という公園があります。小さいながら、幅の広いローラー滑り台や、幼児用のブランコなど遊具が充実しています。また、花壇や公衆トイレも設置されていることから、大人も休憩によく利用しているみたいでした。