展覧会レポ:アーティゾン美術館「ブランクーシ 本質を象る」「石橋財団コレクション選」
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アーティゾン美術館で開催中の「ブランクーシ 本質を象る」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示」を鑑賞しました。その感想を書きます。
結論から言うと、行く価値は大いにあると思いました。それは主に、1)ブランクーシの作品約90点を集めた日本初の個展、2)ブランクーシの変遷や考えが体系的に分かる、3)展示方法が面白かった(一部、課題あり)ことによります。是非、心を「無」して鑑賞しましょう。特に、現代アートやミニマールアートが好きな人は必見の展覧会だと思います。
▼以前に訪問したアーティゾン美術館の展覧会
▶︎訪問のきっかけ
訪問のきっかけは、1)ブランクーシという人に興味があった、2)「本質を象る」というキャッチコピーに惹かれたからです。「象る」(漢字検定準1級)という言葉を使うセンスがステキです。
また、ブランクーシの作品をまとめて見られることも魅力でした。ブランクーシの個展は日本初だそうです!
ブランクーシの作品は、アートに興味を持ち出したころに森美術館などで見ました。その頃は「なんかツルツルしてて、キレイなオブジェやなぁ」くらいしか思いませんでした。
約10年前から徐々にアートを見るようになった中で、自身のアートの好みも少しずつ見えてきました。私は、現代アートのように、普段の生活にはない「気付き」や「多様性」を作品から得ることで、その後の人生や仕事などに活きればいいな、と思うようになりました。
仕事はもちろんのこと、生きる上での「本質」が煮詰まったものが、ブランクーシのような「ミニマルアート」ではないか、と思います。
仕事をする上でも「本質」に気付くことが肝要だと思います。無駄な情報や言い回しが多いと「本質」がズバッと伝わりません。また、課題を解決する上でも、表面上ではなく「本質」から解決しなければなりません。無駄を削ぎ落としていって、結局、最後に残る最も重要なものは何か?、一言で言えば何か?そのヒントをブランクーシ展に期待しました。
▼カール・アンドレもブランクーシの影響を受けたと語っていました
▶︎「ブランクーシ 本質を象る」感想
私は展覧会が始まった最初の土日に行ったため、来場者がとても多かったです。ブランクーシの人気を改めて感じました。
ブランクーシは、ロダンに腕を認められ、1907年からロダンの工房で働いたものの約1カ月で辞めてしまいました。粘土による塑造や分業制に反発したと言われています。その後、石を直彫りした《接吻》がつくられました。
ブランクーシは、色んな思いを煮詰めて作品を作ったのでしょう。そのような考えを続けているうちに「生命の起源や誕生→あらゆる存在の原型→卵形」になったそうです。なるほど、卵形は概念的にも形状的にも根源(本質)ですね、メイクセンスです。
中でも「アトリエ」と題されたスペースに、アーティゾン美術館の気合いを感じました。美術館で初めて見る形の照明が使われていました。そのため、遠くからこの部屋が一際、煌々と光って目立っていました。
私にとって、ブランクーシといえば、森美術館や横浜美術館で見た《空間の鳥》です。シャキーンとした《空間の鳥》に再び出会えて嬉しかったです。
今回の展覧会で《雄鶏》が最も印象に残りました。世界一優雅なツルツルとギザギザのバランスではないでしょうか。不思議と心を奪われました。何となくバイクのHONDAのロゴに似ていると思いました。
ブランクーシは、マン・レイからカメラを教えてもらったり、デュシャンがアメリカでブランクーシの作品を広めたりと、当時の有名人と親交があったようです。ブランクーシは、1907年よりパリ・モンパルナスを拠点にしていました。もしかしたら、ピカソとも交流があったのでしょうか。
運営面に関して、作品にキャプションなどが何もなく、番号しか振られていない点が気になりました。詳細は、作品リストで確認する仕様です。アーティゾン美術館では珍しい取り組みだと思いました。ミニマルな作品から「本質を感じる」ことに集中するための計らいでしょうか。
また、ブランクーシに関わりがあったモディリアーニやデュシャンなどの作品(アーティゾン美術館所蔵)が、ちらほら展示されていました。これらの作品にもキャプションが何もありません。そのため「これはブランクーシの作品なのか?」と困惑しました。デュシャンの作品をブランクーシの作品と言われても「へ〜!」と思ってしまう人もいるのではないでしょうか。
キャプションを付さないアーティゾン美術館の意図は分かります。しかし、ブランクーシ以外の作品はキャプションを付した方が親切だと思いました。もしくは、ブランクーシ以外は展示する必要がなかったかもしれません。
展覧会全体を通して、作品はどれも素晴らしいし、(キャプション問題を除いて)展示方法も面白いと思いました。また、ブランクーシのことを体系的に知ることができた点は良かったです。
ただし、ブランクーシの人物像を深く理解するに至りませんでした。それは主に、1)一緒に行った子供が飽きていたこと、2)来場者が多かったことによります。ブランクーシのような作品に向き合う場合は、一人で心を「無」に近づけて鑑賞した方がいいですね。
会場では映像も上映されていました(私は1秒も見ていません)。それを見れば、ブランクーシについてもっと理解が深まったかもしれません。
なお、コレクション展(後述)と違い、ブランクーシ展の展示室には、来場者が休憩できる椅子やベンチがありませんでした。高齢者や子供のために、1カ所はそれらを設置していただけると助かると思いました。
何にせよ、ミニマルアートの先駆者であるブランクーシ日本初の貴重な個展は、行く価値があると思います!今回の展覧会で、私は「本質」を理解するに至りませんでした。しかし、今後もアートを見続けることで、少しずつ、自分なりの深淵に近付きたいな、と思います。
▼アーティゾン美術館とほぼ同時期にパリのポンピドゥ・センターでも「ブランクーシ展」が開催中(2024年3月27日〜7月1日)
▶︎「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示」感想
アーティゾン美術館は、毎期、3フロアを使って展覧会を開催しています。今回は、6階から4階までサクッと見たつもりでも計1時間半かかってしまいました。ボリュームがあるため、子供と来るには不向きかもしれません。
▼以下、気になった作品をピックアップ
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?日本初のブランクーシの個展は行く価値ありです!特に、現代アートやミニマルアートが好きな人は必見です。ブランクーシの考え方の一端を垣間見ることができました。また、展示方法も面白かったです(一部、課題あり)。なお、できるなら一人で心を「無」にして、鑑賞することをおすすめします。
▶︎今日の美術館飯
▶︎おまけ(カメラを新調)
最近、カメラを買い換えました。 買い替え後、初の展覧会がブランクーシ展でした。買った当初は、使用感の違いをnoteに投稿しようと思っていました。しかし、α7iiの発売からα7ivの発売まで約10年も経つと、全てが刷新されていました。違いを書き切れないため、投稿は止めにしました😅