読書感想:君たちはどう生きるか
読んだきっかけ
昨年の年の瀬、宮崎駿監督の最新作が23年7月に公開されるというニュースを見た。
「君たちはどう生きるか」といえば、吉野源三郎著の小説のマンガ版が数年前にマンガ化され大ヒットしたのが記憶に新しい。というか、カッコつけずに言えば、僕は昨年読んだばかりだ。
そんなホットな状態だったので、「へぇ!コペル君が映画化するのか」と思っていたら、どうやら宮崎駿監督作のものは、吉野源三郎著の小説が着想の起点にはなっているものの、作品としてはまるで別物とのこと。とはいえ、きっと映画公開時点で話題になることは間違いないだろうし、宮崎駿監督作は根強いファンも多い。PRパーソンとしては、それが話題になったときに、曖昧な知識ではなく、ベースにある文脈がなんなのかを理解しておきたいなという気持ちもあり、真面目にもう一度読んでおこうと思った。
総括
本書は、主人公コペル君が元編集者のおじさんとの対話や学校で経験してきたエピソードに対するおじさんの手紙で構成されている。僕が読んだものはマンガ版なので、マンガがほとんどを占めるが、おじさんの手紙のパートは特に読み応えがある(というかこの部分は文章が中心に構成されている)。ので、そんなに読書スピードが早くない僕でもサクッと2~3時間あれば読める(早い人なら1時間程度で行けるのではないだろうか)が、いわゆる「マンガで分かる~」系の本と比べると少し読むのに集中力が必要だなという印象である。またエピソードごとの区切りは割と短めなので、通勤通学の電車の中での隙間読書にも向くと思う。
この本では、エピソードのひとつひとつを知識として知ることは別に重要ではなく、そこから自分が何を感じ、物事の見方を知って、どうやって行動に移していくのかが大切なのだと書かれている。
経験を通じて、心で感じたことを蔑ろにしないこと。教えられたとおりにしているだけでは、”一人前”ではない。その心の声に従って、行動を重ねて、ようやく真理にたどり着く。
本書とは関係ないが、昨シーズン、非常に心を打たれたドラマ「ファーストペンギン!」の中でも、特に個人的に突き刺さった第七話のセリフにも、これと通じるものがあった。
第七話では、主人公・和佳(演:奈緒さん)が、クールな役人・溝口(演:松本若菜さん)の紹介で水産開発研究所の所長・野々宮(演:寺泉憲さん)と出会い、彼らが主催するシンポジウムへの出席・登壇などを依頼され、それに向けた準備を進めていく。そのセリフは、「おさかなボックス」のすごさを野々宮から聞こうとした和佳が野々宮から諭されるシーンに登場する。
野々宮「ダメです。」
和佳「なんでですか。」
野々宮「自分で行き着いた答えは自分の言葉になるからです。それはひとに何かを訴える時にとても強い力を持ちます。」
これまで仕事で、経営者の方などにスピーチを依頼する時に、「ご自身の言葉で語ってください」などと依頼したことが何度もある。今思えば、その言葉の意味も分かっていないのに、偉そうに何を言っていたんだと恥ずかしい気持ちでいっぱいになるが、心を動かされるスピーチとそうでないものは確かにある。
自分の仕事ではないし、僕個人がその善し悪しを語ったり、称賛・批判するつもりは毛頭ないけれど、安倍元首相の国葬の菅前総理の弔事と岸田総理の弔事でもその差を感じた人は多かったのではないだろうか。
▼菅前総理弔事
▼岸田総理弔事
多分この両者の違いは、話者の心が見えるか否かであり、それを真と感じられるか否かなのだと思う。
だいぶ話がそれてしまったが、生業としているマーケティングPRでは、どんなコミュニケーションで消費者を動かすかを考える。そのコミュニケーション自体には、絶対の正解はない。ただ、消費者が実際に動いたプロジェクトは、成功事例として語られ、それらに触れることは出来る。
「君たちはどう生きるか」に書かれていることを改めて思い返すと、その成功事例とどう向き合うべきか非常に明確になってくる。プロジェクトのひとつひとつを知識として知ることは別に重要ではなく、そこから自分が何を感じ、物事の見方を知って、どうやって行動に移していくのかが大切なのだ。
成功事例だけがヒントになるわけではない。「悲しいこと・つらいこと・苦しいこと」が真理にたどり着くヒントとなり得ると、本書の後半でも書かれている。
改めて、人を動かすとはどんなことなんだろうと考えさせられるとともに、自分の物事の見方の乏しさを痛感させられる一冊だった。
2023年は、一年を通じてたくさん本を読もうと思った。
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