出しなよ、音。

28歳、男。人の心に火をつける、ライターのようなライターになりたい。 旅行、時事、言葉遊び、映画、音楽、日常などについて600字程度のコラムを書いていく。

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マガジン

  • 図書館紀行

  • 容赦ない夜ふかし

    夜ふかしについて考える、私小説、的な、なにか。

  • サンクトペテルブルク取材日記

    2019年、付き合ったらすぐ結婚になりそうだからと画策した「最後の一人旅」は、出発前日に彼女に振られるという大事故から始まる。 失意のまま向かうロシア、サンクトペテルブルクでぼくは何を見たのか。 これは傷心旅行ではない。自らを問いただす、昇心旅行だ。

最近の記事

あの日のCCレモン、今日の鬼レモン。

食は重要なライフステージで、成長の物差しだ。 自分がプリンを食べているときコーヒーゼリーを食べ、バーモンドカレーを食べているときに、ジャワカレーを食べる兄や姉がずっとうらやましかった。 「おとなのふりかけ」も、ブラックコーヒーも、大人が食べているものがいつもうらやましかった。そして、それを食べることが許されたときがいつもうれしかった。 とりわけ、初めて炭酸飲料を飲むことを許されたときの喜びは鮮明に覚えている。忘れるはずもない。あれは…いつだっけ? 何歳かは忘れたが、たし

    • 好きなものはキャンディみたいに消えていく

      ぼくが今唯一好きだったもの、バンド「赤い公園」の作詞作曲とギターを務めていた津野米咲(つのまいさ)さんが、29歳になったばかりの10月18日、亡くなった。自殺とみられるらしい。 ここ10年、「好きな曲」はあったとしても、アーティスト単位で「ハマれる」音楽に出会えてなかった。唯一自信を持って好きと言えるアーティストは赤い公園をおいて他にいなかった。その絶対的な中心人物が亡くなった。 ぼくが好きになったものは、呪われたようにすぐに遠ざかってしまう。気がする。 好きになったラ

      • 図書館訪問録No.4 南相馬市立中央図書館 2020年3月8日

        何この図書館神2020年3月8日現在、福島県で一番好きな図書館かもしれない。 本棚の間にある「座り読み」スペース、テラス席、広い畳スペース、自習スペース、free wi-fi完備。 震災関連スペースを常設、心理的にアクセスしやすいオープンな郷土資料スペース。「使ってもらいたい」という意識がひしひしと伝わってくる。 他にも、車関連の資料の近くには車の模型やクラシックカーの写真が飾れれるなど、コーディネーターの「愛」を感じる。本や学ぶことが大好きな人たちが考えてこの図書館を作

        • 図書館訪問録No.3 福島県富岡町図書館 2020年3月7日

          打ちっぱなしのコンクリート×ガラスカーテン×木目調×LED間接照明。 ここ数年のトレンドというか、教科書どおりのモダン演出で迎えてくれた富岡町図書館。この図書館を含む複合文化施設「学びの森」は、電源立地地域の長期発展対策交付金で建設されているようだ。この交付金は、原子力発電関連施設の立地市町村に交付されるもの。いわば原発立地に対する心なしの対価だ。 綺麗な外観/内観からは想像もつかないが、オープンはH16年とのこと。築15年とは思えない美しさを保っている。 東日本大震災の

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        • 図書館紀行
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          10本

        記事

          「先延ばし」との同棲生活

          目覚ましがわりのテレビ体操が始まる。起きてから筋トレするからいいや。 昨日の夜に干さなかった洗濯物、もう一回軽く洗うか。 腹が減った。 面倒で冷凍しなかった飯を食うには、きちんと加熱する必要があるだろう。こんなときはチャーハンがいい。 フライパンを熱する。 洗いが雑なフライパンだ。油はあまり必要ない。 昨日使った食器はまだテーブルの上だ。仕方ないからフライパンから直食いだな。 当然、箸は新しい割り箸を。 燃えるゴミの日なので、生ゴミを処分する。レシートはまだ家

          「先延ばし」との同棲生活

          劇場版SHIROBAKOは「稚魚の放流」だ

          6年待った、待ちわびた続編。劇場版SHIROBAKO。 TVアニメSHIROBAKOは、アニメを作る人たちの輝かしい「働く」の世界を描いてくれた作品。 ぼくが社会人になる直前、社会人になることを怖れていたぼくを勇気づけた作品。 放送終了後も仕事に悩んだとき、疲れたとき、いつも勇気づけてくれた昨品。 地元の映画館での公開一発目から身を清めてから観てきた。 ☆TV版SHIROBAKOって「完全養殖」だと思った。 劇場版の話は勿体ぶって後にとっておくとして、劇場版を観て

          劇場版SHIROBAKOは「稚魚の放流」だ

          「明日書く」は禁じ手だろうか

          眠さを「睡魔」と表現した最初の人、一緒に酒飲もう。

          「明日書く」は禁じ手だろうか

          図書館紀行No.2 只見振興センター(福島県只見町)2020年2月23日

          公民館の一室として12帖ほどの図書室がある。 最低限の地域資料と福島・会津・只見線に関する著作、あとは読書をしないぼくでも知っている人気作家・著者の著作がほとんどを占めている。 それでも「SNSで話題の本」として『岩田さん』をピックアップするなど、情報更新を怠るような姿勢は全くない。だれがプロデュースしているんだろう。 特に読みたい本はなかったが、桧枝岐にしてもここ只見にしても、過酷な豪雪地帯、そして過疎化が深刻な地域に住んでいる住民のモチベーション、ここに住む理由が知りた

          図書館紀行No.2 只見振興センター(福島県只見町)2020年2月23日

          図書館紀行No.1福島県下郷町 グリーンプラザ・田沼文蔵記念館

          利用者は自分ともう一名。 図書館にあるべき本来の静かさ。だれも呼吸をしていないかのような静穏。 郷土資料や貴重な資料が南側の窓のすぐ横に置いてあるのが非常に気になるが、まあいいだろう。 いつもならその郷土資料を手に取るが、新刊スペースに目が行った。 『風間教場』長岡弘樹、小学館。 木村拓哉主演でドラマ化されたことで知った小説。「最近の小説」を読んでなかったので、補給。 主人公は警察学校教官、風間。記憶力、観察力、推理力に長ける。半年間の訓練で、学生を落伍者ゼロで一人前の警官

          図書館紀行No.1福島県下郷町 グリーンプラザ・田沼文蔵記念館

          ぼくのnoteの番組表

          通退勤などの移動と深夜ラジオの相性がいい。 脳に適度な情報を入れつつ、退屈もしない。 音楽だとちょっと飽きてくる。そこで、ラジオ。 音声だけのメディアで番組を任されるパーソナリティたち。さすがにトークが鮮やかで勉強になる。 なかでも、オールナイトニッポンは今更ながらとんでもない名番組だと思う。 芸人、俳優、ミュージシャン果てはテレビのプロデューサー…毎日、芸能の各ジャンルで活躍するスターたちが個性を発揮して至高のエンタメを提供してくれる。 26歳にしてようやく

          ぼくのnoteの番組表

          スナフキンだけが「自由」じゃねぇ

          「自由に働きたい」といっても別に真昼間っからニューバランス履いてスタバノでマックいじるマドワーカーじゃなくたっていいじゃないの。 別に、「人からブラックといわれる広告代理店でバリバリ働くのも個人の自由だ」なんて陳腐なことを言うつもりはない。 ただ、普通の8時間拘束のサラリーマンでも自由に働けないわけではないじゃん、という話。 ぼくは働くことが嫌いな社会人5年目のサラリーマン。事務職。 学生時代から並々ならぬ就職したくない願望を持ち、大した学識も研究テーマも無いまま、漠

          スナフキンだけが「自由」じゃねぇ

          逆になんでnote続けてんのさ

          n番煎じ上等。逆に続いていない理由を考えよう。 進路を決めるときの考え方で「逆にやりたくない仕事を挙げよう」というのがある。それの延長線上。 ○コスト要因 ・時間が無い 社会人になって5年。仕事って何年経っても忙しい。毎年効率化しているはずなのに。 家庭がある人はそこから家事だ育児だで忙しいだろう。時間ってどうやって産み出すんだ? ・面倒くさい 理由は様々。 先述の「時間が無い」も理由の一つになるだろう。 少ない時間を、他のもっと「楽しい」ことに費やしている

          逆になんでnote続けてんのさ

          容赦ない夜ふかし 『第1夜 世界の収束』

          第1夜 世界の収束 エコバックを忘れたことなど、宇宙の森羅万象を前にしては何の意味も持たない。 ローストビーフ、チーズタッカルビ、エビチリ、寿司。まだ食べられないのに右へ左へ食指を伸ばす。どこまで歩いても、このスーパーには終わりがない。きっと光をも圧倒するファンタジックな速度で、無限に膨張しているにちがいない。 しかしこの無限に広がる店内でも、重力が酒類の一角にだけ収束していた。世界の酒を2~3坪に集める力学的エネルギーは想像を絶するものがある。観測できるブラックホールに圧

          容赦ない夜ふかし 『第1夜 世界の収束』

          容赦ない夜ふかし『第0夜 黄昏れてない黄昏』

          第0夜 黄昏れてない黄昏 最後にたたいたエンターキーの軽快な音を号砲に、僕の終わらない夜が始まった。 僕はもう、目の死んだ30人弱がひしめくこの部屋を抜け出して無限の可能性に手を伸ばす権利を手にしている。数分前までは偉そうに見えた肩幅課長さえ、今では小動物同然である。有象無象の同僚たちには目もくれず、さっそうと職場をあとにしてやろう。 今日は"特別な日"ではない、暦の上では。だからこそ、僕は今日を特別に仕立て上げてやるのだ。どっかの三位一体様や偉い人の誕生日じゃなくたって特

          容赦ない夜ふかし『第0夜 黄昏れてない黄昏』

          ぼくが見たサンクトペテルブルク 第9章 『グッバイ、レニングラード』

          魔法が解けるまでわずか2時間。 ホテルにMs.Alexが迎えに来るのが正午。最後の目的地であり、この旅で必ず行こうと思っていた「レニングラード包囲と防衛博物館」の開館が10時。 しかし博物館入口と書かれたドアはまだ9時30分なのに開け放されていて、中を覗くと剥き出しのコンクリートと諸々の建材が無造作に置かれていた。工事中。次。 「レニングラード包囲戦」については少しだけ。 サンクトペテルブルクは何度も名前が変わる都市で、第2次大戦時には「レニングラード」という名を冠していた

          ぼくが見たサンクトペテルブルク 第9章 『グッバイ、レニングラード』

          ぼくが見たサンクトペテルブルク 第8章 凍った川を渡る

          サンクトペテルブルクの歴史はパブロフスク要塞から始まった。今日はここから。 サンクトペテルブルクはピョートル1世がヨーロッパ進出を夢見て泥沼の上に作った人工都市。その開拓は困難を極めた。 繰り返す洪水とフィンランド軍の脅威、数多の犠牲の上にこの街は成立している。 また、パブロフスク"要塞"とはいうものの、監獄としての顔を持った時代があり、ドストエフスキーも、思想犯としてここに囚われた。観光客としては一粒で二度美味しい。 岩だらけの平原と大河を眺めて、現在のような街並みを作

          ぼくが見たサンクトペテルブルク 第8章 凍った川を渡る