ろーにゃくなんにょ。
中学一年生の国語の先生はタモリに似ていた。
もうあだ名しか覚えていない。
そのタモリ先生は授業の前に10分間、必ず読みのテストをした。
先生曰く、
〈難しい漢字は書けるよりもまず読めること〉
が大事だという。
読みを鍛えるためとはいえ、先生も大変だった。
授業の最後に、次回の問題はここから出ますよプリントが配られる。
100問。手書きだ。
パソコンなんて、ない時代。
プリントは藁半紙。
ザ・昭和。
そこには〈魑魅魍魎〉〈明鏡止水〉〈乾坤一擲〉
等がぎゅうぎゅうに並んでいる。
ほぼ四字熟語だった。
その中でも好きな読みは〈老若男女〉。
にゃくとか、にょの響きに猫っぽさを感じた。
このテスト、実は大好きだった。
気になる四字熟語は辞書で調べたり、あえて難しい文字を書いてみたり。
漢字がたった4文字なのに意味が深すぎる。
書いた漢字はもはや絵にしか見えない。
テスト勉強というより、ゲーム感覚だった。
1番語彙力があったのはこの頃だったかもしれない。