【読書】今週の本 その2 7月18日
那珂です。
7月3連休の最終日です。
前回から追加3冊+α を読了。今回は、「自分で買いたい」順で、
ご紹介します。
1 『韓国の「街の本屋」の生存探求」 ハン・ミファ著
司書資格を取った時、本気で本屋になりたいと思っていました。
「本当に本が好きなら、本屋にならないほうが良いよ。」と、オットくんに言われたのですが、この本にも、同じことが書いてありました。
「独立系書店」が全盛を極めた韓国で、その後の本屋事情が、良いところも悪いところも隠さずに書かれています。
「これからの本屋ってどうなるのかな?」
「商売として、成り立つのだろうか?」
こんな疑問にも、ちゃんと実情を踏まえて答えてくれているのです。
日本と韓国の本屋事情は、とても似通っているところが多いらしく、実際に足を運んで行ってみたい本屋さんがたくさんありました。
「本屋は、副業としてやってみる。」とか、
「これからは、コミュニケーションのための読書」 など、
「刺さるフレーズ」も満載です。
これからも、私と本との関係は続いていくと思うので、この1冊は手元において、これからのやりたいことを考えた時ごとに、再読したいと思わせてくれた本です。
(早く 副業を認めてくれ・・・・・)
2 『帰りたい』 カミーラ・シャムジー 著 白水社
原題は、『HOME FIRE』です。
2017年 ブッカー賞最終候補、2018年の女性小説賞受賞作です。また、BBCが選ぶ『わたしたちの世界を作った小説ベスト 100』の一つに選ばれています。
カミーラ・シャムジーという人は、日本ではあまり知られていない作家かと思いますが、『帰りたい』が、初邦訳本なのだそうです。
読み始めはとっつきにくさがありましたが、どんどん引き込まれ、衝撃的なラストまで一気に読み進んでいきました。
イギリスに住むムスリムの姉妹。パキスタン国籍とイギリス、2つの国籍を持つこの姉妹は、父親がある事情で帰らぬ人となり、母親も亡くなってしまう。妹には、双子の弟がいるが、彼もまた父と同じ道を歩もうとする。
この姉妹が出会うのが、ロンドン出身の青年。彼もまたパキスタン系の英国人なのだが、その父親は国会議員であった。
姉のイスマと知り合った青年は、妹アニーカに興味を持ち、互いに惹かれ合うようになる。アニーカは、「とある目的」のために彼と交際するようになるが・・・
国籍、ムスリム、男女格差、テロ組織、移民、紛争問題など、多岐にわたるテーマを、ギリシャ悲劇『アンティゴネー』をベースにして描ききっています。私達が実際に画面で見た、ISの映像や、ムスリムの人たちへの偏見、差別など、どちらかというと「思い出したくない現実」を突きつけてくる小説です。
ある一つの「恋愛」を軸に描かれてはいるのですが、その背後にある「巨大な社会、世界情勢」に翻弄される人間の「在り方」について、深く考えさせられる大作です。
イギリスのロンドンに行った時に、多種多様な人たちが入り交じる社会というのを目の当たりにしました。日本にいると意識しなかったことに、カルチャーショックを覚えたことを思い出しました。
防弾チョッキ、ライフル銃を持った警備員が、ヒースロー空港にたくさんいたこと、地下鉄の駅で、日常的にテロを警戒していたこと。高級ハイヤーで金融街に出勤するビジネスマン、かたや道端で物乞いをする人々の多さ。
あれから、30年ほどが経過していますが、世界情勢はさらに不透明になって、先が見えない状況に拍車がかかっています。この時代を鋭く切り取る視点というのは、既存の文学の枠に囚われない、新しい作家によってもたらされるものだと実感させられた1冊でした。
3 『アスファール』 イレーヌ・ネミロフスキー著
キーウ生まれの作家、イレーヌ・ネミロフスキーの作品。こちらも女性作家。
執筆から80年を経て出版された長編の一つです。
イレーヌ自身は、ユダヤ人であり、ロシア革命の際にパリに亡命しますが、1942年アウシュヴィッツ収容所で命を落とします。
2004年、遺品の中から発見された数々の小説が順次発表、刊行されている作家です。
フランスに住む医師、ダリオ・アスファール。ユダヤ人医師である彼は、妻と子を養うためのお金を工面するため、あちこちから借金を重ねます。
ペテン師まがいの方法で、精神科医として成り上がっていきますが、愛する妻を病で失い、大切な息子とも決別してしまうのです。
有名になり、金持ちになったとしても、人間としての本質は変わらない。
彼をそのように変化させてしまった要因は何なのか。
差別、分断、阻害、対立、紛争、暴力、嘘・・・
安住の地を持てなかったユダヤ人が、今自分が住む「国」で生き残るためにしてきたこと。人間としての尊厳や、善悪の判断をもかなぐり捨ててまで、ダリオが欲したものは、何だったのか。
この作品と対になる『アダ』という長編があります。
アスファールのラストは、「モヤッとした」終わり方に私は感じました。このモヤッとした感じが『アダ』を読むことで解決されるのであれば、ぜひ読んでみたいと思います。
第2次世界対戦が勃発し、「セントルイス号の航海」事件の3年間、彼女は「ユダヤ人」を真っ向から取り上げた長編3作を世に問いました。
ウクライナ、キーウ出身の勇気ある女性作家が、遺した小説たち。
命をかけて彼女が私達にのこしたメッセージを、私達が受け継ぐのは今なのではないでしょうか。
4 『怪異と遊ぶ』 怪異怪談研究会 監修
研究論文のアンソロジーです。 「こっくりさん」のところは、懐かしさもあり、ちょっと面白かった。
5 『さよならの言い方なんて知らない。 6』 河野 裕 著
うっかりシリーズ物の6巻を借りてきてしまいました。
途中からでもわかるかな、と思いましたが、読み始めてから 激しく後悔。
最初から読むべきでした。
なので、今回は「積ん読」で終了。
今回は、ボリュームのある2冊を含めて、ご紹介しました。
カミーラ・シャムジーは、これからノーベル文学賞とか、ブッカー賞候補になっていく作家さんなんだろうなという気がしています。
これからの作品に期待です。
明日から、お仕事がんばりましょう。
それでは、また!