観てきた!「所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い」at 東京国立近代美術館工芸館
わたしに工芸の魅力を存分に教えてくれた場所・工芸館。
ついに、石川県金沢市への移転前、最後の展覧会を迎えました。
しかし、最後の最後で国からの要請により、1週間の会期を残して急遽クローズに・・・・悲しい、悲しすぎます・・・やむを得ないこととはいえ、職員の方々にとっても非常に残念だったでしょう・・・
そんな状況になってしまう直前、幸運にも展示を楽しめたことは、本当に本当に、良い思い出となりました。
心からの感謝をこめて、ここにまとめます。
会場:東京国立近代美術館工芸館(東京・竹橋)
会期:2019年12月20日~2020年3月8日 ※終了
時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館:月曜
料金:一般250円、大学生130円
高校生以下および18歳未満、65歳以上など無料
◎観に行こうと思ったきっかけ
他の美術館等でフライヤーを見かけて、だったかと思います。
そもそも工芸館は、最寄り駅から結構離れているし、展覧会もどうしたって絵画など比べたら目立たず、正直ちょっと地味な存在だったかもしれません…でも、私は本当に好きな施設でした。
◎どんな展覧会?
工芸館の収蔵作品で構成されるこの展覧会は、こんなテーマで企画されていました。
工芸を「パッション」の語とならべて考えることは、もしかしたらふだんはあまりないかもしれません。なぜなら工芸に注がれるパッションは姿かたちや質感にすっかり溶け込んで、むしろ背景の諸事情をいちいち分析する間もなく味わえるよう整えられてきたからです。しかし何を選び、未来へとつなげるのかを考える今、工芸に託されてきた知恵と愛とを見過ごしてしまったらもったいない!(中略)日本の近代は工芸をとおして何を感じ、想いを託してきたでしょうか。作家の言葉や活動・出来事から20を抽出し、それぞれの局面に浮かび上がるパッションをご紹介します。
(工芸館 公式サイトより)
入口でチケットを購入すると、一人一冊ずつ、フルカラー・40ページ以上ものしっかりとしたパンフレットがいただけました。展示されている作品がピックアップされ、解説文とともに楽しめます。
工芸館で行われたいくつかの展示に行ってましたが、これは初めてのことでした。この特別感に、あぁこれで最後なんだなぁと ちょっとしんみり…
展示室に入ると、過去、様々なテーマで展示されてきた名品の数々が、本当に惜しげもなくずらっと並んでいて、それはそれは豪華で圧巻でした。
また工芸館では、収蔵作品を中心にほとんど撮影できました。美しい作品の数々を撮影して楽しめることは、非常にありがたかったです。
例えばこのずらりと並んだ鳥の皆さん。
鈴木長吉さん作『十二の鷹』という作品です。数年がかりで修復され、2018年3~5月に開催された、「工芸館開館40周年記念 明治の名工」展でお披露目された際、とっても話題になった逸品なのです。
今にも動いたり、飛び立っていきそうな姿。全て金属製です・・・!!!
見れば見るほど、美しいし、迫力というか、存在感というか、オーラがものすごい。わたしは2018年の時も鑑賞しましたが、今回、再び間近にできて感激でした。しかもほぼ貸切状態で・・・鳥好きとしてはいつまででも眺めてられます・・・
ちなみにこちらが2018年の時のお写真。カッコいい写真とともに解説パネルがどどんと出てました。無意識に同じ鳥さんたちの場所を撮ってますね。好きなものって変わりませんね。
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会場にはそのほかにも、同じ静岡出身で大好きな作家・芹沢銈介(せりざわけいすけ)さんの作品や、
大好きな螺鈿や漆、蒔絵の作品も。うっとり・・・
黒田辰秋(1904-1982)
螺鈿白蝶縞中次:らでんしろちょうしまなかつぎ/1974 漆、螺鈿
黒田辰秋(1904-1982)
赤漆流陵文飾箱:あかうるしりゅうようもんかざりばこ/1957 漆
田口善国(1923-1998)
日蝕蒔絵飾箱:にっしょくまきえかざりばこ/1964 漆、蒔絵
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◎タッチ&トークに初参加&感動の再会!!!
この日、訪れた時間帯にちょうど「タッチ&トーク」のイベントが予定されていたため、せっかくだからと思い参加してみました。
が!2グループに分かれたものの、参加者は20名前後と多めに。平日午後でしたが、やはり閉館が近づいていたからでしょうか。案内してくださった職員の方も驚いてらっしゃいました。
所要時間1時間のうち、前半は館内の展示解説。いくつかの作品をピックアップして参加者が口々に感想を述べたり、職員の方からの解説を聴いたり、わいわいと。
後半は別室に通されて、なんと!いくつかの収蔵作品を素手で触れる体験ができたんです!!!
この時、個人的にものすごく感激する出来事がありました。
以前、工芸館で展示されているのを見て、一瞬でファンになってしまった作家・新里明士(にいざとあきお )さんの、まさにその時に展示されていた作品に、実際に触れることができたのです・・・!本当に感激でした・・・
こちら、「光器(こうき)」というタイトル。
白磁の生地に手作業!で穴をあけ、透明の釉薬をかけて穴をふさいで焼成する、という手法で作られています。
作品にそっと触れてみると、思っていた以上に薄くて軽くて。なんだか胸がいっぱいになり、忘れられない瞬間となりました。
職員の方からは「夏にこの器に氷水を入れてお茶席で使ったんですよ」と。あーお家で水を入れて使ったら、きっともっと輝くように美しいんだろうなぁ・・・
「新里さんの作品、今ならまだ買えるお値段ですよ、ぜひ。人間国宝になったら買えないですからね」
・・・で、ですよねー・・・。いつかぜひ!!!
ちなみに新里さんの作品が展示されていたのは、昨年2月まで行われていた展覧会「棗にまつわるエトセトラ」でのこと。
この展示も本当に良かったです。すっかり棗好きになりました。あぁこの蓋物も素敵ですよね・・・
新里明士(1977-)
光蓋物:ひかりふたもの/2018 磁器
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◎心に響いた展覧会・インゲヤード・ローマン展
棗展も素敵でしたが、今も心に残っている展覧会をもう一つ。
2018年9~12月に開催されていた「インゲヤード・ローマン展」です。
北欧を代表する世界的デザイナーであり、陶芸家としても知られる、インゲヤード・ローマンさん(1943年、ストックホルム生まれ)の、日本初の大規模な展覧会でした。本当に素敵でしたー・・・・
館内はほぼ撮影NGだったので、あまり画像はないのですが、会場で流れていたインタビュー映像が非常に印象的でした。インゲヤードさんが紡ぐ言葉が、しんしんと心にしみました。今も展覧会カタログを大切に眺めています・・・。
◎ハッシュタグ投稿でプレゼント!
この展覧会では、パンフレットのプレゼントの他にもう一つプレゼントが。SNSへのハッシュタグ投稿で、オリジナルのミニトートがもらえました。
この取り組みも、わたしが知る限りでは、工芸館で初・・・?
こちら、美術鑑賞に本当にちょうどいいサイズでした。バッグをロッカーに預けて、お財布やスマホ、鉛筆、コンデジなど、手持ちしたいものを入れて持ち歩くのにぴったり。これからも愛用します!これ持って都内の美術館をうろうろしている人を見かけたら、それはわたしです。
◎工芸館 わたしの好きな風景
展示される収蔵品の数々だけでなく、建物自体も素敵だった工芸館。
ここは「旧近衛師団司令部庁舎」という建築物で、重要文化財(建造物)に指定されています。
赤レンガの建物は、1910(明治43)年3月、陸軍技師・田村鎮の設計により、近衛師団司令部庁舎として建てられました。明治洋風煉瓦造の建物が急速に消滅していくなかで、官庁建築の旧規をよく残しており、日本人技術者が設計した現存する数少ない遺構として重要な文化財です。
(公式サイトより)
わたしは特に、2階ロビーの風景が好きでした。アーチになった梁や、窓、照明、絨毯、そしてベンチ。(実はベンチも作品。もちろん座れます)
1階の出入口を出たところからの風景も好きでした。これは初夏の風景。
縁の下?の、こんな細部まで凝ったデザインだったんですよ。
工芸館は金沢市に移転してしまいますが、この建物はこの先もここに残るので、また公開してもらえる時を楽しみに待ちたいと思います。