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エフェクチュエーション体験

私が「エフェクチュエーション考」という名のイベントを知ったのは、がくちょのFB投稿を見たからでした。少し前に「エフェクチュエーション」という言葉を知り、書籍を読み、今回は著者の吉田先生も登壇されると知って出かけて行きました。コロナ禍以降はリアルイベントからすっかり遠ざかっており、参加には少しのためらいがありましたが、参加して大正解でした。


エフェクチュエーションとは

知っている人は知っていると思いますが、一応エフェクチュエーションについて簡単にまとめておきます。

エフェクチュエーションとは、熟達した起業家に対する意思決定実験から発見された、高い不確実性に対して予測ではなくコントロールによって対処する思考様式のことです。この思考様式を見い出したのはアメリカの教授であり、5つの原則からなります。

手中の鳥の原則: 既存の「手段主導」で何か新しいものをつくる
許容可能な損失の原則: 損失が許容可能かに基づいてコミットする
レモネードの原則: 偶然をテコとして活用する
クレイジーキルトの原則: コミットする意思をもつすべての関与者と交渉し、パートナーシップを築く
飛行機のパイロットの原則: コントロール可能な活動に集中して望ましい結果を帰結させる

会ってみなければわからない

初めて訪れる会場だったため、開始時刻よりも少し早めに会場につきました。着席してほどなくすると、登壇者の仲山進也さん(以下がくちょ)と吉田満梨先生が会場に入ってこられて、登壇準備でしょうかPCに向かっての作業を始められました。

今回のイベントの登壇者の一人である神戸大学大学院准教授の吉田満梨先生は、日本におけるエフェクチュエーションの入門書を書かれた著者のお一人です。

経営学研究科の先生でもあり、理知的なイメージのプロフィール写真からしても、ご挨拶するのは敷居が高いなあと感じていました。もうこれは完全に私の勝手な思い込みだったのですが。。。

ほどなくすると、がくちょが登壇者席から離れたので、前方には吉田先生が一人で座っている状況になりました。イベント後はきっと吉田先生のところにご挨拶の列ができるだろうなあ、だとしたら今のうちに挨拶しておいた方がいいかなと思ったり。まだ話も聞いていないうちに挨拶するのは失礼かなと思ったり。

そんな迷いを振り切って席を立ち、吉田先生に
「ご挨拶させていただいてもよろしいでしょうか」
と恐る恐るに声をかけました。

次の瞬間、吉田先生は満面の笑みで名刺を差し出してくださいました。私のあの思い込みは一体なんだったんだと思うくらいに、とても気さくに話に応じてくださいました。その人懐こくてステキな笑顔を見て、私は一瞬にして吉田先生のファンになりました。

そして、私が吉田先生と会話を交わしている間に、驚くべきことが起こったのです!それが何かはもう少し先の話にしましょう。

イベントが始まる前に吉田先生のファンになった私は、イベント中にさらにそのファン度を増すことになります。その理由は、吉田先生の話が素晴らしかったからではありません。いや、もちろん話は素晴らしかったのです。それよりももっと私が惹かれたことがありました。

それは、がくちょが話している間に、何度も吉田先生が本当に楽しそうに笑っていたからです。いっそ、その笑顔をプロフィール写真にしてほしいと何度思ったことか。まあ、それは余計なお世話というものではありますが笑。

やっぱり人というのは、実際に会ってみなければわからないものなのです。

話を聞いてみなければわからない

会場となったオカムラのコミュニティマネージャーの方からのプロローグからイベントは始まりました。

この日のイベントは申込定員が満席になる盛況ぶりでしたが、がくちょがFacebookでイベント告知をした途端に申込数が一気に増えたそうです。がくちょの集客力すごい!

それを聞いたがくちょが、
「多分、満梨さんに会いたい人が多かったんだと思います」
と返しました。

その通り!私もまさにその一人です(にっこり)。

プロローグの後は、この日のファシリテーターの沼本さんにバトンが渡りました。仕事ができる人をすごい、あの人だからできるで終わらせず、何がすごいかの解像度を上げるためのイベント企画との紹介がありました。

「エフェクチュエーション」ってなんなのさ

次は、吉田先生からのエフェクチュエーションの解説です。わかりやすいスライドで説明されるのですが、若干、早口に感じました。2倍速で聞いたら、わからないだろうなあくらいのイメージです。

でも、それは当然です。何しろエフェクチュエーションの書籍1冊分のエッセンスをわずか30分ほどで説明するというのですから。

吉田先生の話で印象に残ったのは、エフェクチュエーションの思考様式は学習可能ということです。学習可能、つまり、誰でもやれば身につけられるということです。

こう聞くと、俄然、学ぼうという気になりますよね。だって、「これは特殊な才能をもった人の思考様式です」だなんて言われたら、それを知ったところで自分にはどうしようもないと思ってしまうじゃないですか。

ただし、吉田先生もはじめは「学習可能というのはホントかな?」と思っていたそうです。こういうことを隠さず話してくれるところがまたステキですよねえ。

吉田先生はエフェクチュエーションを実践的に学ぶ講座を担当しており、その受講者たちを見て、ほんとに学習可能だと思うようになったそうです。こういう話は説得力がありますね。

「手中の鳥の原則」は、自分がすでに手にしている手段を活用して具体的に行動することを意味します。活用する3つの手段のうちの一つが、頼ることのできる人とのつながりです。

頼ることのできる人というと関係性の強い人を思い浮かべますが、
「例えば、名刺交換をして、Messengerでコンタクトをとれるような人も含みます」
と吉田先生は説明されました。

へええ、そんな弱いつながりでも手中の鳥の手段として考えるんだなと、この時はさほど気にせずやり過ごしました。が、後になって、これを聞いたことの重要性を思い出すことになります。

吉田先生の話で重要だと思ったのは、エフェクチュエーションとコーゼーション(エフェクチュエーションと対比される概念)を二項対立でとらえず、状況に応じた使い分けが必要だということです。これからは何でもエフェクチュエーションだと全フリするのではなく、エフェクチュエーションとう武器を新たに手に入れて、自分の可能性を拡張することが大事ということです。

吉田先生のお話は、ご著書である「エフェクチュエーション」の内容ではありました。けれども、それほど多くはなくても著書には書かれていない内容もお話されました。ですから、話を聞いてみなければわからないことは確かにあるのです。

あなたは何タイプ?「組織のネコ」診断!

続いてのがくちょの話は、組織のイヌとネコの話を20分で。がくちょは「組織のネコという働き方」という本を2021年に出版しています。

いつもの自己紹介スライドを使っての自己紹介から始まります。がくちょの驚くべきキャリアの自己紹介スライドですが、時間の制約もあってか、語られた内容はごくあっさりしていました。三木谷さんというトラとネコが20人いる楽天に入社したことだけが語られました。いや、あっさりし過ぎでしょ、それは〜。

その後は、例の仲山考材スライド集の関連スライドを提示しながら、組織の働き方について軽妙な語り口での解説が続きます。

がくちょの話はたった20分でしたが、真顔で発するがくちょの言葉に何度も会場に笑いがおこりました。がくちょが狙って笑いをとりにいっているのか、がくちょとしてはごく自然に話していることに笑いがおこっているのか、どっちなんだろうと思いながら聞きました。

いずれにしても、笑いがおこるポイントで吉田先生のステキな笑い顔を見ることができたので、がくちょが登壇してくれて良かったわーと思いました笑。

短い時間にがくちょは何度も「モヤる」というキーワードを発しました。がくちょの行動の転機となるのは、きっとモヤっとした時なんでしょうね。正確に何回言ったかをカウントし忘れたのが心残りなので、次の機会には数えてみようと思います。

あー、がくちょが話した内容をまだほとんど書いていませんでしたね。まとめると、社命を優先して行動するイヌの思考様式はコーゼーションで、社命に関わらず自分の意思で動くネコの思考様式はエフェクチュエーションということです。

がくちょは、仲山考材スライド集のスライドを時々Facebookに投稿しています。ですから、この日見たスライドは見覚えのあるものも多々ありました。それでも、がくちょの話でこんなに会場に笑いがおこることやがくちょのキーワードが「モヤる」であることは、話を聞いてみなければわからないのです。

クロストークセッション

がくちょの話の後は、再びファシリテーターの沼本さんにバトンがわたり、3人でのクロストークの時間になりました。

ここで沼本さんの自己紹介がありました。沼本さんは近畿経済産業局で、「愛される会社の価値転換モデル」事業に関わられています。そう紹介しながらスクリーンに映し出された価値転換モデルの概念図。その概念図は、全体を見ながらではとても編集できそうにないほどに、細かくびっしり要素が書き込まれたスライドでした。

思わず、心の中でつぶやいてしまいました。
「ああ、いかにもお役所スライドだ〜」
おっといけない、心のつぶやきをこんなところで吐露してしまいました。

スライドは(ワタクシ調べでは)イケているとは言えませんでしたが、ザ・コーゼーション組織での沼本さんのエフェクチュエーション的活動には感銘を受けました。

クロストークでの沼本さんのナイスなファシリにより、吉田先生から、とある薬剤師さんのエフェクチュエーション事例を聞くことができました。おかげで、エフェクチュエーションへの理解が深まりました。

沼本さんのエフェクチュエーション事例、吉田先生の講座の受講生のエフェクチュエーション事例などは、実際に話を聞いてみなければわからないことでした。

とまあ、2時間ではおよそ足りないテーマのイベントでしたが、予定されていた15分のネットワーキング時間を割愛して、なんとか終了時刻に終了しました。

その場に行ってみなければわからない

イベント開始前に驚くべきことが起こったとの前フリを書いたのを覚えているでしょうか?

大変お待たせしました!それが何だったかをお話します。

私が吉田先生と会話しているところをH先生が通り過ぎようとされました。吉田先生は、H先生とお知り合いだったようで、H先生に声をかけました。私はH先生のことを存じ上げませんでした。したがってH先生とは初対面でした。

私は吉田先生ともその時が初対面でした。私は著書を読んで吉田先生の名前は知っていましたが、吉田先生からしたら私が何者かは全く知らない状況です。それなのにですよ、吉田先生はニコニコしながら、私とH先生にこう言ったんです!
「お二人をおつなぎしますね」

えええええっ!そんなことってありますか〜?

私は状況がよく飲み込めないままに、吉田先生に促されて、H先生と名刺交換をさせていただくことになりました。

その後、吉田先生とH先生が親しくお話を始められたので、
「ご講演前のご挨拶で失礼しました。お話、楽しみにしています」
と言って、H先生とは名刺交換をしただけで会話も交わさずに席にもどりました。

その頃、がくちょはというと、あちこちで知り合いを見つけては挨拶をして、会場中をウロウロしておりました。

イベントが始まる前の吉田先生とがくちょの行動は、私にはとても不思議でした。が、イベントが終わる頃には、お二人の行動様式こそがエフェクチュエーションなのねとすんなり腹落ちしました。

吉田先生は、名刺交換をして、Messengerでコンタクトをとれるような人も頼ることのできる人とのつながりになると言いました。偶然をテコにする「レモネードの原則」の思考様式を持っていれば、偶然に出会ったH先生と私をつなぐという行為は何ら不思議ではないのです。

エフェクチュエーションというレンズを通して見れば、がくちょが会場中をウロウロしていたのも、潜んでいるかもしれない偶然に出会う確率をあげるための行動だと理解できます。

エフェクチュエーションは、本や話からの知識としてよりも体験する方がぐ~んと理解が進みます。その場に行ってみないとわからないことがあるのです。

きっと「レモネードの原則」を自分でも実践してみた方がさらに理解が進むに違いありません。そう自分に無理やり言い聞かせて、勇気を出して、会話も交わさず名刺交換しただけのH先生にお友達リクエストを送りました。

果たしてその結果やいかに。。。

このイベントに来るH先生は偶然の出会いの大切さを熟知されているからでしょうか、快く(かどうかは知らんけど)お友達になっていただけました!

こうしてワタクシは手中の鳥の資源の拡張に成功しましたとさ(にっこり~)。

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