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パン作り研究家の僕が小麦アレルギーでパンを食べられなくなった話

皆さんこんにちは、パン作り研究家のナオキパンです。

実は以前、僕は小麦アレルギー(疑惑)でパンが食べられなくなった時期があります。

経験則と検査結果から当時は本当に小麦アレルギーだと思っていたのですが、現在は普通に食べることが出来ています。

なぜ、僕は小麦アレルギーだと思い込んだのか?
そしてなぜ、その思い込みから脱却することが出来たのか?

今回は当時のことについて書き記していきます。
グルテン関連のみならず食分野全体を蝕む情報化社会の闇についても皆さんに知って頂きたいです。

グルテン関連情報、僕にとっては「呪い」だった

呪いの種は数年前から既に植え付けられていた!?

僕が小麦アレルギー疑惑でパンが食べられなくなったのは、ネット上での活動を始めるちょっと前のことです。

当時は自律神経失調症がぶり返し続けていた時期で、未来に希望が持てず不安と絶望に苛まれていました。

何より、自律神経の症状が出る原因を調べても、「主にストレス」と曖昧な情報が多く、とにかく不快な状況から脱したい僕は自分の体調不良の原因を突き止めて根本から改善したくて仕方ありませんでした。

ストレスの軽減法や解消法など、体調管理に関する知識は自分なりにはかなり勉強して実践しているつもりでした。
「ここまでやってもダメなんだから、原因はストレスとは別にあるんだ」
と思いたかったのです。

「この体調不良の原因がただのストレスだとしたら、他の人よりストレスに弱い人間ということになってしまう。」
そんな風には認めたく無かったし、それこそバンドマン時代はかなりハードな生活を送りながら体を壊さずやれていたので、納得いかなかったのです。

そこで脳裏をよぎったのは、「『いつものパン』があなたを殺す」という一冊の本のタイトルでした。

この本の存在自体はもっと前から書店で見かけていたので知ってはいました。
当時はまだ体調不良とは無縁だったので気にも留めていなかったのですが、それがここにきて繋がってしまったのです。

あらゆる状況が不運にも重なることで、それは発動する

この本を読み始めて
「自分には関係ないね」
と読むのを辞められるか、あるいは
「関係あるかも」
と思い読み進めてしまうか、それを別つ要因は何だと思いますか?

僕が思うに、
「パンを頻繁に食べていて、かつ慢性的な体調不良を抱えており、できれば治したいと思っているかどうか」
です。

慢性的かつ原因が曖昧で改善方法がわからない不調を抱えている人にとって、
「原因不明の不良、その原因…実はコレです!」
みたいな謳い文句はかなり刺さるのです。

ずっと治らないよりは、少しでも治る可能性に賭けたいからです。

僕の場合、パンをたくさん食べてお腹を壊した経験もあったような気がしたし、なにより以前の職場ではアルカリイオン水で仕込んだ食パンを食べて高確率でお腹を壊していたのは確実に実感していたので、この本を読み進めるには十分な土壌が育っていました。

まるで、数年前に撒かれた呪いの種が、期が熟したことによって発芽して根を張ったかのような、今思い返すとそんな感じです。

※アルカリイオン水の危険性については思い込みではなく事実あるのですが、それについてはいずれまた話したいけど…とある業界から圧力かかりそうだから厳しいかも(笑)

人は「原因不明」に対する不安を無くしたい生き物

抑うつ症状というもの自体は、健全な人でも人生の中で必ず経験するものだと思います。
悲しいことや辛いことは人生につきものですから。

ですが、それが酷く慢性化してくると
「自分はいったいどうなってしまったのか?何か重大な病気もあるかもしれない」
など様々な不安にさいなまれるものです。

インフルエンザのように原因がわかっていて治し方もわかる病気であれば、そんなに不安に思うことはないでしょう。

ですが、原因が曖昧で症状が慢性化していると、
「この地獄が一生続くなんて嫌だ!どうにかして治したい」
と思う人は多いでしょう。

地獄から抜けだせる唯一の方法が「死」だと思ってしまった人は、自ら命を絶ってしまいます。

人間は元々、「不安」や「恐怖」といった感情に耐えられるのは一時的であり、行動でそれらの感情を解消できる時代を何十万年も生きてきました。

ライオンを見つけたら恐怖を感じて、「逃げる」という行動で解消する。
近場の食料が尽きてくると不安を感じて、「餌場開拓」という行動で解消する。

原始時代はネガティブ感情は行動によって即座に解消できたし、生命の危機に気付くために必要不可欠な感情だったのです。

あらゆる不安や恐怖がエンドレスに続く構造が現れたのは、比較的最近のことなのです。

故に人間の進化が追いつかず、ネガティブ感情が継続することに耐えられる構造にはなっていないのです。

そうした理由もあってか、不安を解消できるかもしれない情報には、深刻な不安を抱える人ほど飛びつきやすいのです。

不必要なまでに不安を煽る「安心安全マーケティング」

グルテン関連の警鐘本には、小麦が原因による不調を
・セリアック病
・非セリアック グルテン過敏症
などと分けて解説されています。

セリアック病は遺伝的に小麦のタンパク質に過剰な免疫反応を示してしまう病気で、罹患している人が一定数いることは事実です。

グルテン過敏症は、セリアック病という診断は受けていないが、グルテン含有食品による不調を自覚している人を指して言われています。

これらについて取り上げている情報には、その症状として腹痛や下痢以外にも実に多くの症状を挙げています。
なので、何かしら原因不明の不調を抱える人なら、そのうちのどれかには当てはまる確率が非常に高いのです。

「もしかして、セリアック病なのか?」
そう心配に思って病院を受診するケースもあるでしょう。
しかし、特に日本ではセリアック病に関する研究があまり進んでおらず、セリアック病の確定検査を行える場所もほとんど見つかりません。

唯一、国の支援で研究検査をしていた病院に問い合わせをしてみたところ、数ヶ月前に終了したとの回答がありました。
それ以外で検査をしている病院の情報は掴めませんでした。

そのような状況ですから、かかりつけの病院に行ってもわからず終いとなるケースも多いでしょう。

あるいは最初から病院で検査をすること自体を諦めている人もいるかもしれません。

自分なりの小麦抜き生活を始めて、なんとなくそれ以来不調が改善したような気がして
「自分はグルテン過敏症だったんだ」
と考え公言するようになる、日本ではそんなケースも少なく無いように思えます。

ですが、これには大きな問題が隠れています。プラシーボ効果である可能性です。

「小麦抜き生活をすることで、あらゆる不調が改善される」
という事前情報を信じて実践することで、その行為自体は化学的になんの影響も与えていないのに、実際に効果が現れる現象です。

逆に、「これは体に悪い食品だ」という事前情報を信じることで、実際には悪くない食品でも体調不良を生じる現象もあります。

思い込みの力は実に強大で、この現象は様々な実験で実証されています。

かくいう僕も、自己流で小麦抜き生活をして、そして小麦を解禁したタイミングでちょうどお腹の不調が発生したことで、
「やっぱり小麦が合わないんじゃないか?」
という思い込みを強める結果となりました。

これはまさしくプラシーボ効果であった可能性が高いです。

あるいは、プラシーボ効果ではないけれど、小麦の有無以前の問題だった可能性も高いです。

今だから客観的に考えられるのですが、当時は非常にストレスフルな職場で働いている時期でした。
既に身も心もボロボロになっていたので、そんな状況ではいつお腹を壊してもおかしくありません。
それがたまたま小麦を解禁したタイミングで不調が現れてしまった、そんな考え方もできるのです。

もし、ストレスフリーな生活をしていて、かつ絶対にお腹を壊すはずもない徹底された食事内容の中で行った検証なら、
「これは確かに小麦が原因っぽいね」
と言えるかもしれません。
でも、そこまで厳格な検証を個人で行うのは難しい。

恐らく、「自分には小麦は合わない」と公言している人の多くはこの死角を見落としているのではないでしょうか?

もちろん、中には本当に小麦が原因で体調不良に陥っている人もいることは事実です。
有名なケースでいうとテニスのジョコビッチ選手がそうです。

ですが、あたかも全ての人間にとって小麦が悪だと主張するかのような謳い文句の情報は、時として以前の僕のように"症状を生み出してしまう"危険性もあるということを知っておくべきです。

遅延型アレルギー検査で反応は出ていたけれど…

グルテン関連の話題でたびたび取り上げられる遅延型アレルギー検査。

僕もグルテン不耐性を疑ってから検査しました。

結果は、グルテンや酵母菌で反応が出ていました。
けれども、卵の方が強く反応が出ていました。

その他にもいろいろな品目で反応が出ておりましたが、目立つのはその3種といった感じです。

この結果を見て
「やっぱり小麦がダメなんだ」
と確信してしまったわけですが、よくよく考えてみると卵も反応が出てるのに卵で不調を自覚した経験は無いのです。

この検査、反応が出ているからと言って必ずしもアレルギーであるという証明にはならないものらしいです。
そもそも民間企業が行なっている検査であり、医学会はこの検査について否定的な見方を示しています。

「この検査はアレルギーかどうかを測るものではなく、腸漏れ(リーキーガット)の度合いを測るものだ」
という主張や、
「そもそもリーキーガットというもの自体、医学的根拠は無い」
といった主張など、180度異なる様々な情報が溢れています。

結局、信ぴょう性が高いのか低いのか、それを言うことすら出来ないのが現状なのです。

ただし、自らの体でもって実験した僕から言えることは、遅延型アレルギー検査で反応が出ていた食品を食べたからと言って、それが必ずしも自律神経症状を悪化させたり引き金となるようなことは無いということ。

ただし、小麦は糖質ですから、糖尿病予備軍の人がパンを食べることで血糖値スパイクを起こして倦怠感や眠気といった自律神経症状につながることはあるでしょう。
食べ方や食べるパンによっても変わってきます。

僕自身、血糖値スパイクが結構出てしまうので、パンをいくら食べても大丈夫とは言えないのですが、かといってグルテンのアレルギーかと言われるとそれはまた違います。

グルテンとは関係なく、糖質によるものだからです。
だから、たとえグルテンフリー食品でも高糖質高GI値のスイーツを食べたなら、体は鉛のように重くなってしまうでしょう。

不安を煽る情報=お金を巻き上げるトラップ

「○○は健康に悪い!」
といった意外性から不安を煽るような謳い文句の情報があったら、その情報だけを鵜呑みにせず、一旦は
「そういう見方もあるんだ〜、他はどうかな?」
と客観的な姿勢をとることをオススメします。

そもそもなぜ不安を煽るようなタイトルをつけるのかというと、その方が人の目を惹き、お金を巻き上げやすいからです。

○○に入る食品の名前が身近であり意外なものであるほど、その効果は絶大です。
「え、そうなの!?もしかしたら私もその悪影響を受けてるのかも…この前のニキビとか、この前の頭痛とか…」
といった感じに、何にでも繋げて考えるようになってしまいます。

僕が思うに、もし本当に特定の食品で何か不調が出るとしたら、言われなくても自分で気付けるものなのではないでしょうか?

僕がカフェインで体調を悪くしてしまうことに気付いたのも、事前にカフェイン過敏症という言葉を知っていたからではありません。

「カフェインで毎回不調が出てる気がするなぁ」とまず自覚してから、検索して後から言葉を知ったという流れです。

つまり、言われる前から既に気付けていたのです。

もちろん全てのケースに当てはまるとは言えませんが、いずれにせよ外部情報に惑わされずに己の体の感覚を敏感に感じ取ることが大事だと思います。

「小麦は体に悪いので米粉パンの研究をしろ」と僕に命令してくる人へ

たまにいるんですよ、僕の7年分の知識を無料で受け取っておきながら、そういう上から目線で命令してくる人が。

ここまでで述べた通り、僕は
「小麦は体に悪い」
という考えの道もしっかり通った上で、現在
「自分にとってはそうでもない、小麦なんかよりもっとヤバいものが世の中にはたくさんある」
という考えの道に辿り着いているのです。

もし、命令した人が本当にセリアック病や小麦アレルギーなのだとしたら、小麦の存在を否定したくなる気持ちに無理はありませんから、その生き方は否定しません。

ですが、他人に強要するものではありません。

「私の体に悪いものはあなたも食べるな、作るな」
と強要することが許されるとしたら、僕は皆さんに対して
「豆乳は気持ち悪くなるから飲むな!」
「カフェインで自律神経が狂うからコーヒー飲むな!抹茶飲むな!エナジードリンクは国内から追放しろ!」
「アルコールは俺の体に合わないんだからお前らも一滴も飲むな!」
と言っても良いことになってしまいますよね?

でも、これってかなりおかしなことだというのは誰でもわかるはずです。
「小麦を食べるな、作るな、米粉パンを研究しろ」
と僕に命令するのは、やってる事のレベルで言ったら同じ事なんですよ。

もちろん、心配して善意で言ってくれているのであればそのお心は大変ありがたいので否定はしません。

ですが、本やメディアを鵜呑みにしてゼロヒャク思考で思考停止するのではなく、もう少し頑張って思考を進めてみて下さい。
歩みを止めないでください。
その道は僕が歩んできた道ですから、暗く険しい道であることは承知しています。
ハッキリ言って自問自答の連続で、苦しみを伴うものでもありました。
でも、その先に辿り着いたのは今では天国です。断言します。

お先にこちらで待ってますよ。

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