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ウォール街のランダムウォーカーで学ぶ投資の王道

 本稿は、投資のバイブルと名高い『ウォール街のランダムウォーカー』を紹介するものである。本書は、様々な投資手法の良し悪しを丁寧に検証しており、投資の王道を学ぶことができる。それ故、知識不足からくる投資詐欺に引っかかるリスクを減らすことができるだろう。まさに、これから投資を始める初心者にこそ読んで欲しい投資指南書である。しかし、本書はおよそ500頁近くある大作なので、初心者が読破するにはハードルが高い。そこで、本稿で、この投資のバイブルのエッセンスを解説することで、初心者に投資の道標を示したい。

【書籍情報】
・著者:バートン・マルキール
プリンストン大学教授
1932年生まれ。1964年プリンストン大学経済学博士(PhD)。同大学経済学部長(1974-75、77-81)、大統領経済諮問委員会委員(75-77)、エール大学ビジネススクール学部長(81-88)、アメリカン証券取引所理事などを歴任。世界的な投信会社バンガード・グループの社外取締役としても活躍。現在、プリンストン大学教授。

・本書の評価
全世界で読まれている「投資のバイブル」!1973年の初版以来、全米累計150万部を超え、投資の名著として絶賛されるベスト&ロングセラー(出典:Amazon)

【要約】
 著者は、市場は非常に効率的であり、金融のプロといえど、市場の動き(市場平均)に勝ち続けることはできないという。それ故、プロに高い報酬を支払う運用や、短期売買を繰り返すことを否定し、「インデックスファンド」(ダウ平均や日経平均株価などの市場平均に連動するファンド)へ長期投資することを勧める。
 この結論に至るまでに、テクニカル分析やファンダメンタル分析など、世に出回っている様々な投資手法の有効性を検証している。

【内容】
❶学者(効率的市場理論)VS金融機関(テクニカル分析、ファンダメンタル分析)
①効率的市場理論:株価は、市場に流れる様々な情報を素早く織り込む。あまりにも早いので、先を読むことは困難である。予測が困難なので、傍から見ると、株価はランダムに動く(ランダムウォーク)ように見える。
②テクニカル分析
・チャート(株価の値動き)を分析し、将来の株価を予想する手法(過 去に〇〇があったときは、株価が上昇したので、〇〇は上昇トレンドの合図である等)。
・テクニカル分析は、どの手法も「バイ・アンド・ホールド」(株を購入したら、放っておく)戦略に負ける。
・物事の発生確率は、独立している。前回と似たパターンが起きたからといって、また同じことが起きるとは限らない。
・上昇トレンドを見つけたら、皆、その株を買いだし、株価が吊り上がる。つまり、皆がチャートから同じ合図を読み取ったら、同じ行動をとるので、他人を出し抜くことができない。
・テクニカル分析は、金融機関には好まれる。なぜなら、顧客に頻繁に売買させることができ、その都度、手数料収入が入るからである。しかし、顧客は無駄な手数料を払わされるので、損をする。
③ファンダメンタル分析
・株の「本質的な価値」を見出し、「割安」な銘柄や今後の「成長」が期待できる掘出しものに投資する手法。
・証券アナリストの使命は、将来の利益を予想する事だが、的中率は悪い。
・市場は素早く情報を織り込むので、市場を出し抜き、掘り出しものを見つけることは非常に困難。たまに、まぐれで出し抜くことはできるが継続することは不可能。
・コイン・トスの大会の例:コインの表裏を当てるゲームの世界大会が開かれ、1万人が参加した。1回戦で5千人が残り、2回戦で2,500人が残り、3回戦で1,250人が残り、4回戦で625人残る。こうして12回戦まで勝ち残った3人は、「奇跡の3名」と呼ばれ、『コイン・トス必勝法』なる本を出版するやもしれない。投資の 世界も同じである。
❷投資のポイント
①市場平均に勝ち続けることは困難→市場全体の動きに従うインデックスに投資する。
②頻繁に売買すると、手数料や税金が都度かかる→売買頻度は少なくする。
③リスクを取らなければ、リターンは得られない。しかし、低減できるリスクは以下の方法で低減させるべき。
 ㋐分散投資→投資対象を分散し、リスクを軽減する。
 ㋑長期保有→長く持つほどリスクは少なくなり、リターンを享受できる。→時間がある(=若い)人ほどリスク資産に長期投資すべき。
 ㋒積立→一定金額を複数回に分けて投資することで、購入単価を少なく(均す)ことができる。相場変動が激しいときに有効だが、上昇基調にある銘柄には不向き(後に買うほど購入額が上がるので、どんどん購入単価が上がってしまう。この場合、最初に一括購入が◎)。

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