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【感想文】武田一義さん著 「ペリリュー 楽園のゲルニカ」

漫画の感想文を書こうかと。

あんまり漫画は読みませんが、

この漫画は本当に日本人全員に読む義務をつけてほしいくらい。

私がこの漫画と出会ったのは3年くらい前。

元々大東亜戦争(太平洋戦争、第二次世界大戦)あたりに興味があり

日本各地の戦地巡りをするのが趣味でした。

そんな私がとある事情からパラオへ旅行に行くことになりました。

私はそれまでそのような国があることも知らず、「どこそれ?」と思っていましたが

旅行のツアー内容の中に

「歴史探索ツアー」なるものがありまして。

内容をみて、パラオから少し離れたペリリュー島は大東亜戦争の時に激戦地であったことを知りました。

(アンガウル島もですが、ここでは略します)

俄然旅行への意欲が高まる私(笑)

なにせ全然知らないことでしたので、事前知識も

・硫黄島の戦いの前哨戦のような戦い方をした(壕を掘って潜伏、持久戦に持ち込む)

・万単位の日本軍が上陸していたのに、生還者は34人だけだった

くらいしか知らず、いざ旅行へ。

パラオ、ペリリュー島は信じられないくらい海がきれいなところでした。

色とりどりの魚が幸せそうに泳いでいて、ウミガメものんびり泳いでいました。

緑が生い茂っていて、たくさんの虫が飛んでいる。

ここが激戦地…?と思うくらい。

ただ、今でも当時のまま戦車や大砲、滑走路が残っていて

辛い思い出を抱えているとと訴えかけてくるようでした。

ガイドさんが淡々と明るく説明するので変にしんみりすることはなかったのですが

「ここはよほどのことがあったはず・・・一体どんな状況だったのだろう」と思い

ペリリュー島の戦いを知ることができる本などを読みたいと思い調べていた時に出会ったのが、この漫画でした。

ほかにも「ペリリュー玉砕(中川大佐の一生を軸にペリリューの戦いを描いた小説)」を読んだり

YouTubeで生存者である土田さんの動画を見たりして知識を得ました。

その中でフィクションを交え、絵をかわいくして描かれているのがこの漫画です。

武田先生の漫画は初めて読みました。

この題材を、この画風で書くのは斬新だと感じたことを覚えています。

現在10巻まで出ていて、私は今10巻を読み終えてこのブログを書いています。

11巻で終わるとのこと。

主人公がペリリューへ派遣され、だんだんと悪化する戦況に仲間とともに耐えながら

大好きな絵を描く日々を描いた漫画です。

かなり残酷な描写もしっかり描かれていて、私はそういう表現こそ大事だと戦争を題材にしたものには思います。

日本人が潜む洞窟に火炎放射器を使用したり、地獄のような惨状もしっかり描かれています。

きれいに描いてもしょうがない。

現実はきっともっともっと残酷で苦しく、目をそむけたくなるようなものだったであろう。

今の教育は、も少し考え直したほうがいいところがあると思う。

トラウマになるくらいでちょうどいいと思うのに。

それが現実であったし、繰り返さないためには知らなければならないこともあると。

武田先生の絵はかわいらしいので、そのへんの表現が絶妙でした。

目を覆いたくなるけど、なんとかみられるところに留まっていてすごいバランス感覚だと思いました。

10巻は、悲しさと安堵で涙と放心状態。

彼らは一体何のために終戦後も戦っていたのか。

どうして仲間同士で殺しあわなければならなかったのか。どうしてどうして何のために。

思わず独り言をつぶやいていました。

戦争を終わりと認めてしまえば、それまでの自分や死んでいった仲間を否定したような気持になる。

そんな中で「全員が生き抜く」ことを選んだ人の強さ。

現代社会、働く身としては少し共感できる部分もあり奮い起こされます。

私も、できる限りどこまでもそういう強さを持てる自分でいたい。

正義とか、くさいことをいうつもりはないけど自分を認められる自分でいたい。

あの時ああいうことを選択できてよかったと言える自分でいたい。

人生の脆さ、というか実は非常にあぶくのようなものなのではと思えて

頭を振りたくなりますが、

だからこそ周りがこうだから、と生きるのではなく自分がどうしたいかを考えて渡り歩いてみたいと改めて思いました。

たった75年ほど前の現実。

あの時代、生き抜く強さを持った人たちがいたから今がある。

それは日本が生き抜くために亡くなった人たちも同様。

2021年になった今、世はウイルスとの戦いに転じましたが今をどのように生きるか。

私たちにあの時代の人たちが訴えかけてくるような気持がします。

日本の空襲、原爆投下などは日本人もしっかり認識しているのですが

その前に本土を取られないために必死で南方の島々で戦った人たちがいるんです。

今もその土地に眠り、帰ってこられていない人たちがいるんです。

それはもしかしたら、自分の、友達の、会社の同僚の、伴侶の血縁者かもしれない。

もっとこういった事実をみんなが知ってほしい。

日本人にはもちろん課題も多いけれども、誇っていいところも多々あるはずと思います。

主人公の田丸君は、武田先生が土田さんの証言を基に書かれたそうなので

土田さんの話に重なります。

ペリリューから生還した方たちも、皆さま他界されました。

これからが、本当の戦後のような気がしています。

体験者がいなくなっても、後世に語り継いで繰り返さない。

それが今を生きる者の課題かととらえています。

ペリリュー玉砕の感想もいつか書き留めておきたいな。

また最近、太宰治を初めて読んで(遅い)、めちゃ面白かったのでそれも書きたい。


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