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劇場版 ごん GON, THE LITTLE FOXの感想(ネタバレあり)

京都文化博物館で行われた、京都国際子ども映画祭で鑑賞。

こちらの映画祭は前回から行かせてもらっているけど、小、中、高校生の子供スタッフの皆さんがほとんど運営を行っていて、来てるお客さんも温かい目で見守りながら楽しむ様な映画祭になっているのだけど、決してぬるい訳ではなくラインナップ作品はしっかりしているし、今作も子供スタッフから監督へのリモートインタビューの様子が流れていたけど質問内容が結構鋭かったりして、本当に映画祭として楽しい。

コロナ禍で開催が難しかったみたいだけど、今回も来られて良かった。

まず圧倒的なビジュアルイメージに目を引かれる。隅から隅まで手作りの世界の中でキャラクターが生き生きと動いているのを観るだけで幸せな気持ちになった。

物語の型として「良かれと思ってやったことがより悲劇に向かっていく話」というのがあると思うのだけど、今作はそれが教科書的に美しくて、分かっているからこそ観ている間ずっと泣きそうな感覚になった。

男らしさの呪い

今回のアレンジで特に素晴らしいのは兵十のキャラクターの肉付けの仕方だと思う。
原作ではほとんどごんだけの目線で物語が語られるので、兵十が何を考えているのか実際は分からないバランスなのだけど今回は今だからこそ共感できる世界にある「男らしさ」の呪いに苦しむ人物として描いている。

命を奪う事に対する躊躇いが捨てられない彼が、母親が言った「そのままで良い」という言葉を流して、母親の為にこそ「男らしく一人でも生きていかなければ」と決意し、自分の幼さを振り払う為にいつも通り栗や松茸を持ってきたごんを殺す流れが本当に観ていて苦しい。
良かれと思って言った事ややったことがすべてに裏目に出ていく悲しい物語。

死に際のうなずきが兵十とした唯一のコミュニケーションなのが切ないし、これがある事でごんが自分が兵十に撃たれた事を認識して死んでいくのが本当辛い話だ。(原作もそうなので改めて言う事でもないかもしれないけど)

実際にそこにある質感の素晴らしさ

木目がしっかり残った木彫りの人形も味わい深くてとても良い。
登場人物全員が仏様みたいでより寓話性というか神話性みたいなものを増している気がする。

こないだの「ミッシングリンク」とか下手すると普通にCGアニメーションにも見えそうなクオリティのストップモーションアニメも凄いとは思うけど、こちらはストップモーションアニメだからこその不自由さとか箱庭感がそのまま物語の魅力とより直結しているのが素晴らしいと思う。
大体の人間は「ごんぎつね」がどういう物語か分かって観る訳なので(今回の映画祭の子どもスタッフの方もこないだ教科書で読んだって言ってたし)、登場人物が皆操られている人形である事によって彼らの宿命や不自由さみたいなものに、より胸が締め付けられる様な感覚になる。
箱庭の様な世界観の狭さも、村にある男らしさの呪いや命の営みのサイクルから逃げ場がない感じがして切ない。

そしてごんの毛の表現、水の流れ、風の感覚、そして何といっても彼岸花が咲き散っていく美しさ、等の動きのつけ方を観ているだけで幸せな感覚になってくる。

キャラクターの愛らしさ

何といってもキャラクターのビジュアルの愛らしさ。
特にごんがとてもかわいい。普段は完全に狐の姿だけど子供っぽい無邪気さを見せる所だけ人獣型になるのがごんに対してより感情移入してしまう。そしてごんの声が完全に幼い子供なのがまた悲劇性を増している。

後、音楽の感じも昔話のアニメ的な素朴さがあって味わい深くて良かったし、登場人物の服装とか含めて暗めの色の中で鮮やかに咲く彼岸花の色合いのバランス感覚とか、どこを取っても素晴らしい作品だと思った。

そしてもちろんごんぎつねという作品を知らない小さい子供が観て感動出来る原作の素晴らしさを伝えようとしている作り手の愛情にも感動してしまった。

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