【映画】エゴイスト ※ネタバレあり

昨年2月公開の映画「エゴイスト」を観ました。ラブピースクラブでの連載していたライター高山真さん原作のゲイカップルと、その母との関係を描いたストーリー。

まず序盤、主人公浩輔が、実家に帰郷した際に過去に自分を虐めた同級生とすれ違った際の本音に共感。
ブランド物のスーツを着て実家に帰るわけですが、普通の作業着を着た同級生は、自分が虐めた相手とすれ違っても、気付かない(笑)。

ここで浩輔のナレーションが入る。

「服は鎧だ…」

帰郷して、かつて自分を見下した同級生と会っても、ハイブランドの服を着ていれば、萎縮しない、怯えない、自分を卑下する必要もない。

その姿を見てつい、高卒で実家から離れて、自分の好きな進路に進んでいたら、こういう道もあったのかなあ、と想像。いや、学歴ないから、そんな高収入な仕事にはつけなかっただろうけどさ。

でも自分を卑下したり、マウントとったり、偏見で接してきた人たちには、才能やステータスを磨いて、見せつけてやるのは、最大の防御で、最大の復讐で、そしてエンパワーメントなのだ。

セクシャルマイノリティの知人が、ワイシャツのボタンを第一ボタンまでしっかり留めて、些細なことでも人に悪い印象を与えないように気をつけこれている心境も「服は鎧」という価値観に近いのかもひれない。徹底して批判されるような振る舞いをしないように、隙を与えないように、気を張って生きているように見えたから。
 
宮沢氷魚演じる主人公の恋人龍太は、病の母親を支える為にパーソナルトレーナーの仕事に加え売春もしている。高校中退なので、売春の仕事でなければ、母親を食わせていけないと言う。

龍太と浩輔のお互いを思う気持ちがピュア過ぎして、あまりリアリティがないようにも感じられた。そして売春をやめて、主人公に生活費のサポートを受けながら、昼職で働き出す姿も健気過ぎると思った。

生活費をサポートしてもらっていたら、それが当たり前になってしまわないのかな、と感じたりしましたが、恋人も恋人の母親も一切そんなことはなく…。
脚本が狗飼恭子さんだと知って納得。全体的に柔和な雰囲気なのは、犬飼さんの感性による所が大きいのかもしれない。

結果、龍太は働き過ぎて、過労で急逝してしまうのですが、その後も主人公は、恋人の母親をサポートし、病が進行しても看病し続ける。

「そんなに純粋な愛情とや善意なんて、本当にあるの?」と疑問に持つ自分もいたけれど、これ、自伝的小説なんだよなあ。

家族関係が複雑だった私は、なかなか他人の善意や良心を信じられない部分が多々あるのですが、それでも、ただ他人の幸せを思える時も、愛情や信頼を感じられる関係性もゼロではないのかもしれない、と感じ、心が温かくなりました。

そして原作も読んでみたいなあ。






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