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骨太な社会派学園ドラマ 1月スタートドラマ「御上先生」の期待度
今期の日曜劇場は、学園ドラマだ。
「御上先生」も学園ドラマにありがちな″教師と生徒の対立構造″の設定である。
人一倍生徒と教育への想いが強い教師が、常識を覆す癖の強い独自のやり方で、学級の破壊と再生を図る。
対するは、教師の独特な手法に振り回されることに辟易とし、激しく反発するイマドキの生徒たち。
さらに今回、序盤は生徒とともに反発を示すが、同じ教育者として次第に感化されていく(と思われる)若手教師の役までしっかりと存在している。
絵に描いたような学園ドラマの構図だ。
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ところが、これまでにない圧倒的な違いが2つある。
まずは、御上先生が純正な教師ではなく「文科省から派遣された官僚」であること。この設定がどのようにドラマに作用するか、視聴前はあまり想像ができなかった。
しかし、第一話にして、私のハテナは解消された。
彼は、本国の教育の根本を司る文科省の官僚だからこそ見える、日本教育の欠点と闇を深く理解しているのだ。これは明らかに、これまでになかった新しい教師像だ。
これまでの学園ドラマでは、未来ある若者たちの意識を変えたい、学校の問題を解決したい、との意識を持った教師たちが活躍してきた。
しかし、教育現場や教育制度そのものを俯瞰し、根本から変えようとする教師はあまりいなかったのではないだろうか。
さらに御上先生は、冷徹で過剰なまでに自信家だ。生徒にも、あまり寄り添おうとしない。生徒と言い合うことになれば、容赦なく叩き潰す。
例えばごくせんのヤンクミ、GTOの鬼塚、3年A組の柊のような熱心な姿勢とは大違いである。それなのに、これまでの教師よりもずっと、教育そのものに正面から向き合おうとする人なのだと伝わる。
我々視聴者は生徒と同じ目線で、彼の発する言葉一つ一つに、いかに自分が浅かったかを思い知らされるのだ。
初回放送の時点で刺さりまくる脚本、演出、松坂桃李の演技力にはあっぱれである。
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もう1つのこれまでの学園ドラマとの違いは、舞台が偏差値の高い私立高校であること。
東大合格率全国一位を誇る高校の、頭も家柄も良い”エリート”生徒たちが改革対象となる。
定番の学園ドラマでは、生徒がやんちゃで幼稚な考えを持っている。
そんな彼らが、学校内外であらゆる問題を引き起こし、多くの教師がお手上げ状態となったところに、改革を起こす教師が登場する。この流れがお決まりだ。
しかし今回は、一見改革の必要がなさそうな優等生ばかり。
それでも御上先生に言わせれば、問題だらけ、穴だらけの教育現場の一つのようだ。
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左から富永蒼(蒔田彩珠)、神崎拓斗(奥平大兼)
優等生の生徒と、官僚先生が対立するとき、そこにありがちなスポ根的な展開はない。気に食わない教師をいかに陥れるかをずる賢く企てる生徒と、生徒の考えの先を読む教師との知能戦になる。
また、繰り広げられる知能戦の中で、回を追うごとにどんどんと明かされていくであろう、リアルな日本教育の課題と闇も大きな見所の一つとなりそうだ。
絵的な迫力には欠けるものの、それを補うだけの奇抜な設定と刺さる展開がある新たな学園ドラマ。
日本教育を大テーマとしているだけあり、世代によって様々な視点で楽しめそうだ。
1997年生まれ、丑年。
幼少期から、様々な本や映像作品に浸りながら生活する。
愛読歴は小学生の時に図書館で出会った『シートン動物記』から始まる。
映画・ドラマ愛は、いつ始まったかも定かでないほど、Babyの時から親しむ。
昔から、バラエティ番組からCMに至るまで、
"画面の中で動くもの"全般に異様な興味があった。
MBTIはENFP-T。不思議なまでに、何度やっても結果は同じである。
コミュニケーションが好きで、明朗快活な性格であるが、
文章を書こうとすると何故か、Tの部分が如何なく滲み出た、暗い調子になる。(明るい文章もお任せあれ!)
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