
映画『ナポレオン』2023/12/1公開
※以前Filmarksにて掲載したレビューを、やや修正して再掲する
★★★☆☆
迫力満点の戦闘シーン、美しく荘厳なフランスの建物や街並み、
そしてそれらに劣らない俳優たちの演技力…。
こういったところは、既に多くの方が書かれているため、
私は違った角度からの感想を述べてみる。
鑑賞から数日が経ち、感想を記そうと思っても、今日まで筆が進まなかった。
あの約3時間ほどの中に観た彼を、
彼の人生の全てだと思うことは決して無いものの、
それでも史実に基づいた脚本、構成となっているのならば、
私は彼に、同情の気持ちを抱かざるを得なかった。
まさか、偉大な人物として歴史上にも名を残したあの人に、
同情の気持ちを抱くとは思ってもみなかった。
故の、拒否反応のようなものが起ったのだろうと思う。
この映画のキャッチコピーには「英雄か、悪魔か」という言葉が
用いられていたが、それを受け、敢えてどちらかの答えを出すとすれば、
彼は悪魔だと思う。
しかしそれは、人の心を持たず、ただ自分の出世のためだけに野心を燃やし、
人の人生を顧みることなく、残忍な行為に及んだからではない。
彼は、極めて不器用で、生きるのが下手だったことが悪なのだ。
それを当時本人も、少なくとも晩年には自覚していたのではと、
ホアキン・フェニックスの演技から想像した。
彼はただ、自分が自分に与え、そして周りの人からも与えられた
プレッシャーによって、がむしゃらに人生を走ったのだろう。
そうしたことが結果的に、愛する人を上手く愛せず、欲しくも無いものに対して
いらないと言うことができない彼の人格と人生を形成したのだと。
言ってしまえば、彼の身に起きたことは全て悪だったのだ。
彼が真面目であったこと、一途に野心に燃えることのできる人間だったこと、
頭脳明晰であったこと、たった一人の愛する人を見つけてしまったこと、
愛する人と出世を天秤にかけてしまったこと…。
一つ一つは悪でもなんでもなく、全てが交わり、繋がることによって、
一つの大きな悪となったのである。
彼が最初に犯した過ちが、彼自身に次の過ちを犯させ、
また次へと繋がり…そしてやがて、彼の変えられない
悪魔のような人格そのものになっていったのであろう。
人は、個々の人格を形成する過程で、
同様のことを繰り返しているのではなかろうか。
誰しもが、誰かにとっての英雄で、悪魔だ。
1997年生まれ、丑年。
幼少期から、様々な本や映像作品に浸りながら生活する。
愛読歴は小学生の時に図書館で出会った『シートン動物記』から始まる。
映画・ドラマ愛は、いつ始まったかも定かでないほど、Babyの時から親しむ。
昔から、バラエティ番組からCMに至るまで、
"画面の中で動くもの"全般に異様な興味があった。
MBTIはENFP-T。不思議なまでに、何度やっても結果は同じである。
コミュニケーションが好きで、明朗快活な性格であるが、
文章を書こうとすると何故か、Tの部分が如何なく滲み出た、暗い調子になる。(明るい文章もお任せあれ!)
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