嗚呼、ピグマリオン ⇑くだらないエッセイ⇑
先日、とある研修で『リーダーが身に付けるべき褒め方スキル』について講師をしたときの話。
「褒める」ことによって、「あなたに期待していますよ」というメッセージを送り続けると、部下や後輩の業績が上がります。人は、他者から期待されることによって成長するのです…。
とまあ、こんな研修内容なのだが、私は「本当にそうなのか?」と思っていた。過去にも私と同じような疑問を抱いた野郎がいた。アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールだ。疑い深い彼は、実験で確かめてみることにした。
実験の概要はこうだ。
まず、子どもたちに嘘の学力テストを受けさせる。その後、テスト結果に関係なくランダムにAクラスとBクラスに分ける。Aクラスの担任教師には「このクラスの子どもたちは成績が伸びる優秀な子どもだ」と告げ、Bクラスの担任教師には「このクラスの子どもたちは成績の良くない子どもだ」と告げる。すると、Aクラスの担任は期待感を持って熱心に授業を進めた。一方、Bクラスの担任はそれほど熱意も無く淡々と授業を進めた。結果的にAクラスの子どもたちの成績が上がった。
この実験から導き出されたのが、人は他者から期待されると、その期待に沿った成果を出す傾向にある心理効果「ピグマリオン効果」だ。
残念ながら私の関心は理論の中身には無い。「ピグマリオン」という単語の方に関心がある。ピグマリオンっていう響き、強そうで凄そうだけど、同時になんか笑ってしまうのはなんでやねん。そもそも、なんでこれがピグマリオン効果と名付けられたのか?
そこで調べてみたら、ピグマリオンというのはギリシア神話に登場するキプロス島の王らしい。彼は彫刻家でもあった。
ピグマリオンは現実の女性に絶望し、自分の理想の女性の像を創ることにした。ピグマリオンは、自分で創ったその女性像のことが好きすぎて、ガラティアという名前まで付けて、毎日、「お前は何て美しいんだ」「お前は私の命そのものだ」「この世で一番素敵な女性は、ガラティア、お前だ」などと話しかける。ピグマリオンの愛が通じ、ガラティアは本物の人間になったのだという。
受講者のみなさんが真剣な面持ちで聴いてくれていた研修の途中で、そんな話をしていた私は、不覚にも
「ピグマリオンって、ただの気持ち悪い男ですね」
と心に有ることを言ってしまった。しかもヘラヘラ笑いながら。
「やばっ、言っちまった」
と思っておそるおそる受講者の方を見てみると、
「ほんとですねー」
と笑ってくれる人たちが大勢いてホッとした。という話。