3. 孤独な高齢者は、鎮痛薬などが多い?
コロナ禍をきっかけに、日本でも「孤独」の問題が深刻になっています。
孤独を感じると、身体のあちこちが痛くなったり、眠れなくなったりしませんか。
高齢者の孤独感と、クスリの服用について調べた米国の研究を紹介します(2021年7月26日公開)。
Use of High-risk Medications Among Lonely Older Adults
Results From a Nationally Representative Sample
調査の対象は、米国の65歳以上の高齢者からランダムに選んだ6017人。孤独と感じる程度を、3項目の質問でたずねました。あわせて、ふだん飲んでいる薬を調べました。
さて、その結果です。
孤独感が、「ない」「低い/中程度」「高い」と高くなるにつれて、つぎのクスリを飲んでいる人の割合が高くなりました。
・痛み止め(鎮痛剤)
・睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)
・安定剤
・抗うつ薬
たとえば、痛み止めを飲んでいる人の割合は、孤独感が「ない」グループが14%、「低い/中等度」が17%、「高い」が22%でした。また、安定剤を飲んでいる人の割合は、それぞれ9%、12%、20%でした。
なにが分かるでしょうか?
おなじ高齢者でも、孤独感が強い人ほど、痛みなどの身体の症状や、不安や不眠などのこころの症状が強く、こうした症状に対するクスリを飲んでいる傾向が強い。という可能性です。
研究の限界として、論文著者らはつぎの点を挙げています。
・孤独感とクスリの服用状況を同時に調べた。そのため、2つの解釈のどちらなのか、区別できない。
1)孤独感が強いことが「原因」で、心身の症状が強まり、クスリを飲む割合が高まるという「結果」が生じた。
2)クスリを飲むような心身の症状が強いことが「原因」で、人付き合いがむずかしくなり、孤独感が強いという「結果」が生じた。
研究としては1)と2)はうまく区別できません。けれども、対処法はいくつか考えられます。
1)運動など、クスリ以外の方法で対処し、痛みや不安などの症状を改善する。
2)クスリを飲むような症状があっても、孤独にならないよう、周囲が支援する。
クスリはもちろん大切です。が、「孤独」に対する処方箋を、いろいろ工夫する。そのことが、個人としても、社会としても、大切かと思います。
さいごまでご覧いただき、ありがとうございました!