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受益者負担とも言うけれど。。。
義務教育ではない大学や高等専門学校などの高等教育は、受益者負担の原則で、教育を受ける学生個人やその家族が費用負担をすべきだという意見がありますが、受益者は教育を受ける学生だけなのでしょうか?
高等教育の発展は、国の文化や、科学・技術、産業の発展に少なからずつながっていくものだと思います。そして国や国民の民主的レベルも初等・中等・高等教育へとつながっていく教育の充実と深く関係していると思います。
高等教育を受ける学生にその負担を大きく負わせることは、高等教育のすそ野を狭め、本来の受益者の範囲も狭めてしまうことになると思います。
高等教育を受けたものは国のために尽くせと強制されなくとも、高等教育のすそ野が広がり、そのレベルが上がれば、卒業した学生が社会に出て活躍することばかりではなく、教育・研究の成果が、産業や、芸術・文化、メディア、そして教育の現場などを通して広がっていき、やがて、私たちの社会の中に広く浸透していくでしょう。
すべての人が高等教育を受けないとしても、公費で充実させた高等教育の成果は必ず、国全体の教育レベルに反映されていくものだと思います。
そのような広い目で、ぜひ高等教育の学費は安くしてほしいと思いますし、そのよう将来の展望に立った教育や科学の政策を進めてほしいと思います。
そしてもうひとつ注意しなければならないと思う点は、高等教育機関における教育・研究の成果を、あまり近視眼的に測らないでほしいということです。すぐに役立つことだけが教育・研究の役割だとすると、そのすそ野はものすごく狭められてしまう可能性があります。
ノーベル賞を取るような世界的研究も、最初は地道な、そして使い道もわからぬ研究からスタートしたものも少なくないはずです。
残念ながら、現在、東京大学をはじめとして高等教育の学費の値上げがますます進められようとしていますが、選挙で選ばれる次の政権には、ぜひ、高等教育の価値をしっかり見据えて長期的な視点で政策を考えてほしいと思います。