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油層モデリング・スタディーのブレークスルー
扱うデータが多すぎても油層モデルの作成には苦労します。
油の生産を開始してから何年も経過し、生産井も何本も掘られている油田で、開発スキームを見直してもっと生産量を上げましょうとか、どうも油を取り残している場所がありそうなので、そのような油も生産して油の回収率を上げましょうという話になると、油田の再開発計画が出てきます。
今まで蓄積してきた沢山の生産ヒストリーデータや、井戸からとられた様々なデータを統合して、再開発計画作成に対応できる詳細な油層モデルを作ることになります。
データが沢山あればあるほどモデルが作りやすいかというとそうでもありません。データの信頼性も一様ではありませんし、取られたデータが油田・油層を代表しているとも限りません。データのQCをしっかりと行い、データにバイアスがかかっていないか、かかっているとしたらどんなバイアスか、などなど、様々な検討を行い、油田で起こっている現象を再現できるモデルを作る必要があります。
そしてそのデータに示される現象は、一見非常に複雑で、単純な流体挙動のコンセプトではとても説明できないようにも感じます。
数多くのデータや生産ヒストリーを無理なく矛盾なく説明できるモデル。これができれば美しいのですが、大抵すんなりとはできません。こういうことだろうか、ああいうことだろうかと頭を悩ませ、寝ても覚めてもそのことばかり考えてしまうようになります。
そしてそれはいつか夢にも出てくるようになります。夢の中でうまい解決策、すべてをうまく説明できるコンセプトを思いつき、爽快な気持ちで目が覚めて、改めてよく考えてみると、すでに以前試してボツになったアイディアだったりします。
そんな悶々とした日々を過ごす中で、あるとき何かのきっかけで、停滞していたアイディアがブレークスルーを起こす時があります。そして複雑と思われていたフィールドでの観察事象をうまく説明できるモデルは、意外にシンプルだったということはよくあることです。
とにかくあまり一人で抱え込んで煮詰まらないこと、いろいろな人にアイディアや煮詰まっているポイントを聞いてもらうこと。話してみるだけでも解決のヒントが見つかることがあります。
人間、追い込まれていない時にはサラッといいアイディアが生まれてくる場合もあります。追い込まれていない人に愚痴を聞いてもらうのは良い解決策かもしれません。これはあまり論理的ではありませんが、今までの経験則です。私も煮詰まっている人から相談されたら、軽い気持ちで話を聞いてあげるようにしています。
そういえば、油田の開発法で生産井のまわりに、水の圧入井を配置して、圧入した水で油層の圧力を維持したり、水で油を生産井に向けて押し出したりする方法を水攻法と呼んでいます。水がきれいにうまく油層の油を生産井に向けて押して行ってくれれば良いのですが、圧入水だけが油の隙間を通って生産井にいち早く到達してしまうことがあります。
これをウォーター・ブレークスルーと呼んで、我々石油開発を行う立場からすると、ちょっと困った事態です。同じブレークスルーでも、アイディアや技術のブレークスルーであってほしいものです。