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大きなサイクル小さなサイクル、大きな凹凸小さな凹凸

石油地質学では過去に起こった海水準変動を理解することが大変重要です。海水準の上昇期、下降期ではそれぞれ堆積物の特徴、分布域、連続性などに特徴があるため、石油を生成する有機物に富んだ根源岩や、石油を貯めることができる粗粒な貯留岩、水より軽い石油の上方への移動を阻害する緻密な帽岩などがある地域にどの程度発達するか予測するのに活用できます。

堆積物を観察すると周期性が見られることがあります。その多くは海水準の変動、つまり海水準の上昇と下降の繰り返しによるものと考えられています。海水準が上昇することを海進、下降することを海退と呼んでいます。

海水準の変動には全地球規模 (グローバル) での海水準変動と、地域の地殻変動などに伴うローカルな海水準変動があります。

私たちは堆積物のサイクルを詳細に解析することによって、また、グローバルな海水準変動指標や周辺地域などと対比することによって、対象地域にみられる堆積サイクルがグローバルなものかローカルなものか解釈しようとしています。

ところで、グローバルな海水準の上昇下降の変化を示す海水準変動曲線は様々な研究者によって解釈されています。

海水準の変動曲線を見てみると、大きなサイクルと小さなサイクルが重なっていることがわかります。例えば大きなサイクルは、油田の根源岩、貯留岩、帽岩に対応したサイクルだったりします。一方で小さいサイクルは貯留岩の中の孔隙率や浸透率の垂直方向の変化を表していることがあります。

つまり目的にそって、どのオーダーのサイクルにフォーカスするかが変わってきます。

ある油田のある油層の油層性状などを議論する場合は、ローカルな地殻変動を含めた小さなサイクルの海水準変動が鍵になることが多いようですが、探鉱など根源岩、貯留岩、帽岩などの存在や分布自体が問題になる場合、やや大きなサイクルに着目することになります。

話は変わりますが、3次元地震探査データを基に作成された油層トップの構造図 (グリッドデータ:例えば東西、南北それぞれ100m 間隔のポイントごとに深度情報を持つようなデータ) を使って油層トップの構造の曲率を計算して、曲率の大きいところと油層性状との関係を調べることがあります。

曲率の大きいところは地質の構造運動などによって断層や断裂が形成され、流体の浸透率が上がる可能性があるからです。

しかし、使用するグリッドデータの解像度によって (例えば 100m, 200m, 500m 間隔のグリッドデータ) を使って曲率を計算すると、違うオーダーの構造の曲率・特徴を見ることができます。

細かいグリッドデータを使えば、非常に細かい構造変化を見ることができる半面、大きな構造はキャプチャーできません。粗いグリッドデータを使うと、細かい構造の変化やノイズに邪魔されず、大きな構造の変化をとらえることができます。

断層や断裂の分布がどのようなオーダーの曲率の変化と関連があるかがわかれば、適切な曲率マップを用いて断層、断裂分布をモデル化できるかもしれません。適切なオーダーの曲率マップを作ることが重要です。

https://wiki.seg.org/wiki/Curvature

油層モデリングでは自分がどのようなオーダー、サイズの事象を対象にしているのか、あるいは対象にするべきか適切に判断する必要があります。知りたい地質現象のサイズ感、時代的オーダー感などの感覚が重要です。

データによっては解像度の限界もあります。それより細かい情報を得ようと思ってもノイズしか見ていないかもしれません。データの限界についても認識しておくことが必要です。

これは油層モデリングに限ったことではないと思いますが、物事を巨視的にみるべきか微視的にみるべきか、どのサイズで見るべきか、今、自分はどのサイズで見ているのか、ときどき考えてみる必要があるのだと感じます。

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