仕事ではカンに頼らないようにしたい
石油掘削現場は24時間動いています。重要なオペレーションが始まると、深夜だろうが早朝だろうが休日だろうが関係なく、判断を下さなければならない場面があります。
地質関係で言えば、掘削中のケーシングセットやコアリングなどのための堀止め深度の決定、データ取得、水平井のジオ・ステアリング (坑跡コントロール) などの時に、重要でしかも急な判断を求められる場面があります。
一人で何日もオペレーションのフォローアップが続き、眠れない日々が続くと、ふと判断力が鈍るときがあります。様々なデータを分析して判断することが難しくなる時があります。
正直時間に追われ、体力も思考力も限界が近づいてきたときに、今までの経験というかカンにたよって判断を下したこともあります。
データを分析してロジックを明確にして判断を下した場合でも、カンに頼って判断した場合でも、その判断が正しかった場合も判断が正しくなかった場合もありました。
未熟な私は、それならばいっそのことカンに頼っても良いのではないかと思ったこともありました。
しかし、今は極力カンには頼らないようにしようと思っています。できるだけデータを分析して判断を下したいと思っています。
データを分析してロジックを明確にして下した判断でもうまくいかないことはあります。しかし、判断が間違っていたことが判明した時点で、ロジックのどこに問題があったのか分析することができます。判断に使ったデータが間違っていたのか、足りなかったのか、見落としがあったのか、分析することができます。
ロジックに間違いがあったのなら、次には改善できるかもしれません。判断に使ったデータが間違っていたり不足していたりしたなら、追加データ取得計画を立てられるかもしれません。
だから、判断に至ったロジックや経緯はできるだけ記録しておくべきだと思っています。
今はオンラインでデータの共有がすぐできますし、ミーティングもすぐ開けます。一人だけで判断するのではなく、複数の目でチェックをして判断することができます。昔に比べてもチームワークがやりやすくなりました。
ただその場合でも、誰かが一貫してデータ管理を行うこと、データの一貫性をチェックしたりQCを行うこと、ディスカッションや判断の記録を残すことが重要です。時間に追われるオペレーションのときほど、これはとても重要です。
たとえ判断を誤ったとしてもただの失敗では終わらせない。次につなげられるようにするのです。
それでもどうしても既存のデータからだけでは判断が難しいとき、私はなにが最悪かを考えます。そしてその最悪のシナリオを避ける方向で判断します。
たとえば重要なコアリング (特別な機器を使って柱状の岩石サンプルを地下からとってくること) の開始深度を判断しなければならないときに、コアリング予定層準にあと何フィート掘れば達するのか判断がつかなくなった場合。
もちろん少し時間をかけて既存のデータを分析すれば正しい判断がつきそうであれば、迷わずいったん掘削を止めてもらい、時間をもらって判断します。この時間は無駄だとは判断されないでしょう。
そして、やはり現在使えるデータからでは判断が難しい場合。早めにコアリングを開始して余計なコアをとってしまうことと、もう少し粘ってコアリング開始予定層準を掘りぬいてしまい重要なコアデータを一部ミッシングしてしまうことを考えた場合、前者なら余計なコストが発生することと私が怒られるだけで済みますが、後者は二度とこのロケーションでのこの層準のコアデータを取ることができないということです。私なら手遅れにならないうちに即座に前者を選択するでしょう。
いずれにしろ、どんな判断がいつごろ求められるのか、常に先読みして準備しておくこと、判断基準 (ディシジョンツリー) を決めておくこと、そして迷わず連絡・報告ができる覚悟をつけておくことが掘削オペレーションなどの現場作業には求められます。
現場のオペレーションは忙しくて大変な半面、達成感のある仕事です。若い人にもどんどん経験してもらい、現場ではどのようにデータがとられているのか、どのような精度で井戸が仕上げられているのか、感覚をつかんでほしいと思います。
たとえ将来、油層スタディを中心に行うことになっても、オペレーションの経験は非常に役に立ちます。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?