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最高級の肩たたき券をつくる

わたしには、4歳下の弟がいる。

たまには姉っぽいことをしようと思い、久々に誕生日プレゼントを贈ることにした。

そこでまずはストレートに「欲しいもの」を本人にLINEで聞いてみる。

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そういえば、弟は昔から物欲がなかったことを思い出した。毎年贈ってればすぐ気づいたはずだけど、久々なもんですっかり忘れていた。

しかもそれは、嫁をも困らせるほどにパワーアップしていた。

しかし強引な姉、絶対NOと答える質問をぶつけて、弟とのブレストを試みる。

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さすがに30歳になる弟も、肩たたき券では困るに違いない。Amazonギフト券くらいは要求してくるはず。

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なんと「無期限10枚つづり」の肩たたき券を要求してきた。昔から性格も顔も似てないとは思っていたが、いよいよDNA鑑定が必要かもしれない。

欲しいものを聞かれたら即座に10個は思いつく煩悩に溢れた姉とは正反対。この子は神か仏か。どちらでもいいが、とにかく姉は完敗した。


そして誕生日当日。

我々唯一の共通点が「バイトするくらいスタバ好き」だったことを思い出し、スタバのチケットをプレゼントした。

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ここでまさかの、肩たたき券の催促。変な方向に欲が出てきたのか、それとも姉を試しているのか…ここで私のなかのスイッチが入った。


姉の本気を見せてやる。


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週末、都内某所。財布と勇気を携え、事前に予約した店に向かう。

店に入って店員のお兄さんに名前と要件を告げる。


「あの…肩たたき券つくりたいんですけど」


一瞬、時が止まる。


お店のお兄さんふたり、言葉がでない。


「えっと、ローマ字でよければ…」と、店内に併設された工房を案内してもらう。ここで革を購入すれば、刻印する機材を貸してもらえる。


すぐさま革を購入し、工房へ向かう。

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ふっふっふ

せっかくなので、誕生日も入れてやろう。

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間違えた…

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2枚作っといてよかったわ。

ついでにもう一丁。

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できた。

レザー製、一生使える「肩たたき券」と「一生のお願い券」。レザーショップで仕入れた革だから、正直かなりいいやつだ。

思いがけず最高級の肩たたき券ができてしまった。これで弟にギャフンと言わせてやる。

お兄さんに「できました!」と見せたら、失笑された。大丈夫、そういうの慣れてるから。

ちゃんとトコノールも買って裏面処理したし、なんなら繰り返し使えるようにキーホルダー仕様にした。

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フッフッフ…弟の驚いた顔が浮かぶぜ。たいそう驚くに違いない。なにせ、姉の渾身の一撃だもんな。感激のあまり泣いちゃったりして…妄想するだけでワクワクしちゃう。


数日後、弟から荷物受け取りの連絡が。

さあ、どう出る?! 我が弟よ!

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えーーー


想像の反対側、思ったよりプレーンな反応でした。

まぁ、喜んでもらえてよかったです。


完。

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