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30秒で読める小説 / 古今東西の「愛してる」

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古今東西の「愛してる」シリーズをまとめています。
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#夫婦

古今東西の「愛してる」:映画

古今東西の「愛してる」:映画

黄昏が空から落ちてくる。
まるで映画のワンシーンのようだ。

膝の上では、妻が寝息を立てている。
その体勢は、人間はここまで無防備になれるんだと教えてくれてるみたいだ。

「愛してる」

誰にも届かない声を出す。
棚の上の記念写真は、笑顔でこちらを見つめてる。

これは、映画のワンシーンすぎるな。

===後記===
「何でもないようなことが幸せだったと思う。」と誰かも歌っていたけれど、これはきっ

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古今東西の「愛してる」:対極

古今東西の「愛してる」:対極

「何だ起きてたの」

深夜2時、妻が帰ってきた。

「うん。」
「シャワー入ってくるね」

お湯が出る音を聞きながら、
気づいたときには妻の携帯を握りしめていた。

「今日はありがとう。」
「愛してる。」
「僕も。」

画面に映る知らない男とのやり取り。
こんなにも苦しくなる、愛の交換があるんだな。

===後記===

愛をささやきあうのは、とても美しいものだと思えたりするけど、真逆に位置する意

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古今東西の「愛してる」:瞳

古今東西の「愛してる」:瞳

「ブレーキランプを5回点滅させると、愛してるのサインなんだって!お母さん知ってた?」

後部座席で娘が妻と話している。

「もちろん。ね、お父さん?」

不敵な笑みがバックミラーに映る。

何しろ、私は点滅させて告白した張本人なのだから。

鏡越しの瞳は、下手な告白に笑っていたあの頃と同じだった。

===後記===

こんな雨の日には、いつもより車のブレーキランプが目立つ。あれも愛を伝える媒体の

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古今東西の「愛してる」:鬱憤

古今東西の「愛してる」:鬱憤

朝はいつも起きてこないし、帰りだって毎晩遅い。
たまの休みの日だって、PCとにらめっこで全然かまってくれないじゃん。

私のこと、見えてますかー?

お前なんかな、「愛してる」って言わせてやるからな。

今に見てろ。

===後記===

明らかに不穏な、恨みつらみが立ち込めるシチュエーションでも、セリフに「愛してる」を据えるだけで、なんだかホッとできる物語になる説。

☆このシリーズの詳細はこち

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古今東西の愛してる:馴れ初め

古今東西の愛してる:馴れ初め

日曜日の昼下がり。

「お母さん」

「なに?」

「なんでお父さんと結婚したの?」

「なによ突然」

「いや、なんか気になって」

「なんだったかしら。忘れちゃった」

「え、忘れちゃうの?」

「大事なのは今なのよ」

「またはぐらかす」

「でも愛してるから」

窓からは、柔らかい陽の光が差し込んでいる。

===後記===

大切なのは、過去ではなく、今であり、これからであり、未来。

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古今東西の「愛してる」:流れてくる前か後

古今東西の「愛してる」:流れてくる前か後

昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。

おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。

二人は日が暮れるまで働き、夜は仲良く鍋を囲みます。

「ばあさんや」
「なんですか」
「愛してる」
「もうおじいさんたら 知ってますよそんなこと」

めでたしめでたし。

===後記===

時代は違えど、愛は不変。

みんなが知っているあの物語、描かれていなかったとしても、きっ

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古今東西の「愛してる」:ひさしぶり

古今東西の「愛してる」:ひさしぶり

夫は昔、声を失った。

豪快という言葉が似合う人だったが、癌で声帯を摘出。

以来笑うことの減った夫との夫婦生活は、決して簡単ではなかった。

ある日、名前を呼ばれた気がして振り返ると、そこには夫の姿が。

「愛してる」

小さくて聞き取りづらい音。

夫の照れた顔なんていつぶりだろう。

ひさしぶり。

===後記===

つんくさんは、食道発声で、声を出せるようになったらしい。

伝えられる時

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古今東西の「愛してる」:学校では教えてくれない

古今東西の「愛してる」:学校では教えてくれない

動物はどこで求愛行動を覚えるんだろう。

クジャクが羽を広げるアレは、男子高校生で言ったら、ワックスで髪をツンツンさせるとかだろうか。

分かりづらい。

そんな話を妻にしたら

「最初っから心が知ってんのよ、心が」

「そういうもんかなあ」

「そう。で、私のことは?」

「愛してる」

ストレートで助かる。 

===後記===

気になる子に気になってもらいたいとき、どうすれば良いんだろうか

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古今東西の「愛してる」:政治色の関係

古今東西の「愛してる」:政治色の関係

私が11歳の頃、父上の望むままに結婚をした。

相手もまだ13歳で、一度も会うこと無く定められた。

それから40年。

眼前には床に伏す彼の姿。

彼は、私と一緒で幸せだったのだろうか。

ずっと不安だった。

「愛してる」

精一杯の私の想いに、彼の頬は喜色に染まる。

安堵とともに、さらに別れが辛くなる。

古今東西の「愛してる」:銀行強盗

古今東西の「愛してる」:銀行強盗

銀行強盗の現場に遭遇するとは思ってもみなかった。

覆面を被った男たちに指示されるがまま、妻と私は他の客と人質になった。

銃を向けられた行員が袋にお金を詰めている最中、

「最後になるかもしれないから」

と妻が小さな声で語りかける。

「愛してる」

この出来事を笑って話せる今が愛おしい。

古今東西の「愛してる」:記念日には

古今東西の「愛してる」:記念日には

結婚記念日に無理を言って夜景の見えるレストランへ。

こういう場所が苦手な夫も、料理には満足げだ。

トイレに行った夫を待ちながら、明日の晩ご飯はどうしようかと考える。

物音がしたので振り返ると、そこには薔薇の花束を持つ夫が。

「愛してる」

また不慣れなことをと思いながら、瞳が熱を帯びていく。

古今東西の「愛してる」:下水道

古今東西の「愛してる」:下水道

日付が変わり、新しい年の開幕だ。

世界中が浮かれ狂っているまさに今、私たちは静かに、愛を確かめ合っている。

「愛してる」

壁に反射する花火の音に混ざって、妻の汚れない囁きが聞こえた。

この薄暗い下水道に暮らす私たちでも愛の存在を体感しているのだ。

地上のほうは、さぞ愛に満ち満ちているんだろう。

古今東西の「愛してる」:苦手

古今東西の「愛してる」:苦手

言葉は、届ける相手がいて初めて価値が生まれると思う。

俺は昔から感情表現が苦手だった。

そんな俺のことを妻も理解してくれてるはずだ。

病院から突然報せが来たのは、金婚式の5日前。

駆けつけた先にいたのは、動かない妻だった。

「愛してる」

もう届くことのないこの言葉に、価値は無いのだろうか。

古今東西の「愛してる」:面会室

古今東西の「愛してる」:面会室

罪に面白さという尺度があるのなら、夫が捕まったそれは相当つまらない部類だ。

久しぶりの面会でも、馬鹿な夢を語る。

そんなうまくいかないよと思っても、聴き終わる頃にはできる気がしてくるから不思議である。

「愛してる」

アクリルの向こうは遥か彼方だ。

この距離がゼロに戻るのは、いつなのかなぁ。