【考】台詞の存在の仕方について
台詞の在り方は、実に不安定で脆いものだと思います。
例えば、言葉を覚えたばかりの女の子が、無垢な表情で言うたどたどしい「ありがとう」と、選抜予選で敗れ目を潤ませた高校球児が、応援に来てくれた学友に向けて言う「ありがとう」と、病室のベッドの上で、死期迫る夫が妻に優しく言う「ありがとう」では、その在り方は全く違う。
同じ言葉であっても、誰が、いつ、どんな場所で、誰に対して、どのような声色で、表情で、スピードで放ったかによって、その台詞が纏う空気感はまったく異なる。
言葉が持