ナナタ-10秒で読める散文

都内在住。恋に勉強、SNSやソシャゲで忙しい現代人のために、すぐ読める散文を書いています。

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  • 30秒で読める小説 / 古今東西の「愛してる」

    古今東西の「愛してる」シリーズをまとめています。

  • ギリギリ、人生の役に立つかもしれない共通点

    「ギリギリ、人生の役に立つかもしれない共通点」シリーズをまとめていきます。

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【考】台詞の存在の仕方について

台詞の在り方は、実に不安定で脆いものだと思います。 例えば、言葉を覚えたばかりの女の子が、無垢な表情で言うたどたどしい「ありがとう」と、選抜予選で敗れ目を潤ませた高校球児が、応援に来てくれた学友に向けて言う「ありがとう」と、病室のベッドの上で、死期迫る夫が妻に優しく言う「ありがとう」では、その在り方は全く違う。 同じ言葉であっても、誰が、いつ、どんな場所で、誰に対して、どのような声色で、表情で、スピードで放ったかによって、その台詞が纏う空気感はまったく異なる。 言葉が持

    • 古今東西の「愛してる」:映画

      黄昏が空から落ちてくる。 まるで映画のワンシーンのようだ。 膝の上では、妻が寝息を立てている。 その体勢は、人間はここまで無防備になれるんだと教えてくれてるみたいだ。 「愛してる」 誰にも届かない声を出す。 棚の上の記念写真は、笑顔でこちらを見つめてる。 これは、映画のワンシーンすぎるな。 ===後記=== 「何でもないようなことが幸せだったと思う。」と誰かも歌っていたけれど、これはきっと、手に入れようと頑張るものじゃなく、自然と出来ていくようなものな気がする。

      • 古今東西の「愛してる」:小学生

        小学生の頃は、 足が速いだとか、 勉強ができるだとか、 おもしろいってだけで、 その人の事を好きになれたのに。 一体いつから、こんなに難しいものに変わっちゃったんだろう。 近所迷惑になるぐらいの口論を終えた部屋には、彼が倒したグラスの破片が光っている。 「愛してる。」が欲しかっただけなのに。 ===後記=== 恋愛はいつから、難しくなっていくのだろう。

        • 古今東西の「愛してる」:対極

          「何だ起きてたの」 深夜2時、妻が帰ってきた。 「うん。」 「シャワー入ってくるね」 お湯が出る音を聞きながら、 気づいたときには妻の携帯を握りしめていた。 「今日はありがとう。」 「愛してる。」 「僕も。」 画面に映る知らない男とのやり取り。 こんなにも苦しくなる、愛の交換があるんだな。 ===後記=== 愛をささやきあうのは、とても美しいものだと思えたりするけど、真逆に位置する意味を感じるケースもあるんだろうな。 ☆このシリーズの詳細はこちら

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        【考】台詞の存在の仕方について

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        • 30秒で読める小説 / 古今東西の「愛してる」
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        • ギリギリ、人生の役に立つかもしれない共通点
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        記事

          古今東西の「愛してる」:光景

          息を飲むような夕焼けの下。 石のように固まった表情から、とろけるような視線を送りつつ、男が口を開く。 「愛してる」 緊張のせいか、砂漠のように乾ききった喉から出たその音は、潤いを求めて彷徨ったまま、日没とともに暗闇に溶けていった。 ===後記=== レトリックは、人間の想像力を試す。 ☆このシリーズの詳細はこちら

          古今東西の「愛してる」:光景

          古今東西の「愛してる」:アナログ派

          私の本棚には昔の手帳が並んでいる。 カバーには、当時の趣味が色濃く出ていて、JKの時のは今見ると酷いセンスだ。 酷いと感じる今が、何かを失ったのかもしれないが。 そのピンクの、ヒョウ柄の手帳を開くと蛍光色で慎ましい文字が現れる。 「愛してる」 この頃、ってどんなんだっけ。 ===後記=== 年齢を重ねるにつれて、いろいろな経験を経ていく。 それは、ある種人生に新しい刺激を与えているようなもので、一見人生になにかを加えているように見える。が、もしかしたら、何かを失わせ

          古今東西の「愛してる」:アナログ派

          古今東西の「愛してる」:行末

          こんな深夜に、高い人口密度を保てるのもここぐらいだろう。 怪しげなライトと、胸に響くノイズに包まれたフロアには、同じような人種が集まっている。 「名前は?」「どこから来たの?」「ひとり?」 浅はかな質問を浴びながら、昨日別れた男の事を思い出す。 「愛してる」 今、ここにいる私も浅はかだ。 ===後記=== 人が本当に孤独になった時、どこへ行くのが一番良いのか。 家に一人で閉じこもるか、海にでも行くべきなのか、仲の良い友だちに話しを聞いてもらうべきなのか。そんな友

          古今東西の「愛してる」:行末

          古今東西の「愛してる」:瞳

          「ブレーキランプを5回点滅させると、愛してるのサインなんだって!お母さん知ってた?」 後部座席で娘が妻と話している。 「もちろん。ね、お父さん?」 不敵な笑みがバックミラーに映る。 何しろ、私は点滅させて告白した張本人なのだから。 鏡越しの瞳は、下手な告白に笑っていたあの頃と同じだった。 ===後記=== こんな雨の日には、いつもより車のブレーキランプが目立つ。あれも愛を伝える媒体の一種なんだと思わせた、ドリカムはすごい。 ☆このシリーズの詳細はこちら

          古今東西の「愛してる」:瞳

          古今東西の「愛してる」:鬱憤

          朝はいつも起きてこないし、帰りだって毎晩遅い。 たまの休みの日だって、PCとにらめっこで全然かまってくれないじゃん。 私のこと、見えてますかー? お前なんかな、「愛してる」って言わせてやるからな。 今に見てろ。 ===後記=== 明らかに不穏な、恨みつらみが立ち込めるシチュエーションでも、セリフに「愛してる」を据えるだけで、なんだかホッとできる物語になる説。 ☆このシリーズの詳細はこちら

          古今東西の「愛してる」:鬱憤

          古今東西の「愛してる」:鉄柵

          「ああ、ヨハン。どうしてあなたはヨハンなの…」 「…」 「愛してる」 この想いを嘲笑うかのように、立ちはだかる鉄柵。 隙間から覗き見る2つの目と2つの目には、それぞれ涙と悔しさが溢れている。 そんなやり取りが行われているとも知らない幼稚園児たちは、この檻の中のトラとライオンに興味津津だ。 ===後記=== 恋をするのは、人間だけの特権ではない。 とすればきっと、人間と同じような悲劇も、人間以外の子たちの間で行われているんじゃないか?たとえば、動物園の中とか。 ☆

          古今東西の「愛してる」:鉄柵

          古今東西の「愛してる」:掃除

          掃除をしていたら、昔の携帯が出てきた。 懐かしい起動音。 メールボックスにはあの頃が詰まっていて、 当時の彼女とのやり取りは、青春でできていた。 「私のこと好き?」 「うん」 「ちゃんと言って」 「愛してる」 だって。 「何してるの?」 妻が二階から降りてきた。 ===後記=== 懐かしいものを見ると、その当時の思い出が蘇る、あの感覚。 ガラケーのメールボックスなんて、その究極系ではないだろうか。 見たいような、見たくないような... ☆このシリーズの詳細

          古今東西の「愛してる」:掃除

          古今東西の「愛してる」:賽の目

          久しぶりに手にした包丁で、玉ねぎを切る。 ザクザクという音色と一緒に、賽の目状になっていくそれらを眺めながら、頭の中に映像が蘇る。 あの時も、こんな感じで台所に立っていて、後ろではB級映画を観てたな。あいつが。 「愛してる」 B級役者の言い回しほど、勘に触るものは無い。 あー。涙でてきた。 ===後記=== なんでもない瞬間に、かけがえのなかった瞬間がフラッシュバック。 ☆このシリーズの詳細はこちら

          古今東西の「愛してる」:賽の目

          古今東西の「愛してる」:2114年

          夜ベッドに入り、枕元にあるスイッチを押すと、目の前に半透明の画面が現れる。 彼の名前に触れて数秒。 頭の中に、彼の声が現れる。 「...おはよう」 「何いってんの、もう夜よ」 なんて、いつものやり取りが始まる。 「愛してる」 「私もよ。それじゃあ、おやすみなさい」 一日の中で、この時間が一番だ。 ===後記=== 手紙がメールに変わり、メールがLINEに変わったように、想いを伝えるための手段も、時代に合わせて変化していく。 きっと、未来のある世界線では、電

          古今東西の「愛してる」:2114年

          古今東西の「愛してる」:電車

          残業で疲れた私を待っていたのは、 酒の匂いが充満した山手線。 席に座ると、隣の女の子が スマホでドラマを見ている。 あ、これ元カレが好きだったやつだ。 「愛してる」 小さな画面の中で、綺麗な女優がそう呟いた。 音は聞こえないが、記憶が教えてくれる。 頭が痛くなってきたのは、 酒の匂いのせいだろう。 ===後記=== 最近はもう、電車に乗るとみんなスマホを覗き込んでいる。 一昔前は、ソシャゲに忙しかったようにも見えたが、いまじゃみんなYoutubeだ、ネトフリだ

          古今東西の「愛してる」:電車

          古今東西の「愛してる」:常連

          この店が好きだ。 コーヒーは美味しいし、パンケーキはクリームが多い。 緑に囲まれているのも、休日なのに店内が静かなのも嬉しい。 なんてものは全部建前で、 全てはあの娘がいるから。 いつかあの娘と付き合って、 「愛してる」って言い合う関係。 そんな妄想を膨らませている 窓際の変態が私である。 ===後記=== 人間はみんな、妄想をしているし、変態だと思っている。 それを表に出さないよう、理性を働かせているだけで、あの若手俳優と、あのアイドルと、頭の中ではロマンチック

          古今東西の「愛してる」:常連

          古今東西の「愛してる」:筆談

          どんどん便利になっていく。 彼女もそう思っているはずだ。 僕らの会話はいつも、携帯のメモ帳で繰り広げられる。 僕が入力し、彼女が入力し、二人で読んで笑う。 それをお風呂でもできるんだから、幸せ以外の何物でもない。 「愛してる」 寝る前に見せてきたその4文字は、 なんだか照れてるようにも見えた。 ===後記=== 「時代は5G」だとか「AI」だとか、どんどんテクノロジーは進化していくみたいだけれど、どうにもその実態をつかめない。すごそうなのはわかるけど、何を変えてくれ

          古今東西の「愛してる」:筆談