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30秒で読める小説 / 古今東西の「愛してる」

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古今東西の「愛してる」シリーズをまとめています。
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#愛してる

古今東西の「愛してる」:季節

古今東西の「愛してる」:季節

久しぶりの晴れ間は、夏の始まりの合図だった。

空は青く、浮かぶ雲は重厚感のあるフォルムをしている。

木々の緑も活き活きした色で、さっき見かけたワイシャツは、真っ白に強く輝いていた。

この炎天の空の下、僕は今年も君の墓前で手を合わせる。

「愛してる」

声が届いてるといいんだけれど。

===後記===

夏が近づいてくるのを、肌と汗で感じるここ数日。

電車に乗っていたら、この暑さにそぐわ

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古今東西の「愛してる」:向こう側

古今東西の「愛してる」:向こう側

私の言葉に対して、彼女が喜んだり、怒ったり、気味悪がることは一切ない。

「愛してる」

という告白にも、大きな瞳で見つめ返してくれる。

それだけ。

私はそれで満足なのだ。

だがこの想いは周囲に理解されることはない。

ディスプレイの向こうにいる彼女に愛を捧ぐ私は、人間としておかしいんだろうか。

===後記===

想いの対象は、一般的に人間と考えられている。

中には、動物だったり、何か

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古今東西の「愛してる」:学校では教えてくれない

古今東西の「愛してる」:学校では教えてくれない

動物はどこで求愛行動を覚えるんだろう。

クジャクが羽を広げるアレは、男子高校生で言ったら、ワックスで髪をツンツンさせるとかだろうか。

分かりづらい。

そんな話を妻にしたら

「最初っから心が知ってんのよ、心が」

「そういうもんかなあ」

「そう。で、私のことは?」

「愛してる」

ストレートで助かる。 

===後記===

気になる子に気になってもらいたいとき、どうすれば良いんだろうか

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古今東西の「愛してる」:イジワル

古今東西の「愛してる」:イジワル

あんなに一緒にいたのに、別れなんてものは一瞬だ。

国籍も違えば肌の色も違う。

そんな些細な違いも乗り越えてきたのに。

彼は仕事を選ぶらしい。

大バカヤロウだ。

とりあえず見送りには来てやったけど。

何その表情。

私のが悲しいわ。

最後にイジワルしてやる。

「愛してる」

やーい、日本語わからないだろ。

===後記===

空港の別れのシーンって、非常にドラマチック。

あの2人

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古今東西の「愛してる」:屋上

古今東西の「愛してる」:屋上

「話があるので放課後屋上に来て下さい」

下駄箱で手紙を見つけたのは今朝のこと。

友人の誘いをぎこちなく躱し、屋上へ向かう。

だが扉の先には、高い青空しかいなかった。

イタズラかぁ。

がっかりしながら校庭に視線を落とすと、地面に巨大な文字を見つける。

「愛してる」

直接言ってよ。

でも嬉しいです。

===後記===

たとえば、テスト期間中の放課後。

ふだんは賑やかな部活動も、一

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古今東西の「愛してる」:ドライブ

古今東西の「愛してる」:ドライブ

「海行かない?」

私の失恋を聞きつけた幼馴染の心遣いだった。

夜道を走る車の中には、控えめなBGMが響く。

潮の香りが鼻に届く。

車を降りると、暗闇が目に刺さった。

「バカヤロー」

「愛してる」

「ふざけんな」

宛先を失った言葉たちが、夜の潮騒に攫われる。

隣に座る幼馴染は、きっと笑顔のはずだ。

=== 後記 ===

東京では今年初の真夏日だったようだ。

気温が下がった夜の

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古今東西の「愛してる」:雨降る夜

古今東西の「愛してる」:雨降る夜

ザーザーと雨が降る。

雨粒が屋根に当たる音が心地いい。

こんな夜は、キミの声が聞きたくなる。

イチャつくって感じの電話じゃなくていいんだけど。

ただちょっと欲を言えば

「愛してる」

って言葉が欲しいなぁって。

女の子はね、不安になるのです。

わからないかなぁこの気持ち。

この気持ち、わからないか。

--- 後記 ---

雨が降る夜は、ついつい、いろいろ、考えすぎてしまう。

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古今東西の「愛してる」:テレビドラマ

古今東西の「愛してる」:テレビドラマ

「愛してる」

テレビの中、雨に濡れた俳優が相手女優にキスをする。

その演技に私もキュンとしてしまう。

ソファに座りながら

「このラブシーン、どうだった?」

と隣の彼に尋ねる。

「うるさい」

と言って教えてくれない。

次の作品の台本を読んでいるみたいだ。

「私には?」

照れながら彼は言う。

「愛してる」

--- 後記 ---

昨日の夜とかも絶対に、世界のどこかのテレビの前で

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古今東西の「愛してる」:政治色の関係

古今東西の「愛してる」:政治色の関係

私が11歳の頃、父上の望むままに結婚をした。

相手もまだ13歳で、一度も会うこと無く定められた。

それから40年。

眼前には床に伏す彼の姿。

彼は、私と一緒で幸せだったのだろうか。

ずっと不安だった。

「愛してる」

精一杯の私の想いに、彼の頬は喜色に染まる。

安堵とともに、さらに別れが辛くなる。

古今東西の「愛してる」:日替わりランチ

古今東西の「愛してる」:日替わりランチ

昼は毎日、レストランで日替わりランチを頼む。

毎日同じものだと飽きてしまうからだ。

そして夜は、日替わりの愛を買う。

「愛してる」

90分経つと、また他人に戻る関係。

明日はどの愛にしようか。

私はまたスマホを取り出し、カタログをダラダラと眺め見る。

愛も毎日同じだと、きっと飽きてしまうから。

古今東西の「愛してる」:アイドル

古今東西の「愛してる」:アイドル

通りを外れた静かなカフェ。

陽の差し込む窓辺の席で、カラン、と氷が鳴く。

「会計は済ませておくから。それじゃ」

目の前の男が席を立つ。

後ろ姿は滲んで見えた。

「愛してる」

有線から流行りのアイドルソングが流れる。

そういう事は、酸いも甘いも味わってから言えよと、虚しい八つ当たりをしてしまう。

古今東西の「愛してる」:休日

古今東西の「愛してる」:休日

戦時中、赤紙が来た人はどんな顔をしたんだろう。

「愛してる」

それが結婚を約束をした人の最後の言葉らしい。

「それがなかったらお父さんと出会ってないし、あんたも生まれてないのよ」

「へぇ、お父さんでよかった?」

扉が開く。

「おはよう」

寝ぼけた父の声が核心を遮る。

我が家の休日は今日も平和だ。

古今東西の「愛してる」:決まり事

古今東西の「愛してる」:決まり事

「おは」

「おはよ」

「今朝こっち雨だわ」

「あー、じゃ自転車乗れないね」

「めんどい」

「ね、いつものは?」

「え」

「ほら」

「愛してる」

「ふふ」

「ねぇこれやめない?」

「やめない」

「はずいなぁ」

「それぐらいがいいんだよ何千キロも離れてるんだから。あ、明日朝早いんだった」

「了解」

「おやすみー」

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古今東西の「愛してる」:最愛

古今東西の「愛してる」:最愛

「愛してる」

平均的なルックスとそれなりの稼ぎを持つ男が、指輪を取り出そうとしている。

緊張のせいでぎこちなく動く大きな体躯。

その様子を眺めながら、昨日の夜を思い出す。

顔も覚えていない男の低く艷やかな声が、脳内を駆け回る。

「愛してる」

最も愛すると書いて、最愛。

私の最愛はどこだ。