思いつき短編:集落
青い空が紫の色に変わる頃、私は舗装されていない砂利の道をタクシーに乗っていた。
私は、死んだ母に16になったらここへ行ってちょうだいと言われ、そこへ向かっていた。
タクシーが停止した。
運転手はここから先へは車で行けないという。
私は大丈夫です、ここで降りますと告げ、タクシーの後部座席のドアが開いて下車した。
その集落はとても荒れ果てていた。
前方には廃車になったバスがバス停に置かれている。
辺りの民家らしき建物は全てトタンで出来ていてまるでバラックだ。
エンジンが再びかかる音がしたのでそちらへ視線を向けると、私は恐怖で震えた。
タクシーの運転手の首から上が手なのだ。
その運転手は手首を軽く下げ、私も慌ててお辞儀を返した。
タクシーが去った後、私はホッと胸を撫で下ろして集落の方へ足を運んだ。
ここは本当に日本なのか疑うくらいに荒れ果てていた。
カラン、カラン、と風に煽られた空き缶が転がっていく。
その後に続くように私は歩き出した。
雨上がりの水溜りに浮く多色、もしくはしゃぼん玉を膨らます時の虹の様な色へと空は変わった。
隙間なく佇んでいるトタンの民家は、まるで長い廊下のように続いていた。
ずっと、ずーっと、果てしなく…。
母はなぜ、この集落に私を行かせるような遺言を残したのだろう。
全く人の気配はしないし、たまにドアを叩いたり、開けようとしてみるが開くという概念がないように動かない。
私はこの土地になんの関係があるのだろう。
頭の中で考えていると地面の感触が変わった。
はっ、と顔をあげると異質な風景が広がっていた。
何というか、個人の視線というものは一人称視点だが、今の状態だと上からの視点で自分を見ている。
現在、私は集落の の方角へ向かっていたようだ。
ようだというのは、一切記憶のない集落を目的もなしに歩き続けているからだ。
私はそのまま の方角へ進む。
すると、私の視点は正常の一人称視点へ戻り、目の前に小屋が立っていた。
小屋でも、まるで何かを祀っているかのような風貌だ。
身体は勝手に小屋へ近づき、引き戸に手をかけた。
その瞬間、私は次元を超えるほどの怒り、憎しみが湧いてくる。
確かにこの土地の記憶がない、だけど、身体の細胞一つ一つが、覚えているようだ。
ガラッと開けるとそこには一人の男が鎮座していた。
頭髪は寝癖でボサボサし、だらしなく浴衣を着込んでいて、無駄に身体が筋肉質だった。
男は私を見るなりニヤニヤしている。
視線は首筋、胸、腰周りとまるで触るように見ている。
早くここから立ち去りたかった。
でも身体は目的はこいつだと言わんばかりに動かない。
気が付くと、私の手には少し錆がついている出刃包丁が握られていた。
ああ、私はこの男を殺すのだ。
なぜ?
分からない。
母は私にこの男を殺して欲しかったのだろうか。
両手で握りしめた出刃包丁に力が籠もる。
でも私の思考はそんな命令はしていない。
身体だけが違う思考に操られているかのようだ。
私以外の思考のタイミングで、男に向かって刃を心の臓に突き刺す。
次に引き抜くと、男の顔めがけて包丁を指した。
男が倒れたあとも、何度も、何度も、何度も…私の腕は機械のように男の顔を突き刺していた。
私自身は頭が混乱して放心していた。
男の首から上の原型が無くなると身体は静止した。
私は男の身体に馬乗りになっている状態で静寂に包まれている。
すると、引ききった海の水が押し寄せる津波のように私の幼い頃の記憶が蘇る。
あれは………父で……お母さん……が………
いやぁぁぁあああああッッッ!!!!!!
記憶に耐えきれず、私は自分の首元を出刃包丁の刃で横になぞった。
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