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胸焼けアイスクリン

料理(お菓子作り)の失敗談と聞いて、真っ先に思い出す出来事があります。

昔、アイスクリーマーっていうおもちゃがあったんですけど…覚えてらっしゃる方いるかな?
専用の機械に専用の粉と多分牛乳とかを入れて、ハンドルをくるくる回すとアイスが出てくるんです。独特のおいしい味がするんですよ。
私が保育園児くらいの小さい頃に、従姉妹たちと作った記憶があります。

私が小学校低学年〜中学年くらいのときだったかな。ある日、ふと思い立ってアイスクリームをね、作ろうとしたんですよ。
調べもせずに、人に訊きもせずに、記憶だけを頼りに。
確か材料は牛乳と、たまごと、お砂糖…だったかなぁって。それ、ぜ〜んぶ混ぜました。バニラエッセンスまで入れるという本格派ぶり。
でも、生クリームが入っていないのでアイスクリームというよりは「アイスクリン」ですかね。シャーベットっぽいやつ。
まぁまぁ美味しそうな液体ができたわけです。…たまご、生だけど。ここまではまだよかったんですよ。

ここで私はなんと、液体の中に氷と塩を投入しました。それも結構な量を。

なぜ、そんな行動に出てしまったのか。
原因は、アイスクリーマーにあります(おもちゃのせいにしないの)
アイスクリーマーというおもちゃは、即席でアイスを作るために氷と塩で化学反応を起こして温度を下げて凍らせるんですね。
理科の授業とか、夏休みの自由研究とかでやったことがある人もいるんじゃないかな。

アイスクリーマーには氷と塩を入れる専用の場所があったわけですが、私の中では「機械に氷と塩を入れた」という記憶しかなかったので、そのまま牛乳やたまごを混ぜた液体の方に入れてしまったわけです。あとはもうご想像の通りですね。

たまご色の液体に氷がぷかぷかと浮かんだ「それ」を、冷凍庫に入れて凍らせました。
そして数時間後、ワクワクしながら「それ」を味見した私は絶句しました。

えっ… しょっっぱ…!
そして、たまごの…なんともいえぬ生臭さとバニラエッセンスの甘い香りに思わず「うっ」と胸の奥がつっかえる。
※通常、アイスクリームを作る際はたまごを殺菌する目的で熱を加えるものです。でも当時の私はそんなこと知る由もない。

むかーしのクイズ番組とかで、罰ゲームに生たまごを飲むみたいなのありましたよね?
そりゃ罰ゲームにもなるなと思いました。たまごかけご飯はおいしいのにな…。

しょっぱさも、「塩スイーツ」とかいうレベルじゃないですよ。胸焼けする、警報レベルの塩味です。
そういえば小学1年生くらいのときにも私、胸焼けするくらいしょっぱいおにぎりを作ったことあったな…。仕事から疲れて帰ってくる母を元気付けようとして。
あの日私は「胸焼け」という言葉とその意味を身をもって知ったんだ。

ただ、塩アイスクリンを作ったときも、胸焼けおにぎりを作ったときも、母は笑っていました。
思い出補正もあるかもしれない、私が鈍感だっただけかもしれない。でも、怒られた記憶がないんですよね。

さらには、失敗した料理やお菓子を私が「食べものを粗末にしちゃいけないから…」と渋い顔して無理して食べていると母が言いました。

「食べ物も、おいしいって顔で食べてもらった方が幸せだと思うよ。だからそういう時は思いきって捨てるのも誠意なのよ」(うろ覚え&過去記事からの引用)

どんなに注意しても、生きていれば失敗だってします。失敗の経験は苦くて(いろんな意味で)しょっぱいけれど、失敗から学ぶ大切なこともあります。

罪悪感が完全に消えるわけじゃないけれど、この母の言葉で私はだいぶ気持ちが楽になりました。

この言葉と、失敗しても笑ってくれる母がいたから私はその後も失敗を恐れすぎず、懲りずに料理やお菓子作りをつづけてこられたのかもしれません。

偶然の巡り合わせとはいえ、今じゃ料理の仕事で収入を得ながら全然違う夢を追いかけています。
前は仕事だけで精一杯で自分の趣味やましてや夢なんて、後回しせざるを得なかったけれど。少しだけ、夢を追いかける心の余裕?が生まれました。
好きでつづけてきたことが、いつの間にか自分を助けてくれる心づよい存在になっていたのです。

料理やお菓子作りで大きな失敗をすることは減ったけれど、今でも全然失敗することはあります。それでもやっぱり作るのは楽しいし、おいしくできるとうれしい。

子どもたちと一緒に何か作ることもあります。
クッキーとか、クレープとか、生クリームでバター作りとか、いろいろ。
この間は、子どもたちのリクエストでちっちゃな白玉団子を作りました。
白玉粉に水を入れて、こねて、まるめて、沸騰したお湯に入れて。
白玉がぷか〜と浮かんできたらそろそろ茹で上がりの合図なのですが、浮かんできた白玉を見た娘(3歳)は「飛んでる!」と言ってケラケラ笑っていました。
(そういえば以前パンをつくったときも、ホームベーカリーの中でのたうち回っている…もとい捏ねられているパン生地を見て「生きてるー!」って同じくケラケラ笑っていたなぁ)
息子(10歳)は、「水に入れたばかりの(白玉)はまだ生まれたばかりだから空を飛べないんだよ」と言っていました。
きみたちのそんな感性がとても好きだよ。

実はなかなかに偏食が激しくて食べられるものが少ない子どもたちなのですが、それでもちゃんと2人の中に「おいしい」と「たのしい」が根付いて、育っているのかな。そうだといいな。

「また作ろうね」
と子どもたちが言うたびに、「え〜」と思いつつ同時に「よっしゃ」と思っています。
「おいしく」て「たのしく」なきゃ、多分そんなこと言わないだろうし。

時々失敗したり、うまく出来なくて悔しかったりするかもしれないけど。失敗を恐れすぎないで、懲りずにまた作ろうね。
どんなに小さな経験も、いつかきっと役に立つと思うから。



【おまけ】 
二十数年ぶり?に作ったアイスクリン。

おいしくできました。


〜アイスクリンのレシピ〜

たまご2個、砂糖20g、練乳100g、牛乳500cc、バニラエッセンス2滴をよく混ぜて濾しながら鍋に入れ火にかける。弱火でゆっくりかき混ぜ、とろみが出てきたら火からおろして粗熱を取りジップロックに入れて冷凍庫へ。数時間ごとに袋ごと揉んでまんべんなく凍らせたら出来上がり。
器に盛ってお好みでチェリーやウエハースを添えて。

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