ただそこにいるだけ、それが抵抗
アメリカのオレゴン州ポートランドに住んでいます。雨の多いポートランドは、読書がはかどる街。午前はコーヒーとおやつ片手に、夜はソファにねそべって、今日も世界を読みかじる。
イスラエルの「入植政策」と、アメリカの建国プロセスは似ている。パレスチナ情勢に胸を痛めながら、勉強を深める日々がつづく中で、気がついたことだ。
イスラエルの入植政策とは、イスラエル軍とイスラエル人の入植者たちが、自分たちの国土を押し広げるために、パレスチナ人たちを彼らが先祖代々住んできた土地から追い出し、家屋を破壊し、彼らが大切に育ててきたオリーブの木々を燃やし、水源を奪う、そういう政策のことだ。
そういった暴力的な行為を可能にするには、いくつかの思想が必要になる。
・「パレスチナ人は下等・劣等な人間である」という差別意識。
・「パレスチナ人よりも優れた文化・技術を持っているイスラエル人の方が、この土地に値している」という選民意識。
・「イスラエルは素晴らしい国である」という愛国心。
そして、この差別意識、選民意識、愛国心が合わさると、「パレスチナ人対する暴力の正当化」が起こる。でもこのレシピは、なにもイスラエルだけが独占しているものではない。どんな国、どんな民族だって、このレシピに手を伸ばす可能性はあるだろう。
わたしが住んでいるアメリカに話を戻そう。
今日紹介したい一冊は、鎌田遵さんが書いた【癒されぬアメリカ】。アメリカ先住民が住む土地に通い続け、研究者としてだけではなく、彼らの友人として、人と人としての交流を続けた鎌田さんのつづる言葉には、血が通っている。しかも、読みやすいし、わかりやすい。
「何か行動を起こせば弾圧され、 ときには部族ごと虐殺されるほど過酷な歴史を経てきた」ソーシさん(この本の表紙に掲載されている写真の人物はソーシさんだ)のこの言葉に、ついパレスチナを思い出してしまう。
実際、イスラエルの入植者には、アメリカ人も多いそうだ。ユダヤ人であれば、国籍に関係なくイスラエルの市民権がもらえる。それを利用してイスラエルに引っ越したアメリカ人たちの一部が、もっとも暴力的な入植者になっていると報道されている。先住民の歴史から学んで、深い反省をしていないからこそ、またアメリカが似たような暴力を繰り返しているということだと思う。
ああ、もっと鎌田さんの本が読みたいなあ。この本はkindleで入手できるのだが、他の著作はすべて紙媒体のみ。電子書籍になるといいなあ