成仏前の霊は立体的に見える
ある人から連絡が来る度にニコニコ笑った男の人が現れるようになった。
その人となかなかスケジュールが合わず次の週にしようと思っていたが
『是非早く会って欲しい』
とその男の人が言うので無理矢理予定を合わせて金曜日に会った。
その人とは別の用事で会う予定ではあったが、用事もそこそこに終わってから現れる男の人の話をしてみた。
『それ、私の亡くなった夫です』
彼女がそもそも結婚していた事も知らなかったので、私は何と言うべきかと考えたがその必要はなかったらしい。
家族についてどう考えているか、仕事はどうか、など聞かれて旦那さんの意見をそのまま伝えた。
話している彼女を撫でたり抱きしめたりずっと寄り添って隣で座っている旦那さんは姿は見えないだけで立体的な姿だった。
これまで見た人たちは平面的な映像みたいな感じだったので、立体的な霊を見るのは初めてだった。
そして何故会うのを急かされたのかの理由もわかった。
二日後の日曜日はちょうど彼の一周忌だったのだ。
色々な事情が重なり、彼女はお墓参りに行くかとても迷っていて、どうすべきかずっと考えていたそうだ。
『自分の家族の事は気にせずお墓に来て欲しい』
と彼が言ったので、そのまま伝えたところやっと行こうと思ったようだった。
彼があの世から行ったり来たりしているのは、どうやら彼女が心配だったらしい。
成仏するのを亡くなった本人ではなく、現世に残された人間が引き止めてしまっている場合もあるのだと知った出来事だった。