「いま、この瞬間」に、こんなにもこだわってしまうのは
最近、「いまこの瞬間」がなによりも大事だなと思うことが多い。
今までもわりと、そういう思考をする傾向はあったのだけど、それ以上に強くなってきている気がする。
だけど、ここ数年間は、今よりも未来のことを考えて過ごしていた。
社会人になったばかりということもあって、「将来こうなるために、いまこうしなきゃ」という感情が強かった。
それに、仕事が何よりも第一優先にせざるを得なかったから、我慢や諦めの気持ちも強かったのだと思う。
「仕事があるから、この予定は断ろう」
「いまが頑張り時だから、遊ぶのは我慢しよう」
そんな風に我慢と諦めを積み重ねていったら、気づいたときには、無意識に目の前の「仕方なさ」を受け入れるような思考になっていたのかもしれない。
けれどここ最近、また「いま、この瞬間」がいちばん大事かもしれない、と思う瞬間が増えている。
きっかけは、「今年の夏、花火を見ることができなかったし、秋の京都にも行けなかったなあ」と思ったことがはじまりだった。
最初は、「まあ、楽しみは先に残しておいたほうが来年以降もも楽しいし、生活環境はきっと大きく変わらないだろうから、今年じゃなくてもいっか」と思っていた。
だけどしばらくして、本当にそうなのだろうか?と疑問が浮かぶ。
来年、いまと同じくらい花火が見たいかと言ったらそうじゃないかもしれないし、来年のわたしが秋の京都を訪れたとして、今年と同じくらい楽しいとは限らないかもしれない。
たとえば、付き合いたての恋人同士がはじめての旅行で箱根の温泉旅館に行くのと、付き合って5年の恋人同士で行くのとでは、行く人も場所も、仮に季節が同じだったとしても、感じることはきっと違うだろうし、楽しみ方も違うだろう。
どちらがいい・悪い、という話ではないのだけど、その時にしか感じられないこと、味わえない感情があるのであれば、それは「その時」に感じないと、一生なかったことになってしまうのではないだろうか…と、少し不安になる。
実際に、前の恋人と一緒にいたときは、あまりにも色々なことを我慢して、諦めて、それが普通になってしまって、何も期待しなくなってしまった。
「忙しいから、仕方ない」
「遠距離だから、仕方ない」
そんな風に「仕方ない」を積み重ねて、いまよりも「いつか、時間ができたときに」「いつか、一緒に暮らせたときに」と「いつか」だけを頼りに日々を過ごしていたら、いつの間にか「いま」が見えなくなってしまっていた。
わたしたちの間には、共通の「いま」の積み重ねがなくて、中身のない「諦め」だけが横たわっていた。
そして、そのいつかは結局こないまま、わたしたちの過ごした日々は過去になった。
もしあの時、「忙しいから」「いまはお互いお金がないから」という言い訳を傍に置いて、「それでも会いたい」と、伝えていたら。
もしあの時、「いま綺麗な月が出ていて、あなたのことを思い出したの。会えないけど、いつもありがとう。」と、電話をかけて伝えていたら。
わたしたちには、違う「いま」があったのかもしれないな、と思う。
夏の終わりに突然海が見たくなって、「明日、海に行かない?」の一言で、すべての予定を取り消して、衝動的に海へ向かうこと。
秋のひんやりとした空気の中、ぽっかり浮かんだ月を見て、好きな人に会いたくなって、電話をかけること。
旅先で、あの人の好きそうなものを見つけて、会う約束なんてないけれど、どうしてもそれを贈りたいと思ってしまって勢いで連絡をすること。
これらはどれも、「いま、この瞬間」だから大事なのであって、「いま、この瞬間」だから感じられること、生まれる関係性があると思う。
「いま、この瞬間」を逃したら、それらはもしかすると一生、なかったことになってしまうかもしれない。
「いま」じゃなきゃ、だめなのだ。
そう思える感覚を大切にしたいし、我慢や諦めに慣れ切って、色も味もない日々を繰り返す日常には、戻りたくない。
そう思うわたしは、まだまだ子供なのだろうか。
人生は、「いま、この瞬間」の積み重ねでしかないのだと、わたしはいつからかずっと思いながら生きてきた。
いま、自分のことを幸せにできなかったら、未来の自分のことを幸せになんてできるはずがない。いま、会いたい人に会いに行かなかったら、この先ずっと、会いに行けなくなってしまうと本気で思う。
もちろん、叶えたい夢や、理想の未来のためにいま、頑張らなきゃいけないこともたくさんあるし、そこから逆算して動いた方がいいことも、たくさんあるだろう。
だけど、その前提があった上で、やっぱり未来はいまの積み重ねでできていくものだから、「いま、この瞬間」の自分の心の動きや大切なものへの想い、抱いた感情は、掌からこぼれ落ちることのないように、大切にすくってあげたいなと思う。
「いま、この瞬間」を積み重ねたその先に、大切な人との未来が待っているのだと、信じているから。
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