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あの恋の物語。

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あのとき私は、たしかに恋をしていた。 届くことのなかった、忘れたくない恋の記憶。
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#熟成下書き

「いい人」と「悪い人」の矛盾を抱えた彼を好きになったから、分かった。

この時期になると、毎年思い出してしまう人がいる。 社会人になりたての頃、好きだった先輩の…

明日世界が終わるとしても、愛を伝え続けたいあなたへ。

久しぶりに、彼に会った。 「友達に戻ろう。」そう決めた日から、会うのは今日が初めてだった…

これはわたしの人生で、愛に一番近い物語。

まさか。まさかこんなことが、わたしの人生に起きるなんて。 彼に渡された五千円札を握りしめ…

いつかこの「好き」に名前がつく日はくるのだろうか

好きって、愛ってなんだろう、と、六本木駅のホームで電車を待ちながら考えた。 数分前に別れ…

太陽と月、恋の終わり

最近、わたしはひとつの恋を終わらせた。 終わらせた、というのはただの強がりで、 ほんとう…

「円満な関係」と引き換えに、「愛する力」を失っていた。

「人は誰しも完璧じゃないから、一人の相手で、全ての欲求を満たすことはできません。だから…

最後の宵の逃避行

彼と2人きりで会うのは、今回で2回目だった。 そして、これが、たぶん最後の夜だった。 彼は明日、結婚相手と一緒に、南の方に 引っ越すことになっていた。 歳はわたしとあまり変わらないし、初めて聞いた時、 男性にしては早いな、という感想を持った。 先週突然、「最後に飲みに行こう」と誘われた ときは、驚いたけれど、「いいよ」と何の疑問も 懸念もなく、即答してしまった。 彼は、絵に書いたような真面目な性格だったのだ。 友達には、「何かあるんじゃない?」と 楽しげに茶化された

一生忘れられないと思っていた香りも、いつかはあっけなく消える。

本当の恋の終わりは、忘れていることにも気づかなくなったときだ。 去年使っていたハンドクリ…

秋と冬の境目を歩く朝、ふたつの幸せを想う

雨の音で、目が覚めた。 窓は開いていないはずなのに、部屋の空気はひんやりとしていて、心な…

たとえ私の日常が、あなたにとっての非日常でも

もし私たちが普通の恋人同士だったら、今この瞬間って、きっと人生で一番幸せな時間なんだろう…

今はまだ、満開のふたりを待ち侘びて

わたしが取り憑かれたように誰かに恋焦がれるときは、大抵その理由を言葉で説明できない。 好…

君がいない夜とごはん

料理がおいしければ、それは最高の食事だと 思っていた。 もしかするとそれは違うかもしれな…

手放した灰色の世界は、本当はいつだって色づいていた。

今日こそ、彼にちゃんと別れを告げる。 何度心の中で呟いたかわからないこの言葉を、もう一度…

春の空気を連れてきて

春の空気のような人。 それが、彼の最初の印象だった。 「あ、おつかれさまです」 そう言って現れた彼は、そこにいるだけで 空気を一瞬でやわらかくしてしまうような、 あたたかみのある笑顔が印象的な人だった。 思ったより、大人びた顔立ち。服は全身、黒。 なのに、なぜかとても中性的で、和やかで、 鋭さを全く感じさせないのが不思議だった。 つられてこちらも口元がゆるんでしまう。 温度が空気を伝い、心の壁を溶かしていくのを、 ゆっくりと感じた。 春の、空気のような