過去の1場面物語「君がつくる物語。僕が其処にいる理由。」
これは過去に書いた1場面物語。
少し手直し。
帰り道って、案外好きだよ。
「好き?」
「うん、好きっ。」
…なんだ、やっぱり好きなんじゃん――――
数歩手前で揺れる鞄につけられた間抜けな顔のサルと目が合った。
なんだか妙にその顔が面白く
声を殺して笑っていたら鞄の持ち主である彼女が振り返った。
慌てて顔をキリッとさせたが
「なに?何笑ってるの〜?」
隠せなかった。
無駄だったらしい。
「いや、べつに~」
はぐらかしながら彼女をみると
こちらをジッと見ている大きめの瞳と目があった。
あぁ、やっぱ可愛いな。
可愛いな…
「鞄のサル」
そう。可愛いのは鞄のサルに違いない。
「?あ、これ。」
「そう。それ。」
手足が紐とビーズで出来ているからユラユラ不規則に揺れるサル。
「これがどうしたの?」
「いや、なんか面白い顔してるからさ」
やはり、嘘はつけない。
可愛いとは思わない。変なサル。
彼女はサルを手のひらに乗せて 首をかしげた。
「可愛いサルじゃない?」
じゃない?と聞かれても、面白さしか見いだせないので困ってしまう。
「可愛い可愛い~」
我ながらひどい棒読みで同意した。そして、彼女をみると
「なにそれ。適当すぎ」
優しい顔をして、こちらを見ている。
コロコロと表情の変わる彼女をみていると
不思議と満たされていく。
こんな、くだらない会話なのにな。
棒読みのそのままに、続けたくなった。
「君のほうが、ずっと可愛い~」
言ってしまってから、自分の発言の恥ずかしさに気がついた。
一瞬、時が止まる。
しかしすぐに
「あははっ、なに!?急に~」
彼女の笑い声が世界を揺らす。
「も~っ。たまに、ドキッとすること言うよね。棒読みなのが残念だけどさぁ。」
「そう?」
ドキッとしてくれている。
それだけで満足だ。
あ~おかしいと笑いながら彼女は言う。
「そういう冗談。言わなきゃモテるのにねぇ。」
チクッと刺さる。でもわかってるからいいんだ。
「もうモテてますから?」
笑いながらそう言うと
もーっと飽きれた顔をする。
君が一番、誰よりも一番可愛いよ。
「なぁ。」
「ん?」
ひとしきり笑いあったあと彼女の鞄で揺れるサルをみながら聞いてみた。
「好き?」
彼女はその言葉が誰をさすのか考えもしなかったのだろう。
「うん、好きっ!」
即答。
はにかんだ顔。
好きといった自分に照れたようだ。
本当に……
可愛いな。
恋する彼女は可愛かった。
たとえ 相手が…
「アイツいいやつだよな」
親友でもさ。
「優しいよねー…」
今、頭の中いっぱいに思い浮かべたろ。
わかるんだから。
ずっと、近くにいたから。
だから…今だけ。
この一時は俺のもの。
彼女と俺は
帰り道。
笑ってられたら
幸せだ。
「今度は二人で帰れよな~」
「…うん」
なんだ、やっぱり好きだった。
あとがき。(現在の私が書いたもの↓)
作者の辛辣な言葉。
馬鹿ですね。
馬鹿ですね。
自分の気持ちを知ってるくせに、刺さってるくせに「俺は本当に彼女の事好きだったのか?思い違いじゃないのか?」なんて思って、彼女の誰かへの「好き」を聞いて、好きだったと再認識するなんて愚かですね。
親友も好きですね。
いいやつだから。
貴方が認めるいいやつだから。
そんないいやつの恋人が
まさか自分が好きな子だなんて
貴方は…………………賢いから……知ってたんでしょ。
そんな結末知ってたんでしょ。
愚かで、馬鹿で、仕方ない役ですねぇ。
わざとらしく溜息をついて、やれやれと言って、ペットボトルのお茶でも奢ってあげましょう。
ま、作者の私が貴方を彼女の隣に置き続けなかったんですけれどね。
ひどい作者ですね。
……それでも貴方は「仕方ない」と笑うのでしょう。
なんとも物語さえままならないものですねぇ。
ここまで読んでくれて有り難うございます。
好きな人に好きな人がいたら、あなたはどうするんだろう。
私?
私は好きな人の好きな人も好きになる。
むしろ、好きな人の好きな人の方が好きかもしれない。
だって、好きな人が好きになるんなら、その人はきっと「素敵な人」だから。
私は私が好きだと思う気持ちを信じているんだなぁって思ったり。
そんな過去(2013/9/16)に書いた1場面物語でしたとさ。